景観利益は法的保護に値する

東京・国立市のマンション訴訟で、最高裁が判決。20メートル以上部分の撤去を求めていた住民側の訴えは退けられましたが、いわゆる景観利益については法的保護に値するとの初めての判断を示しました。

国立マンション訴訟、住民の景観利益認める…敗訴確定(読売新聞)

国立マンション訴訟、住民の景観利益認める…敗訴確定
[2006年3月30日21時53分 読売新聞]

 東京都国立市の高層マンション(14階建て、高さ約44メートル)を巡り、周辺住民49人などが、建築主の明和地所(渋谷区)などを相手に、「並木道の景観が破壊された」として建物の一部撤去を求めた訴訟の上告審判決が30日、最高裁第1小法廷であった。
 甲斐中辰夫裁判長は、「良好な風景として歴史的・文化的環境を形成している都市景観は客観的な価値があり、住民がその景観を日常的に享受する利益(景観利益)は法的保護に値する」との初判断を示した。
 今回のケースについても、「街路樹と街並みの調和がとれている」と述べ、原告に景観利益があることを認めたが、問題のマンション建設が違法な利益侵害とまでは言えないとして、請求棄却の2審・東京高裁判決を支持して上告を棄却、住民側敗訴が確定した。
 最高裁が景観利益を認めたことで、各地で景観侵害を訴える住民が、司法に救済を求める道が開かれた。
 判決は、景観利益が違法に侵害されたと言えるのは、<1>刑罰法規や行政法規に違反している<2>公序良俗違反に当たる――など、社会的に許されない侵害行為があった場合に限るという基準も示した。その上で、問題のマンションについては、「建設当時の行政法規などに違反しておらず、容積と高さを除けば景観の調和を乱すような点は認められないから、社会的に許されないとまでは言えない」とし、違法性を否定した。

読売の記事によれば、「容積と高さを除けば景観の調和を乱すような点は認められない」とありますが、まさに「容積と高さ」が調和を乱している訳で、その点では、最高裁が違法性の条件を非常に厳しく制限したことは残念と言うほかありません。

国立のマンション訴訟、住民側の敗訴が確定 最高裁判決(朝日新聞)

国立のマンション訴訟、住民側の敗訴が確定 最高裁判決
[asahi.com 2006年03月30日20時28分]

 東京都国立市の「大学通り」沿いの14階建てマンション(高さ約44メートル)をめぐり、地元の住民が「景観が壊された」と建築主の「明和地所」(渋谷区)などを相手に、上層部の撤去などを求めた訴訟の上告審判決が30日、あった。最高裁第一小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は、「良好な景観の恩恵を受ける利益(景観利益)は法的保護に値する」とする初めての判断を示した。だが、今回の場合は「利益への違法な侵害はない」として、住民側の上告を棄却。住民側の敗訴が確定した。
 第一小法廷は都市の景観について「歴史的、文化的環境を形作り、豊かな生活を構成する場合には客観的な価値がある」と指摘。憲法の幸福追求権をベースに地域住民には「景観利益」があると認め、各地の景観被害をめぐって住民が裁判で回復を求める道を開いた。
 一方で、利益が違法に侵害されたと言うためには、「侵害行為が法令や公序良俗に反したり、権利の乱用に当たるなど、社会的に認められた行為としての相当性を欠く程度のものでなければならない」と、実際の被害救済にはやや高いハードルを設ける内容となった。
 舞台の「大学通り」については、整備された歴史的な経緯や、街路樹と建物の高さの調和などから「景観利益がある」と判断。だが市には当時、高さなどを規制する条例はなく、建物自体に法令違反もないため、「容積と高さを除けば、調和を乱すような点はない」として、景観利益の侵害はないと結論づけた。
 原告住民の石原一子さん(81)は「撤去が認められず残念だ」とする一方、景観利益という考え方が認められたことは「7年間の努力が認められた」と喜んだ。
 明和地所は「当方の主張が認められた。入居者に心配と迷惑をかけたが、今後は、安心して生活してもらえる」との談話を出した。
 この訴訟では、一審・東京地裁判決が「地権者の景観利益を侵害する」として、通りに面した棟の20メートルを超える部分(7階以上)の撤去を命じたが、二審で覆された。二審は「景観利益」も認めなかった。

住民運動のみなさん、ほんとにご苦労さまでした。

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