魔が差してしまいました

加賀乙彦『悪魔のささやき』(集英社新書)

8月の集英社新書で、作家の加賀乙彦さんがこんな本を出していたので、思わず買ってしまいました。(^_^;)

タイトルの「悪魔のささやき」とは、精神科医でもある加賀乙彦氏が、若かりし頃、東京拘置所で面接した死刑囚たちが「あのときは、悪魔がささやいたんです」「どうしてあんなことをしたのか、自分でも分からない。自分でない者の意志によって動かされたような気がする」と言っていたということにちなんだものです。自殺を試みて助かった人たちも、「死ぬ気はなかったのに、気が付いたら…」というそうで、やっぱりその瞬間、「魔」がさしたとしかいいようがないものがあるというのです。

そういう話から始まって、1945年8月15日を境に、大人たちが「鬼畜米英」からアメリカ流「民主主義」に180度変身したことから、「時代の風」に巻き込まれてしまう。そんな「日本人の精神構造」も取り上げられています。

う〜む、ちょっと強引かなと思ったりもするのですが、「豊かさ」が「現代の悪魔」を太らせ続けるとか、「悪魔」につけ込まれない「本物の知」を身につけようという指摘は、陸軍幼年学校に通う軍国少年だった著者の警告の言葉だと言えます。

そういう本論とちょっと関係ないのですが、加賀さんがこんなことを書かれているのを見つけました。

 マルクスが途中まで書き、彼の死後、エンゲルスが書き継いだ『資本論』。あの本を知らない人はいないと思いますが、読んでいる人は意外と少ないのではないでしょうか。実は私も数年前に初めて読んだのですが、非常におもしろくて、読みそびれていたことを後悔しました。(154ページ)

戦後、東大医学部に進学し、セツルメント活動に参加した加賀さんが、数年前まで『資本論』を読んでいなかったとは! (^_^;)

【書誌情報】書名:悪魔のささやき(集英社新書 0354C)/著者:加賀乙彦/出版社:集英社/発行:2006年8月/定価:680円+税/ISBN4-08-720354-9

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