「日経新聞」の本日付夕刊「十字路」欄に「就労世代への社会支出増を」というコラムが載っています。筆者は、日本総合研究所理事の足立茂氏。
気になったのは、ここ。
経済協力開発機構(OECD)統計によると、わが国は就労世代の税・社会保障負担・給付前所得(以下、当初所得)でみたジニ係数や相対的貧困率(中位所得費50%未満所得層の割合)が低く、平等感が強い国民意識と整合する。しかし、税・社会保険料を差し引き、社会保障給付を加えた可処分所得ではジニ係数はOECD平均より高く、貧困率も高水準だ。同比率は就労世代のいずれの年齢層でも高く格差が大きい国となる。
一般的な理解では、当初所得では格差が大きく、税・社会保険料を引き社会保障給付を加えた再配分後の所得では格差が小さくなる、というのではないでしょうか。ところが、当初所得の方が平等で、再配分後の所得の方が格差が大きいとは、こりゃいかに? というのが、よく分からないところです。どなたか詳しい方、ぜひご教授を。m(_’_)m
さて、それはそれとして、面白いのは、このコラムの内容。足立氏は、続けて次のように指摘しています。
対照的なのがフランス。就労世代の当初所得でみたジニ係数は平均に比べて高いし、相対的貧困率も高水準で格差が大きい国だ。だが可処分所得ではジニ係数、相対的貧困率とも低くなり、格差が小さい国に生まれ変わる。
ということで、足立氏はOECD諸国を次のように分類されます。
- 当初所得、可処分所得のいずれでも格差が大きい米国
- いずれも低い北欧
- 当初所得では格差が大だが可処分所得では格差が小となる欧州大陸諸国(イタリアを除く)
- 大陸諸国と逆の結果のわが国
で、これらは「政策選択の結果」だということです。つまり、「機会均等は追求するが、結果の不平等には目をつぶる」のが米国、それに対し北欧諸国は「機会均等・結果の平等のいずれも追求する」というのがおもしろいですね。
その上で、足立氏は、次のように問題を提起されています。
だが就労世代にとり可処分所得こそが生活実感に適う指標で、ここでの格差が国際的に大きいのが問題だ。とりわけ格差固定化を招きかねない就労世代の貧困率抑制は重要政策課題だ。格差固定化が機会均等を損ねかねない。
これにたいし、氏は、「就労世代向け社会支出の国内総生産(GDP)比率が高い国ほど相対的貧困率が低い」という事実に注目し、就労世代への社会保障給付の配分を増やすこと、具体的には「子育て、教育、就労支援等で税制優遇や手当の改善」を提唱されています。
そのために「高齢者に偏った社会保障給付の配分を変えて」というところは、にわかには同意しかねますが、就労世代が子育てでも教育でも一番負担が重いのは事実。そこに手厚く支援することは、格差解消という点だけでなく、国民生活を安定させ、“懐を暖めて”消費を上向かせるという点でも、日本経済の健全な発展にプラスになると思います。
突然ですが。ブログランキングの、バナーがリンク切れです。
>自由さん、初めまして。「ぼくら党」ブログ、時々拝見しております。
(^^)ありがとうございます。また、よろしければコメントくださいね。
>そうなのです。突然リンク切れになってしまい、ランキングにも表示されなくなってしまいました。問い合わせてはいるのですが、今のところ梨のつぶてです。
んーそうでしたか。これは失礼しました。
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