リコール隠しが明らかになったトヨタ自動車だが、社内調査で過去5年間の「市場技術速報」を調べただけで、それ以上の調査をおこなっていないと、「東京新聞」が指摘している。過去に遡った徹底調査をおこなった三菱自動車、ふそうとは対象的。記者会見も、副社長が2回やっただけだという。
なのに、なぜメディアは、トヨタを批判しないのか? 自動車業界トップのトヨタが恐いのか? スポンサーを失いたくないのか? “叩きやすいところを叩く”のではメディアの役割は果たせないと思うのだが…。
調査 過去さかのぼらず/トヨタ リコール問題検証(東京新聞)
調査 過去さかのぼらず/トヨタ リコール問題検証
[東京新聞 2006年8月4日朝刊]
トヨタ自動車の幹部が欠陥を約8年間放置して人身事故が起きたとされる業務上過失傷害事件で、国土交通省は3日、同社から業務改善報告書を受け取り、行政対応に一区切りをつけた。同社は提出後の会見で「今後の社内調査の予定はない」と表明。社内調査の徹底で信頼回復を図った2年前の三菱自動車らによるリコール隠し・放置事件とは対照的な対応となった。 (西岡聖雄)
■三菱自と対照的対応
最大の違いは、三菱自と分社した三菱ふそうトラック・バスはリコール(無料の回収・修理)を逃れるため、販売店入庫時に内密に欠陥を直すヤミ改修を行ったのに対し、遅いとの指摘はあるもののトヨタは事故の2カ月後にリコールを届けている点だ。
トヨタを捜査した熊本県警内には「ヤミ改修した三菱より、事故まで何もしなかったトヨタの方がある意味で罪深い」との声もあるが、ヤミ改修は道路運送車両法違反。実施率も平均数%と低く、三菱の欠陥放置は悪質だった。事故の8年前の1996年当時は欠陥の認識がなかったとするトヨタの場合、同法違反とまでは言えず、国交省の行政指導も三菱両社への警告より軽い業務改善指示にとどまった。
違いは社内調査にも表れる。三菱自は当時、調査チームをつくり社員延べ4000人が販売店に残る不具合記録を分析。79年以降、100件以上の欠陥をあぶり出した。
ふそうも延べ数千人の社員が販売店や関連会社に眠る約28万枚の文書を回収し、71年以降の欠陥約80件を発掘。社員に自主申告を求め、クラッチハウジングという欠陥部品とそれによる死亡事故が発覚した。
制動不能になった大型車が暴走して壁に激突、運転手が死亡したこの事故で、運転手は安全運転義務違反の疑いで書類送検され、遺族が約640万円を賠償する示談が成立。調査に伴う内部告発で、運転手は“被疑者”から被害者となり、遺族の救済にもつながる。放置された欠陥が原因なのに単純な交通事故と処理された事例が他社を含め全国にどれだけあるのか全容が不明で、関係者はふそうの内部告発を「パンドラの箱を開けた」と評した。
三菱の調査は国交省の指示ではなく、「うみを出し切らないと信頼回復は不可能」と自主判断で始まった。■副社長 『情報は出した』
一方トヨタは、問題のハンドル系統部品の欠陥による不具合を販売店から吸い上げる市場技術速報(5年間保存)中心の初歩的な調査にとどまる。「記録がない」と、現時点では過去にさかのぼる考えはないという。
この欠陥でハンドル操作不能になったトヨタ車は2年前、車線を越えて対向車に衝突、対向車の家族5人が重軽傷を負った。三菱自の欠陥隠し事件を捜査したノウハウがある熊本県警は、運転ミスではなく欠陥が原因の事故と突き止め、トヨタ車の運転手を加害者扱いしなかった。
トヨタはこの日の会見で「事件後の社内調査で過去のリコール検討漏れや埋没した不具合情報はないと判断した」と説明したが、三菱両社に比べると調査は限定的だ。同社のリコール件数は最近増えており、以前はリコールに慎重だったのではとの疑念も生じる。
社内調査報告を中心に三菱自は当時、記者会見を約20回開いた。ふそうは平均約3時間、最長6時間の会見を50回近く開催。当時のドイツ人社長はうち15回の会見に駆けつけ、記者たちの疑問に向き合い続けた。
今回の事件を受けたトヨタの会見は2回で「知っている情報は出した」とし、今後の会見予定もないという。2回とも副社長の説明で、企業トップの対応も異なって映る。
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