イラク機密情報はブッシュ大統領の指示だった

イラクの「大量破壊兵器」にかんする機密情報をメディアに漏洩した事件は、じつはブッシュ大統領が許可したものだったことが明らかに。

米大統領が機密情報の漏えいを許可と リビー被告が供述(CNN)
イラク機密情報漏洩疑惑で打撃、米ブッシュ大統領(朝日新聞)

米大統領が機密情報の漏えいを許可と リビー被告が供述
2006.04.07 Web posted at:13:02 JST- CNN

 ワシントン(CNN) ブッシュ米大統領が対イラク開戦後の03年、フセイン旧政権の大量破壊兵器開発疑惑をめぐる機密情報の漏えいを許可していたとの疑惑が浮上している。米政権幹部による中央情報局(CIA)工作員名の漏えい事件で起訴され、副大統領首席補佐官を辞任したルイス・リビー被告が大陪審で供述したとして、検察当局が6日、明らかにした。
 検察によると、同被告は03年夏、イラクの疑惑に否定的な情報をもたらしたウィルソン元駐ガボン米大使への反論を用意する過程で、チェイニー副大統領から「ブッシュ大統領が、イラクの大量破壊兵器に関する機密情報を報道機関へリークすることを許可した」と聞かされた。この情報は、ウィルソン氏への有力な反論となり得る内容で、実際に一部が公開された。
 大統領にはもともと機密情報を公開する権限があるものの、野党・民主党議員らは、ブッシュ大統領が当時、イラク戦争の正当化という「政治的目的」のためにこの権限を行使したと主張。「大統領自身が機密情報の漏えいに関与したとしたら、リビー被告らとの違いはどこにあるのか」(シューマー上院議員)といった批判が集中している。
 リビー被告は、ウィルソン氏の発言後、政権幹部が中央情報局(CIA)工作員だった同氏の妻の身元を報道機関に明かした事件をめぐり、虚偽証言や司法妨害などの罪に問われている。

イラク機密情報漏洩疑惑で打撃、米ブッシュ大統領
[asahi.com 2006年04月07日20時44分]

 ブッシュ米大統領本人がイラク機密情報の漏洩(ろうえい)に関与していた疑惑が浮かび、低支持率にあえぐ政権に追い打ちをかけた。最近は、沈没寸前の「タイタニック」に例えられるほど手詰まり感が漂う。秋の中間選挙を前に民主党は批判の勢いを強め、共和党議員や支持者にも「ブッシュ離れ」の動きが出ている。「テロとの戦い」一辺倒では政権浮揚につながらず、政策の実現にも支障をきたしかねない。
 「もし本当なら息をのむほどの驚きだ。大統領が情報漏洩の最高司令官だったことになる」
 野党・民主党のハーマン下院議員は、今回の疑惑の深刻さをそう表現した。前副大統領首席補佐官のリビー被告をめぐる事件で、ブッシュ大統領の関与が具体的に挙がったのは初めてだ。
 前補佐官はイラク戦争の推進派だったチェイニー副大統領の懐刀だった。大統領は記者会見で「情報を漏らした人間は解雇される」と発言していただけに「権力の乱用」(ニューヨーク・タイムズ紙)との批判が高まりそうだ。
 政権の支持率は低迷している。01年9月の同時多発テロ直後に90%あった支持率が、今年3月中旬には政権発足後、最低の36%(不支持率60%)まで落ちた。
 混迷が続くイラク情勢のほか、チェイニー副大統領が狩猟中に友人を誤射した事件や政治とカネのスキャンダルが浮上。大統領の地元テキサス州選出のディレイ前下院共和党院内総務が州選挙資金法の違反やロビイストとの癒着に問われ、政界引退に追い込まれた。
 ホワイトハウスは先月下旬、カード大統領首席補佐官の後任にボルテン行政管理予算局長を据えた。だが、民主党からは「タイタニックの甲板でイスを並べ替えても、船は真っすぐにはならない」(シューマー上院議員)と皮肉る声も。
 最近では、アラブ首長国連邦(UAE)の国営企業「ドバイ・ポーツ・ワールド」による米国の港湾業務への進出が断念に追い込まれたのが、ブッシュ政権の力の衰えの典型例だ。同時多発テロ犯の2人がUAE出身だったことに与野党の有力議員が猛反発し、「安全保障上の問題はない」と進出を支持した大統領のメンツはつぶされた。
 「私は勝利のために決断する。世論調査や選挙には惑わされない」
 ブッシュ氏は米軍のイラク駐留長期化を正当化し、方向転換の可能性を否定してきた。強気の姿勢の背景には、支持者の多くがテロ対策を重視し、イラク戦争を支持しているとの読みがある。
 ブッシュ政権は今回の疑惑が浮上する前、中間選挙の争点をイラク戦争を軸とする「テロとの戦い」にする意向を示していた。米軍撤退などの対応で党内が割れる民主党の弱みを突く戦術だ。しかし、米軍の出口戦略を描けず、戦費の拡大が止まらない現状には、与党共和党内からも不満が漏れる。ギャラップ社の世論調査では、この1年間に保守的な同党支持者が92%から81%、リベラル・穏健派の同党支持者でも78%から65%と、政権支持率が10ポイント以上落ちている。
 イラク問題で「大統領による漏洩」という疑惑が生じ、中間選挙に向けてこの問題が共和党の弱点になる可能性もある。

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