谷垣財務相が、財務担当大臣として、初めて消費税を目的税化すべしとの考えを表明。経済財政諮問会議でも目的税化の議論が出されています。他方で、来年の参院選にむけて、最終決定は2008年に先延ばししつつ、「社会保障のため」を口実にして増税を押しつけようという方針のようです。
しかし、前にも書いたとおり、福祉目的税化するといっても、現在の社会保障財源のうち税負担部分を全部消費税でまかなうとしたら、それだけで10%以上の増税が必要。高齢者の医療負担を増やし、年金への課税を強化し、そのうえ消費税増税…。どこが「社会保障のため」なのでしょう。
消費税 「社会保障目的」を表明 谷垣財務相(毎日新聞)
消費税の目的税化求める 諮問会議で民間議員(共同通信)
消費税 「社会保障目的」を表明 谷垣財務相
[毎日新聞 6月16日17時12分更新]谷垣禎一財務相は16日の閣議後会見で「歳出削減を徹底した上で国民負担をお願いするときは、消費税を社会保障の安定財源として位置付けたい」と述べ、消費税を引き上げる際に「社会保障目的税」とするのが望ましいとの考えを初めて表明した。今後の政府支出の増加分の大部分を占める社会保障費の財源を確保するとともに、目的税化で消費税増税への国民の理解を得たい考えだ。消費税増税の規模や時期については「今後の歳出・歳入一体改革の議論の中で詰める」と明言を避けた。
柳沢伯夫・自民党税制調査会会長らも既にこうした考えを示しており、政府・与党の歳出・歳入一体改革案に社会保障目的税化が増税の際の選択肢として盛り込まれる見通しとなった。
政府の06年度一般会計の社会保障費は20兆5739億円で、一般歳出の44.4%に及ぶ上、今後も年間1兆円規模で増え続けるとみられる。谷垣財務相は、財源を国債に頼って将来世代にツケを先送りするのではなく、今、国民に負担を求めて世代間の不公平感を薄めるとともに、景気に左右されにくい消費税を安定財源として位置付ける必要があると判断した。「社会保障費を確保するには、消費税収を上げなくてはならない」という仕組みとすることで、社会保障給付の伸びを抑制する狙いもある。
財務相はこれまで「無駄遣いにつながりかねない」などとして目的税化に慎重だったが、財政制度等審議会が14日、消費税を社会保障財源に充てる意見書を公表。これを受け、社会保障目的税化を容認した。
消費税は99年度から、基礎年金、老人医療、介護の3分野に使途を限っており、事実上の目的税になっている。しかし、使途を3分野に限らず、「社会保障目的」全般に広げれば、消費税の引き上げ幅が拡大を続ける恐れもある。【山本明彦】
消費税の目的税化求める 諮問会議で民間議員
[共同通信 6月16日20時21分更新]政府は16日、経済財政諮問会議を開き、2011年度までに、国が借金に頼らないで政策経費を賄える「基礎的財政収支の黒字化」を達成するための社会保障制度改革や、「骨太の方針」策定について議論をした。吉川洋東大大学院教授ら民間議員は、今後増加が見込まれる社会保障関係費について「歳出と歳入をバランスさせる必要がある」と主張。安定財源の確保のために、消費税を目的税化するよう求めた。
介護や生活保護の給付水準や範囲のほか、雇用保険の国庫負担を見直すよう求めた。
また、社会保障番号や社会保障個人会計の導入に向けた「社会保障サービス効率化プラン(仮称)」を策定し、具体的な目標を示して合理化するべきだとした。
来年、参院選挙をひかえているから、消費税増税の決定だけは2008年に先延ばしするというのは、あまりに姑息。本気で「目的税化」を進めるつもりなら、堂々と「消費税を○○%に引き上げます」選挙公約に掲げて選挙をたたうべきでしょう。
消費税上げの具体化、08年度改正以降になる見通し(ロイター)
消費税上げの具体化、08年度改正以降になる見通し
[ロイター 6月16日19時57分更新][東京 16日 ロイター] 複数の自民党税調幹部によると、消費税引き上げの具体化は2008年度税制改正以降になる見通しとなった。政府が7月にまとめる「骨太の方針」にも具体的な増税時期や税率などの明記は見送られる方向だ。谷垣財務相は16日、閣議後の記者会見で消費税の社会保障目的税化に踏み込んだ。政府・与党は、増大する社会保障の安定財源として消費税を目的税化することで、税率引き上げに対する国民の理解を得たい考えだ。
<07年夏の参院選を控え、消費税増税具体化は先送り>
政府・与党の消費税に対するスタンスに強い影響力を持っている自民党税調の中では、07年夏の参院選を控え、消費税増税をめぐる議論を2008年度の税制改正以降に先送りさせようという考え方が強まっている。
自民党税調は、法人税の減価償却制度の見直しや税制面からの少子化対策、所得税の最高税率の問題などの検討項目を挙げ、経済活性化を図るとともに、逆進性のある消費税引き上げが受け入れられやすい環境整備を先行させる手順を提示している。
自民党税調顧問でもある片山虎之助・参院幹事長は12日のロイターのインタビューで、消費税増税の法案提出時期について「再来年度(2008年度)の税制改正で具体的なテーマになるかどうかだ」とし、「早くて平成20年(2008年)だ」と述べた。
別の自民党税調幹部も「消費税引き上げは最後のゴールだ」(同幹部)と述べ、2007年夏の参院選を控え、具体化の議論は先送りになる考えを示している。
こうした政治情勢の下で、政府も7月にまとめる「骨太の方針」では、具体的な増税幅などの盛り込みは見送る方向だ。片山参院幹事長はこの点について、具体的な内容を「書けるわけがない」と指摘していた。<財務相が、目的税化に初めて言及>
一方、財務省は、増大する社会保障の安定財源を確保し財政の持続性を確保するため、消費税の「社会保障目的税化」を決断した。
本来、財務省は財政の硬直化につながる目的税化には慎重な立場を取ってきた。しかし、増大する社会保障関係費の安定財源として目的税化にかじを切った。
財政制度審議会(財務相の諮問機関)が14日に消費税の社会保障目的税化の必要性を示唆する論点整理をまとめたのを受け、谷垣財務相は16日の閣議後の記者会見で、初めて目的税化を認める発言をした。
谷垣財務相は、今後増大が見込まれる社会保障の安定的な財源確保には「消費税を社会保障の安定財源と位置づけて国民への給付にあてることで国民の理解と納得を得ることが望ましい」と述べ、消費税を目的税化すべきだとの考えを示した。
与謝野経済財政・金融担当相は早くから目的税化を主張しており、最近の「社会保障還元税」もほぼ同じ内容となっている。自民党税調も14日の論点整理で「消費税の社会保障目的税化」の検討を明記している。
政府・自民党内では、「高度な政治判断」(谷垣財務相)とされる消費税引き上げについて、国民共通の関心事である社会保障制度の持続を図るため、目的税化することで国民の理解を得たい考えだ。