先週末発売されたばかりの伊東光晴『現代に生きるケインズ』(岩波新書)ですが、さっそく読み始めて、まあだいたい半分ぐらいまで読み終わりました。
スタンスとしては、サブタイトルに書かれているとおり、「モラル・サイエンスとしての経済理論」という側面がぐっと押し出されています。理論的には、ハロッド流の貯蓄曲線、カーン流の「波及的乗数理論」、それにヒックスの「IS-LM理論」ではない「一般理論」という感じです。新古典派総合で近経を勉強した世代としては、なかなかショッキングな中味かも知れません。
伊東光晴氏がこれま一般向けの本としてケインズについて書かれたのは、1962年の岩波新書『ケインズ――“新しい経済学”の誕生』、1983年に講談社から刊行された『人類の知的遺産<70>ケインズ』(現在は、講談社学術文庫として入手可)、それにこんどの本で3冊目ということになります。このうち、1962年の『ケインズ』は、僕が初めて読んだ経済学本の1つ(もう1つは、都留重人氏の『経済学は難しくない』講談社現代新書)。非自発的失業、有効需要、乗数理論などは、全部、伊東氏のこの本で勉強しました。
僕自身のケインズ理解は、その後、置塩信雄先生の『近代経済学批判』(有斐閣、1976年)や、10年前のケインズ没後50年のときに置塩先生が書かれた「今なお問いかける資本主義の諸問題――ケインズは死んだか」(『週刊エコノミスト』1996年6月11日号)、「ケインズと有効需要・技術進歩」(『経済』1996年7月号、これら2論文は置塩『経済学と現代の諸問題』大月書店、2004年、に収録)によって大きく知見が開かれました。それでも、ハロッド的、カーン的、ヒックス的でないケインズというのは、まったく斬新です。いまになって学術文庫版の『ケインズ』を読み返してみると、「学術文庫版への序」で、簡潔にそのことを書かれていますが、当時は買っただけで読んでませんでした。(^_^;)
ということで、とりあえず浅野栄一『ケインズ「一般理論」形成史』(日本評論社、1987年)を日本の古本屋で注文。もう1回、ケインズ理論を勉強し直すことにします。
【書誌情報】書名:現代に生きるケインズ――モラル・サイエンスとしての経済理論/著者:伊東光晴/出版社:岩波書店(新赤版1013)/発行:2006年5月/定価:本体740円+税/ISBN4-00-431013-X
※追記:こっちに読み終わった段階での感想とメモを書きました。
→読み終わりました