日中関係、国交正常化の原点とはなにか

小泉首相が、靖国参拝にたいする中・韓の抗議にたいし、「理解できない」として厳しく批判。

首相は、その理由として「戦没者に哀悼の念をささげるため」と相変わらず主張しているが、これは、靖国神社は、戦没者の追悼をおこなっているのではなく、戦死した「英霊」の武勲を「顕彰」しているという事実をごまかすもの。「英霊」というのはたんなる戦争犠牲者のことではありません。また、「顕彰」という以上、そこには「あの戦争は正しかった」という考えが前提にされています。だからこそ、靖国神社の遊就館は、あの戦争を「正義の戦争」「アジア解放の戦争」だと描いているのです。A級戦犯を合祀したのも、そういう立場からのものです。A級戦犯の合祀も、もちろん問題ですが、A級戦犯の合祀だけが問題なのではなく、その根底にある「戦争正当化」の戦争観、歴史観こそが問題なのです。

首相、「靖国」理由の首脳会談なしで中・韓を強く批判(読売新聞)

首相、「靖国」理由の首脳会談なしで中・韓を強く批判
[2006年3月27日23時9分 読売新聞]

 小泉首相は27日夜、2006年度予算の成立を受けて首相官邸で記者会見し、9月までの任期中の靖国神社参拝について「適切に判断する」と述べ、否定しなかった。さらに、「私の靖国参拝を批判する中国、韓国政府を理解できない。(靖国参拝の)一事をもって首脳会談が行われない国はほかにない」と述べ、両国を強く批判した。
 さらに、「(戦没者に)哀悼の念をささげるために、日本の首相が日本の施設に行くことに、外国の政府が『行ってはいかん』と(言っている)。中国の言う通りにすれば、アジア外交が(うまく)展開されるのか。そんなものではない」と強調した。
 今後の経済政策については、「景気の堅調な足取りをしっかり固めて、できるだけ早い時期にデフレ脱却を目指したい」と述べ、任期中のデフレ脱却に強い意欲を示した。
 また、首相は、自民党総裁選の「ポスト小泉」候補に対し、「小泉内閣が進めてきた改革路線をしっかり進めてほしい。指導者の3条件と言われる、使命感、洞察力、情熱を十分胸に秘めてしっかりと対応してほしい」と注文した。
 イラク陸上自衛隊の撤収時期については、「時期を言う段階にはない」と述べるにとどめた。

ところで、この首相記者会見の前に、河北新報が「日中関係 国交正常化の原点に戻ろう」という社説を掲載しました。そのなかで、国交正常化の原点として、周恩来首相が「戦争責任は日本の一部の軍国主義者にあり、中国人民だけでなく日本国民も犠牲者と語った」ことが想起されていますが、小泉首相の靖国参拝は、この「一部の軍国主義者」の「戦争責任」を不問にして、戦争犠牲者として追悼することであり、まさに日中国交正常化の原点をくつがえすものです。そこのところが、いままさに問われているのであり、日本のメディアもそこから目をそらすことのないようにすべきです。

社説 日中関係/国交正常化の原点に戻ろう(河北新報 3/26)

日中関係/国交正常化の原点に戻ろう
[河北新報 2006年03月26日日曜日]

 中国は「ポスト小泉」に照準を合わせた対日戦略構築に乗り出した。首相の靖国参拝が続くことを視野に入れ、パイプの再構築を政治以外に求めている。それでは、「政冷」固定を容認するメッセージを日本側に送ることにならないか。現状打開に消極的な姿勢は残念だ。
 中国の全国人民代表大会閉幕後に行われる恒例の首相記者会見。温家宝氏は、小泉純一郎首相の靖国神社参拝で冷え切った日中関係の改善に向け(1)政府間の戦略対話の継続(2)民間交流の強化(3)経済・貿易関係の発展―の3項目を提案した。
 昨年は小泉首相の靖国参拝には直接言及しなかったが、今年は「靖国問題が解決しない限り順調な発展は困難」と批判。「首脳交流」には触れず、「促進に向けた条件づくり」を提案した昨年から大きく後退した。
 戦略対話といっても高級事務レベルの定期協議だ。外交官同士の信頼醸成も経済人ら民間交流の拡大も、友好の基盤を強化する。だが、両国関係をダイナミックに発展させるには政治関係の緊密化が欠かせない。
 13億の巨大人口を抱える中国は、経済の高成長を維持しなければならない。増加一方の資源消費に食糧需要、悪化する環境は今や世界に影響を及ぼす課題となっている。
 猶予のならない状況を改善するには、隣国日本の技術と協力が必要だ。首脳交流を再開し、その道筋をつけることこそ対日戦略の要にすべきだろう。
 温首相は、関係悪化の責任は日本の指導者にあり、中国と日本国民にはないと言明。一方で「日中間の友好発展は、断固とした外交方針だ」と強調した。日中国交が正常化された1972年、周恩来首相と田中角栄首相のやりとりを想起させる。
 周首相は、戦争責任は日本の一部の軍国主義者にあり、中国人民だけでなく日本国民も犠牲者と語った。その言葉が温首相の念頭にあったとしたら、交渉の経過も思い出してほしい。
 両首相は、「アジア・世界のため、小異を捨てて、大同につく」認識で一致。周首相は賠償請求の放棄を約束し、田中首相は台湾との調整や与党内の反対など困難な問題を抱えながらも一気に国内をまとめた。
 両国は今こそ、国交正常化の精神を確認し、冷静に考えるときだろう。中国は大局的な対日政策を打ち出してもらいたい。日本は、「A級戦犯が合祀(ごうし)された靖国を首相が参拝することは、中国人の感情を傷つけ、侵略戦争を反省していないということ」という批判を謙虚に受け止める必要がある。
 感情的対立にまでこじれた関係を立て直すには、首脳同士の決断がカギを握る。まず、首脳の相互訪問再開をともに最優先政策にすべきだ。

日中関係、国交正常化の原点とはなにか」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: かわうそ実記

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