古い本ですが、浅野栄一『ケインズ一般理論入門』(有斐閣新書、1976年刊)を読み終えました。伊東光晴氏のケインズ理解と重なるところもたくさんあるのですが、同じことを主張していても、伊東氏と角度が違っていたりして、理解が深まるところがたくさんありました。
とくに9章「若干の理論的・実践的示唆」と第10章「『一般理論』その後」は参考になりました。もちろん、1970年代に書かれた著作ですので、議論の前提になっている時代状況は違っていますが、それをこえて新鮮に読むことができました。
もう1つ勉強になったのは、ケインズに限らず、経済理論を勉強するときは、その理論そのものより、その理論が想定している前提条件が何なのかを理解することだということ。近代経済学の場合、完全競争市場とか、収穫逓減か収穫一定かとか、いろいろ前提がありますが、現実の経済がケインズの前提とあわなくなったとき、現状の諸前提のもとでケインズ理論がどうなるか、あるいはどこをどう発展させるか考えないといけないということがよく分かりました。
【書誌情報】著者:浅野栄一/書名:ケインズ一般理論入門(有斐閣新書)/出版社:有斐閣/出版:1976年/ISBN4-641-08707-5
※インターネット上では、品切れ・絶版にはなってないみたいです。
私はこの本を座右に置いて「一般理論」を読み込みました。非常に丁寧な記述で素晴らしい本です。伊東光晴氏の本が有名ですが、内容的には本書の方が優れているように思います。