「朝日新聞」の調査によれば、「愛国心」評価の通知表は全国190小学校でおこなわれています。
共産党の志位委員長の質問で、見直しの動きが広がっていますが、他方で、小坂文科相は「通知表の表現は学校長にゆだねられている」という理由で通知表の表現については規制しないとも発言しており、実際に「愛国心」通知表をなくすためには、地域ごと、学校ごとの取り組みが重要です。
通知表の表現は規制せず/「愛国心」評価で文科相(東奥日報)
「愛国心」盛り込んだ通知表、全国190小学校に(朝日新聞 6/9)
77校に「愛国心」項目 中部の公立小通知表(中日新聞 6/9)
愛知県の小学校35校で「愛国心」通知表(朝日新聞 6/7)
通知表の表現は規制せず 「愛国心」評価で文科相
[東奥日報 2006年6月5日]小坂憲次文部科学相は5日の衆院教育基本法特別委員会で、埼玉県行田市の小学校の通知表の評価項目に「自国を愛し」などの表記があることについて「通知表の表現は学校長に委ねられている。表現を個別に審査し、認可するなどの規制を設けるつもりはない」と述べ、「愛国心」にまつわる表現があっても規制しない考えを示した。
文科相は「『我が国と郷土を愛するとともに』などとする評価項目を書くことは否定しないが、内心を評価することがあってはならないことを指導する」と重ねて強調した。(共同通信社)
「愛国心」盛り込んだ通知表、全国190小学校に
[asahi.com 2006年06月09日19時50分]「国を愛する心情」を通知表の評価項目に盛り込んでいる公立小学校が、少なくとも13都府県39市区町村に190校あることが、朝日新聞の調べでわかった。かつて盛り込んでいたが削除したという学校は、少なくとも122校あり、その多くが児童の内面を評価することの難しさを理由に挙げている。
教育基本法改正案が国会に提出される中、5月下旬から6月上旬にかけて、各都道府県や市区町村の教育委員会などに取材し、昨年度の通知表に「愛国心」の項目があることが判明した学校数を集計した。通知表は各校が独自に作る原則で、教委などがつかんでいない例が他にもある可能性がある。
「愛国心」を通知表に盛り込んでいる学校数は3年前の調査では172校だった。今回は、前回の調査で把握できなかった学校が新たに判明する一方、3年の間に「愛国心」の項目を削除した学校もあり、差し引きで全体では若干の増加となった。
この190校の中にも「今年度からの削除を決めた」(京都府宇治田原町、2校)、「見直しも視野に入れている」(東京都港区、1校)などの例や「今年度については検討中」という自治体がある。このため、この190校が今学期末に配る今年度の通知表に「愛国心」の項目が必ずしもあるとは限らない。
「愛国心」は、大半が小6もしくは小5の社会科の「関心・意欲・態度」についての評価項目に盛り込まれ、A?Cなどの3段階評価だ。
典型は「我が国の歴史や政治、国際社会における役割に関心をもち、意欲的に調べることを通して、国を愛する心情や世界の人々と生きていくことが大切であるということの自覚を持とうとする」(茨城県龍ケ崎市)。
多くは「調べ学習を通じて」の前提付き。「現実には前半の『調べ学習』部分で評価を決めている」と複数の自治体が話す。国際理解や世界平和も観点に併記されている。
徳島市の2校は小5の社会科で「国土に対する愛情を持とうとする」との表現になっている。千葉県鴨川市、南房総市の3校も同様の表現だ。
この190校以外にも、兵庫県たつの市、太子町の計22小学校と岩手県釜石市の小・中計3校は、教科学習ではなく「生活のようす」「行動のようす」の項目で、規則の尊重や公徳心と並べて「郷土や我が国の文化や伝統を大切に」することを評価対象にしている。
以前は項目があったが削除した学校には、外部からの抗議や意見を受けた福岡市のような事例もあるが、多くは内面評価の難しさを実感して自主的に削除したものだ。
たとえば、愛知県清須市教委の担当者は「実際に通知表を使った校長から、『子どもの内面を評価することが難しかった』と聞いた」と説明する。基本法改正論議が始まった今も「いちど難しさを実感したから、またすぐ戻そうとはならないだろう」と言う。
77校に「愛国心」項目 中部の公立小通知表
[中日新聞 2006年6月9日]「愛国心」が焦点となった教育基本法改正案の審議は衆院で継続審議が決まっているが、中部6県では、愛知県尾張地方を中心に少なくとも77校の公立小学校で、昨年度の通知表に愛国心に絡む評価項目を採用していたことが中日新聞の調べで分かった。小泉純一郎首相が先月下旬、評価項目とするのに否定的な答弁をしたことなどを受け、項目の見直しを始めた学校も出ている。
愛知県は尾張地方で73校、うち海部津島地域だけで46校が採用していた。同地域では、2002年度施行の新学習指導要領で学習目標に「国を愛する心情」が入ったのを受け、校長会が中心となり評価項目化を検討。6年生の社会科の評価に「わが国の歴史・政治・国際社会に関心をもち、意欲的に調べることを通して国を愛する心情をもつ」との項目を設けた。3?5年生では「国土に対し愛情をもつ」などの表現とした。このうち愛西市の校長会が8日、本年度から削除する方針を決めたほか、地域全体で見直しの動きが出ている。
同県一宮市でも、合併した旧尾西市内の7小学校の通知表に愛国心に関する項目があり、同市教委は「見直しを含め検討している」と話す。同県美浜町では1小学校の5年生の社会科の評価に「国土の様子に関心を持って積極的に調べ、国土に対する愛情を持とうとする」があり、同町教委は「愛国心をめぐる国のやりとりから、学校が自発的にこの文言をやめるのでは」と言う。
岐阜県内では、岐阜市内の小学校2校が「国土に対する愛情をもとうとする」との項目を設け、5年生の通知表に採用。市教委は、新指導要領の施行に伴い、意欲や関心の度合いをみるために設けたもので「愛国心の有無を評価するものではない」と説明する。
滋賀県も2校。彦根市の稲枝北小は、02年の施行を受け、6年生社会科に「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する信条を持とうとする」との項目を設けた。1995年の開校時から「国を愛する」という項目がある同県湖南市の菩提寺北小は「地域に親しみを持ってもらうための取り組みに力を入れている。愛国心を評価しているわけではない」と話す。
福井県では03年度に勝山市内の小学校9校など計11校に項目があったが、その後削除され、県教委調べでは現在はないという。
愛知県の小学校35校で「愛国心」通知表
[asahi.com 2006年06月08日06時18分]「愛国心」の取り扱いを焦点とした教育基本法改正案が衆院特別委員会で審議されているが、愛知県の少なくとも35校の小学校で現在、愛国心の評価を通知表に盛り込んでいることが朝日新聞の調べで分かった。このうち津島市や愛西市の計21校では見直す方向だ。
愛国心に関する評価項目のある通知表を採用しているのは、同県海部教育事務所管内の3市2町1村の小学校計35校。いずれも「我が国の歴史・政治・国際社会に関心をもち、意欲的に調べることを通して国を愛する心情をもつ」という項目を6年生の社会科の観点の一つに盛り込み、「◎○△」の3段階で評価している。
一方、小泉首相が衆院特別委員会で、通知表の「愛国心」に関する項目について「必要ない」と答弁するなど、見直しの動きも出ている。
市内8校で採用している津島市教育委員会は前期の通知表から見直す方向で検討している。13校で実施している愛西市教委でも校長会を通じて見直す方向だ。7日には弥富市教委に項目の削除を求める要請書が共産党市議団から出され、市教委が検討するという。
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