『週刊ダイヤモンド』に続いて、東洋経済新報社の『週刊東洋経済』9月16日号が「日本版ワーキングプア 働いても貧しい人たち」の特集を組んでいます。
目次から拾ってみると
- シャープ液晶工場 復活の象徴「亀山」の“逆説”
- 若き「請負」労働者たちの“喪失” 正社員でも派遣でもなく…
- 日系2世「女性ブローカー」の告白 「ブラジル人の真実」
- 学校に行かない子どもたち 10代前半のブラジル人
- 深夜製造の「コンビニ弁当」は誰がつくるのか?
- 外国人研修生という名の“奴隷”
- ワーキングプアの改正は可能だ!
一番ビックリするのは、シャープ液晶工場「亀山」で働く人の年収。シャープの正社員(亀山工場内2200人 ((これは研究開発部門の拡充などで増えたため。2004年1月の稼働開始時点では正社員はわずか550人だった。)))は736万円。これに対し、日本人の非正社員(同1800人)は312万円で、ブラジル人請負労働者(同数十人)381万円。日本人非正社員の312万円というのは、1日12時間拘束で月勤務21日で計算。ブラジル人請負労働者の年収の方が多いのは、こちらは月25日で計算しているから。
1日12時間働いて、年収300万円というのは、あまりに悲惨としか言いようがありません。亀山工場の誘致のためには、地元は135億円 ((亀山市が45億円、三重県が90億円))もの補助金を交付しています。にもかかわらず、三重県内出身者で新しく正社員に採用されたのは約130人。新たな雇用の大半は請負労働者なのです。
また、「若き『請負』労働者たちの“喪失”」には、「請負」の驚くべき実態が紹介されています。
たとえば、今年5月、人材派遣会社の契約が「人材派遣」から「業務請負」に切り替えられ、労働者は、同じ仕事をしているのに時給は150円のマイナス。ある労働者が、この賃金ダウンに応じなかったところ、いったん松下プラズマディスプレイの期間工として正式採用しながら、5カ月で雇い止め ((契約期間の更新をせず、事実上、解雇すること。))。なぜ、この労働者が業務請負への転籍に応じなかったかというと、請負時代に、父親が急死し忌引きをとったら、時給が1350円から1250円に下げられていたからだという。請負労働者は忌引きをとることもできないとは!!
このほか、偽装請負のもとでの請負労働者の事故が続いていることも取り上げられています。2004年9月、日立製作所日立事業所の爆発事故で、請負労働者2人が全身やけどで死亡、1人が全治10カ月の重傷。同年6月には、静岡県藤枝市の冷凍倉庫で、フォークリフトで運搬中の荷物が荷崩れし下敷きになって死亡。派遣の労働者はヘルメットもなく、フォークリフトの資格もなかったとそうです。先日、厚生労働省が偽装請負の監督・指導強化の通達を出しましたが、そこで偽装請負に関連した労災事故の問題が中心的に取り上げられていたのは、こういう事故が続いていたからなんですね。
最後、「ワーキングプアの解消は可能だ!」は、「重要なのは『使う側』の決断だ」としていますが、その中で、次のように指摘していることに注目したいと思います。いま、この底辺労働者への「しわ寄せ」路線をやめさせないと、本当に日本経済はボロボロになることは間違いありません。
製造業の底辺をささえる日本人や外国人の請負労働者に、競争のしわ寄せを一方的に押しつける――。それで成り立つ現在のニッポン製造業の繁栄は将来も続く保障はない…。現在のように行き過ぎた労働者の「使い捨て」は社会の不安定性を増大させ、少子化を一段と加速させる。これで本当に、日本の持続的な経済成長が可能となるかは、甚だ疑問だ。