財務省財務総合政策研究所が「日本の経済格差とその政策対応に関する研究会」報告書を公表。
それによれば、ジニ係数(当初所得)は、1990年から1996年まではほぼ横ばいだったのにたいし、その後は上昇傾向であることが明らかに。1999年の0.482から2002年には0.514へと所得格差は拡大しています。また、25歳未満の若年層では、1987年?2002年の15年間にジニ係数が26%も拡大。
財務総合政策研究所の報告書の要旨はこちら。
→「我が国の経済格差の実態とその政策対応に関する研究会」報告書(PDFファイル、101KB)
若年層の格差指数 15年で26%上昇
[東京新聞 2006年6月6日]財務省の財務総合政策研究所が五日発表した「日本の経済格差とその政策対応に関する報告書」によると、1987?2002年までの15年間に、所得格差の度合いを示す代表的指標の「ジニ係数」が25歳未満の若年層で約26%上昇したことが分かった。「45?54歳」では約3%の上昇にとどまっており、若者の格差拡大が鮮明になった。厚生労働省の「所得再分配調査」のデータをもとに千葉大学の大石亜希子助教授がまとめた。
若年層の格差拡大について、大石助教授自身は「原因を分析していない」としているが、「ニートやフリーターの増加が格差拡大の要因」と指摘する専門家は多く、論議を呼びそうだ。
それによると、税と社会保障制度による所得の再分配を加味すると65歳以上の高齢者などでは格差の縮小が進んだものの、25歳未満では課税所得に達しない層も多く、ジニ係数は逆に約29%も上昇。「35?44歳」も格差拡大の傾向が目立った。
ジニ係数の上昇については、高齢者では所得格差が大きいのが、社会全体が高齢化したため見かけ上大きくなっただけだという説があります。仮にそうだとしても、高齢者の所得格差の拡大を放置して良いという理由にはなりませんが、実際には、それだけにとどまらず、若年層で所得格差が拡大していることが確認された、ということは非常に重要です。
また、「近年は子供が高齢者と同程度の貧困リスクにさらされており適切な再分配が行われていないと考えられることから、一層の少子高齢化が進むとみられる」(大石亜希子論文)という指摘も、なかなか重要。
ただし、この報告書の基調は、「1980 年代後半以降における税制・社会保障制度の全体を通じた再分配は、そのほとんどが現役層から高齢層への大幅な年齢階層間の移転として行われている」とか「2004年の年金制度改正後ベースの試算として、生涯の負担と給付がバランスするのは、厚生年金では、1958年頃に生まれた世代、国民年金(夫婦とも加入している世帯)では1965年頃に生まれた世代であり、その後の世代はいずれも負担超過となる」、「公的年金等控除が大きいので年金世帯の税負担が非常に軽減されている」など、世代間の対立を指摘することにあるようです。それだけに、全体をよく分析することが必要だと思います。
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