職場での女性差別にかんする記事2つ

職場・仕事での女性差別にかんして、興味深い記事が2つあったので紹介しておきます。

1つは、22日付「日経」夕刊15面の「住友系3社 差別訴訟が残したもの」という記事。
もう1つは、今日の「東京新聞」朝刊8面の「働く女性は今」の記事。

「日経」の記事は、住友電気工業、住友化学工業(現住友化学)、住友金属工業の女性社員たちが賃金・昇進などでの差別を訴えた裁判が、全部「実質的勝訴」的内容で和解したことをとりあげ、「十年にわたって争われてきた男女賃金差別訴訟が残したものは何か」と問いかけ、検証したもの。

一審では女性たちが敗訴したにもかかわらず、住友金属訴訟の一審勝訴をきっかけに、3つの裁判とも「実質的勝訴」の和解が成立したという裁判の経過をふり返りながら、「背景にあるのは、男女平等意識の高まりだ」「他の差別訴訟でも和解が相次いでいる」と指摘しています。

さらに、「今後の課題」として、「なぜ女性が幹部候補になれないか」と問いかけて、次のように書いています。

 しかし、なぜ転勤を要件に雇用管理を分けるのか。残業しないと正社員になれないのか。なぜ両者の処遇はこれほど違うのか。一見、性に中立な基準でも、合理性を欠き、結果として一方の性に著しく不利に働くとなどすれば「間接差別」となる。総合職に占める女性の割合は5%。働く女性の半数以上は非正社員だ。
 大阪高裁は住金訴訟の和解勧告の中で「過去の人事制度が改革され、性中立的システムが構築されたかにみえるが、実際に男女格差が是正されたとはいいがたい」とし、「意識改革の遅れが間接差別や非正社員などの新たな差別を生み出さぬよう、十分に留意されるべきだ」と指摘した。
 十年に及んだ住友系三社の訴訟は、過去の清算を迫り、新たな差別への対応をどうするかという問題を突きつけた。(「日本経済新聞」2006年5月22日付夕刊)

「東京新聞」の記事も、なぜ女性管理職が増えないのかという問題をとりあげています。記事は、西京銀行(山口・周防市)や日産自動車など取り組みの進んだ企業の例をあげたあと、次のように書いています。

 実は積極的な女性登用を行っている国内企業はほんの一握りだ。……総務省の労働力調査によると、管理職に占める女性の割合は04年で9.7%。米国の45.9%、ドイツの35.9%などと比べかけ離れて低い。
 厚生労働相の調査では役職別でも部長、課長クラスの割合が99年度から05年度まで、ほとんど横ばい。05年度でそれぞれ2.8%、5.1%と低水準だ。総合職に占める女性の割合も、99年度の3%から04年度でわずか5%に増えただけだ。(「東京新聞」2006年5月23日朝刊)

では、原因は何なのか? 記事は、早稲田大学の朝倉むつ子教授の発言を引いて、次のように指摘しています。

 私生活上、9割の家庭責任を女性が担っている。たくさんのたがをはめられた女性が、男性と同じ働き方をする総合職、管理職になれるかというと難しい。(同前)

しかし、この記事のいいところは、それをたんなる意識の問題にしていないことです。「重要なことは男性の働き方がどこまで変われるか」(朝倉教授の言葉)だとして、次のように指摘しています。

 だが、この男性の働き方を生活調和型に変えようにも、90年代からの厳しい企業リストラを経て、個人の労働負担は逆に増えているのが現状だ。朝倉教授は「人間らしい働き方を実現するための労働法が緩和され、すべてが利益主導型になっている。女性総合職、管理職が増えないのも、そこに根本要因がある」とみている。(同前)

男女雇用機会均等法施行20年で、何が課題かをリアルに浮き彫りにしてくれる記事でした。

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