対日関係が「良い」国でも

読売新聞4日付で、読売新聞社、韓国日報社、ギャロップ・グループ共同によるアジア7カ国(インド、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、韓国、日本)の世論調査の結果を報じている。

記事では、韓国を除く5カ国で「現在の日本との関係」を「良い」とする回答が9割前後だったことなどから、「東南アジアやインドで、日本の好感度が極めてたかったことは、中国や韓国との対立が続く中で、胸をなで下ろす結果だった」としている。しかし、それはちょっと単純ではないだろうか。

世論調査の結果は、報じられた限り、以下の通り。

  • 現在の日本との関係を「良い」とした割合――インドネシア、タイ96%、ベトナム92%、マレーシア91%、インド89%。(「非常によい」「どちらかといえば良い」の合計)
  • 「日本を信頼できる」(「大いに」と「多少は」の合計)――最高がタイ92%。最低がベトナム75%。
  • 「日本は世界によい影響を与えている」――インドネシア91%、東南アジア、インド8割。
  • 人道復興支援のための自衛隊の海外派遣――賛成インドネシア83%
  • 日本の首相の靖国神社参拝は「構わない」――タイ59%、マレーシア52%。インドネシアでは「そうは思わない」41%で「構わない」37%を上回る。
  • 靖国神社にA級戦犯がまつられていることについて「納得できる」――タイ、マレーシアでは50%。それに対し、インドネシア、ベトナムでは「納得できない」の方が多い。インドネシアでは57%。
  • 「第2次世界大戦中に、日本軍が、自国や他のアジア諸国で行った行為は、今でも自国と日本の関係の発展を妨げていると思うか」では、「思う」は韓国で75%。「そうは思わない」――ベトナム73%、マレーシア66%、インドネシア62%、タイ49%。

まず自衛隊の海外派兵について。質問項目で「人道復興支援のための」の限定をつければ、答えは初めから分かり切っているようなもの。「人道復興支援のために派遣された自衛隊が武器をもって出て行くことに賛成か」と聞けば、答えはまったく違ってくるだろう。

問題は、靖国神社とA級戦犯について。日本との関係「良い」が96%を占めるインドネシアで、首相の参拝をよくないとする意見が41%を占めたこと、また、A級戦犯が靖国神社に合祀されていることを「納得できない」とする回答が57%にのぼったことは、決して、これらの問題が現在の対日関係が「良い」からといって消え去るような性質の問題でないことを如実に示している。

特にインドネシアでは、占領中に日本軍が労働力として現地住民を強制動員し、多くの犠牲を出した。そのため、現在でも「ロームシャ(労務者)」という日本語が残っているほど。それに比べると、タイは、戦争中、同盟国だった(実際には、対米英開戦のときタイ国内を強行突破しようとして若干の戦闘があったようだが)し、ベトナムは、日本の占領で大きな犠牲を出したとはいえ、その後も抗仏、抗米戦争が続いた。で、インドは、基本的に日本と戦争になっていない。そういう国と、インドネシアを一緒くたにして、「東南アジアで好感度が高かった」と言ってしまうのは、大雑把すぎる。

なお、「第2次世界大戦中に、日本軍が…」という質問は、僕に言わせれば、ナンセンス。中国、韓国との関係でも、いま問われているのは、日本政府が過去に侵略や植民地支配で被害と苦痛を与えたことを認め、謝罪しておきながら、それを否定する動きが強まっていること。そのときに、そうした過去の日本軍の行為が「今でも自国と日本の関係の発展を妨げている」かどうかを問うのは、的はずれもいいとろこではないだろうか。

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