今日の朝日新聞に子育て世帯の減税についての特集記事が載っています。
そこでは、2つの減税方式による減税額の違いがグラフで示されています。1つは、たとえば子ども1人あたり10万円として、子どもの数だけ税額控除するという方式。もう1つは、N分N乗方式(記事では「フランス方式」)と言われているもので、世帯の総所得を子どもを含めた家族の人数(N)で割って、1人あたりの課税所得を計算。それに税率をかけて1人あたりの税額を出し、それを再びN倍して納税額を出すというもの。フランスで出生率が上がっているものだから、N分N乗方式は、少子化対策に最も効果がある税方式であるかのように宣伝されています。
しかし、その結果をみると、非常に劇的なもの。
N分N乗方式だと、たとえば年収1000万円では37.4万円の減税、年収2000万円だと207.7万円もの減税になります。税額控除方式だと、もっぱら年収400万円?600万円の階層が恩恵を被るのに対して、N分N乗方式は、圧倒的に高額所得者に有利という試算結果が出ています。
現在の所得控除方式では、累進税率のため高額所得者ほど減税の恩恵が大きくなると指摘されていますが、その差は20万円ほど。それに比べると、このN分N乗方式の格差は尋常ではありません。同じ子育て減税といっても、これだと金持ち減税にしかなりそうにありません。(もちろん、所得税の累進税率をもっと大きくすれば、結果は変わってくるでしょうが)
【子育て減税額の比較】
年収 | 現行方式 | 税額控除 | N分N乗方式 |
---|---|---|---|
300万円 | 10.9万円 | 13.4万円 (+2.5万円) |
10.9万円 (変わらず) |
400万円 | 10.9万円 | 20.0万円 (+9.1万円) |
10.9万円 (変わらず) |
600万円 | 14.2万円 | 20.0万円 (+5.8万円) |
15.2万円 (+1.0万円) |
1000万円 | 21.8万円 | 20.0万円 (?1.8万円) |
59.2万円 (+37.4万円) |
2000万円 | 31.7万円 | 20.0万円 (?11.7万円) |
239.4万円 (+207.7万円) |
(注)サラリーマンと専業主婦、中学生以下の子ども2人の4人家族のケース。カッコ内の数字は現行の所得控除方式と比べた減税額の増減。減税額は、所得税と個人住民税を合わせた年間の負担軽減額。
税額控除方式は、所得控除による扶養控除が廃止され、子ども1人あたり10万円の税額控除が導入されたと想定。N分N乗方式が導入された場合は、扶養控除と配偶者控除が廃止されたと想定。大和総研・鈴木準主任研究員による試算。
(出所)「朝日新聞」2006年7月16日付7面
詳しくは、大和総研のレポート鈴木準「N分N乗方式の減税規模は1.8兆円」(PDF 91,370bytes)を御参照ください。