ILO(国際労働機関)の報告で、世界の失業者が1億9200万人に達しているということは、以前、このブログでも取り上げました(→「世界の失業者は1億9180万人、半分は若者」)。
今日の「東京新聞」夕刊で、そのことがさらに詳しく紹介されています。
世界の失業者1億9200万人 「前例のない雇用危機」
前年比220万人増 半数は15?24歳全世界の失業者が、1年前より220万人増えて、過去最高の1億9200万人に達していることが、ILO(国際労働機関)の報告で明らかになった。約半数は、15?24歳の若者で占められているという。ILOのソマビア事務局長は、「前例のない雇用危機」と警告している。
——ILOのソマビア事務局長は、今年1月末にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会で「世界は前例のない雇用危機の状態にある」と警告する声明を発表した。
声明の中で事務局長は、世界の雇用危機はその市場や所有に与える影響の点からますます大きな懸念材料になってきており、世界全体の民主主義の信頼性に対する脅威であるとしている。
[東京新聞 2006年3月14日夕刊]
で、世界の雇用危機を示す根拠として、事務局長があげたのは、つぎのような事実。
- 世界の労働者全体の半数にあたる約14億人が現在働いていながらも貧しく、1日1人あたり2ドル未満で暮らしている。
- 失業者数は過去最高に達しただけでなく増え続けており、過去10年間に公式失業者数は世界全体で25%も増え、2005年末で前年比220万人増の1億9200万人(世界の労働力の約7%)近くに達している。
- IOLではこの約半数の8600万人が15?24歳の若者であると推計している。
- 自分の住んでいる所で仕事が見つからずに発生する労働力移動は容易に緊張の種になる。
さらに、事務局長は次のように指摘しているといいます。
05年に4.3%伸びた堅調な経済成長にもかかわらず、世界経済は労働市場に新規に参入する人びとに対応する雇用を新規に創出できていない……。求職者数に対応するだけでも今後10年間で毎年約4000万人の雇用を創出する必要がある……。
これに対して、ILOは、「まともで人間的な仕事」を意味する「ディーセント・ワーク(decent work)」の創出にむけて5つのステップを提案したそうです。
- 第1ステップ
- ディーセント・ワークを国内外の開発努力の中心に据えるよう経済社会政策を転換すること。マクロ経済の安定性、適応性、安全保障を強調する社会政策と経済政策の新たなバランスを形成する。
- 第2ステップ
- 持続的でまともな雇用を創出するために、グローバル経済のみならず、ローカル経済の発展の手段として、持続可能で雇用を多く生み出す経済成長を推進する。
- 第3ステップ
- 個々の国で競争力と企業育成を奨励し、企業家指針、革新、生産性を推進する正しい政策・規制環境を創出する。雇用創出における小企業の役割に光を当てる。
- 第4ステップ
- 若者にとくに焦点を当てて、訓練、生涯学習、人的能力の向上に向けたその他の措置を拡充する。
- 第5ステップ
- 貧困削減および雇用創出の目標に向け、政府、企業、労働組合、そして市民社会におけるその他の利害関係者を統合するため、より良い国際的な統治を推進する。
ということで、「規制緩和、自由化」一本槍でなく、「ディーセント・ワーク」の創出に向けて、マクロ経済の安定性や適応性、社会保障との調和、持続可能な雇用を生み出す経済成長、そのための規制環境の整備、小企業の役割の重視、若者のための特別な雇用創出措置、貧困削減・雇用創出のために労働組合や市民を加えた協力、など「ルールある社会経済」づくりの方向が提起されているのだと思います。
以上、雇用危機を示す根拠、「ディーセント・ワーク」の5つのステップを含め、報告の中味はすべて「東京新聞」2006年3月14日付夕刊8面から。詳しくは同記事を参照してください。
【本日のBGM】
ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調(原典版)/指揮:朝比奈隆/演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団/録音:1994年6月27日/PONY CANYON PCCL-00261