最上敏樹『いま平和とは』

最上敏樹『いま平和とは』

国際法の最上敏樹氏の最新著『いま平和とは』(岩波新書)を読みました。

読み終えていちばんの感想は、とにかく読みやすいこと。考えるべきテーマは微妙で、多様なのですが、著者は、それらを“一刀両断”にするのでなく、問題の多様性をできるだけ丁寧にとりあげ、微妙な問題にきちんとつき合いながら論じてゆきます。にもかかわらず、読みやすいというのがこの本の特徴だと思います。

取り上げられている論点は、本当にたくさんあります。国連とは何か、国連による集団安全保障とは何かという問題(第2話)、国際人道法と国際刑事裁判(第3話)、そもそも「平和」とはなにか(第4話)、人道を守るための武力介入は許されるのか(第5話)といった問題が、具体的な問題として、具体的に論じられています。最後の第8話と第9話では、「和解」の問題が、世界の問題として(第8話)、そして日本の課題として(第9話)取り上げられています。それは、いかに世界に向かって人びとを、そして自分自身を開いていくかという課題。これは思想の課題であると同時に、実践の課題でもある訳で、まさに「新しい戦争」の時代に、分断と対立の理由があらゆるところに吹き出しているときに、平和とは何かを「あきらめずに考える」ことの意味が、じわ?っと伝わってきます。

【書誌情報】書名:いま平和とは――人権と人道をめぐる9話/著者:最上敏樹/出版社:岩波書店(岩波新書、新赤版1000)/出版年:2006年3月/定価:本体740円+税/ISBN4-00-431000-8
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今週の「九条の会」(4月16日まで)

今週の各地の「九条の会」の活動を、インターネットを流れるニュースからピックアップしました。「九条の会」のメールマガジンでも、各地の活動紹介が始まっています。

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今月のコンサート(2) 新日本フィル第400回定期演奏会

コンサート3連荘の最後は、新日本フィルの定期演奏会。直前のプログラム変更で、インターネット上でもいろんな“憶測”が流れています。

もともとのプログラムは、ツィンマーマン「1楽章の交響曲」、シューマン「ヴァイオリン協奏曲」、ヒンデミット「交響曲『画家マティス』」の3曲。それが、シューマンの曲を残して、ブラームス「悲劇的序曲」、同「交響曲第4番」に。個人的には、ヒンデミットは大好きな作曲家で、アルミンクが「画家マティス」をどうふるか期待していただけに、なかなか納得のいかない変更です。

当日のプレトークでも、アルミンク氏がちらとふれておられましたが、シューマンのヴァイオリン協奏曲は、作曲家の生前には演奏されることなく、初演は1937年、ゲッペルスの指示によって、ユダヤ人であるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲に代えて演奏されたという曰く付きの曲です。それに、ナチス時代に「退廃芸術」の烙印を押されたヒンデミットと、そんなナチス時代をのりこえたあと1950年代に登場したツィンマーマンの曲となれば、なるほど「信」というテーマにぴったりのプログラムだと思います。

プログラム・ノーツも、「新日本フィルの今シーズンのテーマたる『信』を語ろうとすると、最も微妙な言い回しにならざるをえない相手が、シューマンやブラームスだろう」(渡辺和氏)と、まことに微妙な書き方がされていました。(^_^;)
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