来年の参院選を意識して、政府・自民党の中では、2007年度税制改革での消費税増税の見送りの方向が濃厚になる一方で、幹部はあっちこっちで「消費税は社会保障の財源にあてる目的税に」の発言を繰り返しています。
こうやって「社会保障のためなら消費税の引き上げも仕方ない」という雰囲気をつくりながら、真正面から「消費税増税をしようとしている」と言われれば「そんなことは決まってない」などと言い逃れできるようにして、そのまま参院選を乗り切ろうという魂胆。こんな姑息なやり口は許されません。
“消費税率上げ 福祉目的に”(NHKニュース)
消費税「福祉目的税化が有力」 与謝野経財相(朝日新聞)
財政再建へ 福田氏「消費税アップ必要」(北海道新聞)
しかし、2005年度の社会保障財源の税(国・地方)負担分は約28兆円。これを全部消費税でまかなうには、10%以上の税率が必要になります。いま財界は、社会保険料の事業主拠出分(約27兆円)をゼロにするよう要求しています。もし消費税の社会保障目的税化と抱き合わせに、事業主拠出分が廃止されると、消費税率は22%程度は必要となります。しかもここまで消費税率を引き上げても、私たちは、いまと同じ社会保険料負担分を払い続けないとダメなのです。
もしそんなことになったら、あなたの暮らしはどうなります?
しかも、もし社会保障財源への目的税化を決めてしまえば、社会保障を充実したければ消費税率の引き上げを認めるしかない、消費税増税がいやなら社会保障を我慢するしかない、という最悪の“究極の選択”になります。
「社会保障のためなら仕方ない」という雰囲気に呑まれたら、大変なことになります。
“消費税率上げ 福祉目的に”
[NHKニュース 2006/06/03 21:02]自民党の片山参議院幹事長は岡山県玉野市で講演し、財政再建のため、将来、消費税率の引き上げが必要になるとしたうえで、引き上げ分は年金や介護など福祉目的にあてるべきだという考えを示しました。
この中で、片山参議院幹事長は、9月の総裁選挙では、消費税の取り扱いが争点の一つになるとしたうえで、「財政再建のために、将来、消費税率を引き上げる際には、高齢社会の社会保障の財源にあてることをはっきりさせなければならない」と述べ、引き上げ分は年金や介護など福祉目的にあてるべきだという考えを示しました。また、片山氏は「消費税率を上げるのならば、生活必需品や食料品にかかる税率は、ほかのものより低くする複数税率にしなければならない」と述べました。
一方、片山氏は、安倍官房長官を支持する議員らが発足させた議員連盟や福田元官房長官が会長をつとめる議員グループが相次いで会合を開いたことについて、「会合の出席者の中には、安倍さんを推さない、福田さんを推さないという人もいる」と述べ、会合への出席が、9月の自民党総裁選挙で直ちに安倍氏支持や福田氏支持につながるわけではないという見方を示しました。
消費税「福祉目的税化が有力」 与謝野経財相
[asahi.com 2006年05月31日22時28分]与謝野経済財政相は31日、消費税収を年金、医療など社会保障関係費だけに使う目的税化について「有力な考え方だ」と述べ、消費税の税率引き上げの際の目的税化が望ましいとの考えを示した。経済財政諮問会議後の記者会見で語った。
与謝野氏は「国が(税金を)一時預かり、(社会保障として)全額国民に返す形の税制の方が国民の理解を得やすい」と利点を強調。この日の諮問会議でも、民間議員が「増収(増税)措置の検討にあたっては、新たな国民負担は国民に還元する原則を徹底すべきだ」と提案しており、政府が7月までにまとめる「骨太の方針」に目的税化の考え方を盛り込む方向で検討が進みそうだ。
消費税は毎年の予算総則の中で、地方交付税に回す分を除いて社会保障財源に充てることを明記しているが、法律の縛りはない。与謝野氏は「目的税にするというのは特定財源的な考え方だ」と話し、消費税収を一般会計から切り離す明確な目的税をめざすべきだとの考えも示した。ただ、無駄遣いを生みやすいとされる特定財源化には、政府・与党内にも異論が根強い。
財政再建へ 福田氏「消費税アップ必要」
[北海道新聞 2006/05/28 07:45]自民党の福田康夫元官房長官は二十七日、名古屋市内で講演し、財政再建について「消費税(率引き上げ)を、嫌だけど言わなければならない。ぜひ協力をお願いしたい」と述べ、消費税率の引き上げは避けられないとの認識を示した。
福田氏は「仮に5ポイント上げると、年間十二兆円の収入になる」との試算を示し「八百兆円の借金に比べると少ないが、十年で百二十兆円になる。少しずつ着実に返済に充てていき、将来に備える必要がある」と述べた。
また、公明党との協力関係について「選挙では地区、地区で融合している。変えようとしても変えられない」と強調した。