首脳会談は出来たけれど

安倍首相が中国を訪問。「戦略的互恵」の関係や、胡錦濤国家主席の訪日などで合意。

しかし、中国側からは「政治的障害を取り除いてほしい」と明言され、日本側も「適切に対処したい」と回答した以上、次、首相の靖国参拝が明らかになれば、責任を問われるのは日本側です。この約束を守って、靖国参拝はきっぱりやめてほしいと思います。

日中首脳会談 胡国家主席来日などで合意(日テレNEWS24)
中国政府 靖国参拝などで安倍首相を高評価(日テレNEWS24)

日中首脳会談 胡国家主席来日などで合意
[日テレNEWS24 10/9 2:57]

 中国を訪問している安倍首相は8日、胡錦濤国家主席と会談し、今後、両国が未来に向かって関係を強化していくことで一致した。両首脳は、来月にも首脳会談を行うほか、胡国家主席が来日することでも合意した。
 会談で、両首脳は今後、北朝鮮問題や環境問題など互いが共通の利益を持つ「互恵関係」を築いていくことで一致した。北朝鮮による「核実験宣言」については、「容認できない」とする安倍首相に対し、胡国家主席も「実験をやめるよう働きかけていく」と応じた。
 安倍首相は会談後、記者団に対し、北朝鮮が核実験を強行した場合、更なる制裁措置に踏み切る考えを強く示唆している。
 一方で、焦点の靖国問題について胡国家主席は「政治的障害を取り除いてほしい」と、参拝の取りやめを求めた。これに対し、安倍首相は「適切に対処したい」と述べながらも、今後、参拝するかどうか、明らかにしなかった。会談を実現させるため、双方の顔が立つよう、あいまいさを残した形だ。
 両首脳は、来月の国際会議の際にも首脳会談を行うほか、胡国家主席が来日することでも合意した。今回残った対立の火種は、次回以降の会談に持ち越しとなった形だ。

中国政府 靖国参拝などで安倍首相を高評価
[日テレNEWS24 10/9 2:43]

 中国を訪問している安倍首相は8日、温家宝首相や胡錦濤国家主席らと会談した。中国政府は一連の首脳会談で、靖国神社参拝や歴史認識について、安倍首相の姿勢を高く評価している。
 中国外務省・劉建超報道局長は「(温家宝首相は)日中関係の改善・発展の希望の窓は開かれたと述べました」と述べ、さらに「安倍首相が『アジア諸国の人々に苦痛を与えたことを反省する』と述べた」と、満足そうな表情で語った。
 靖国神社に参拝しないと言質は取れなかったものの、中国側は、胡国家主席、温首相が共に参拝しないよう発言したことも含めて、安倍首相はしばらく靖国神社を参拝しないと判断しているもよう。
 北京では5年ぶりとなった今回の日本の首相訪問では、“外交巧者”中国による演出も見えた。中国側は年に1回の重要会議開催中、胡国家主席ら序列1?3位が相次いで会談するなど、破格の対応をすることで若い安倍首相を恐縮させ、飲み込もうという狙いもうかがえた。
 日中の首脳は今後も会談を重ねていくことで合意したが、中国としてはそうした機会を使って、参拝を完全に断念するよう、さらなる外交攻勢をかけてくるものとみられる。

実は、訪中前の「朝日新聞」(10/7付)にこんな記事が載っていました。

日中首脳会談、実現の裏で 「靖国」探った妥協点(朝日新聞)

日中首脳会談、実現の裏で 「靖国」探った妥協点
[asahi.com 2006年10月07日06時25分]

 「中国側は、安倍首相が在任中に靖国神社に参拝することはない、と確信するに至った」
 6日午前。東京・永田町で開かれた会合で、在京中国大使館の孔鉉佑(コン・シュワンヨウ)公使が、こう宣言した。
 一方、安倍首相は6日夜、官邸で記者団に「特定の条件をつけて首脳会談を行うことはしない」と語った。
 トゲだった「靖国」でズレを抱えながらも、こぎ着けた首脳会談の再開。日中関係筋は言う。
 「ボタンの掛け違いの始まりになる可能性はある。だが、相手を信じるしかない」
 道のりは長かった。
 9月26日まで東京で4日にわたり断続的に開かれた「総合政策対話」。外務省の谷内正太郎事務次官と中国の戴秉国(タイ・ピンクオ)筆頭外務次官はぎりぎりのやりとりを続けていた。
 谷内氏「安倍新首相が靖国神社に行かないとは約束できない。ただ、参拝したかしないかは明言しない。中国への配慮と受け止めて欲しい」。
 戴氏「日本の指導者が政治的障害を除くことが必要だ。中国では、首相の参拝で多くの人々が傷ついている」。
 同じころ、こんな動きがあった。
 関係者によると、公明党支持母体である創価学会の池田大作名誉会長が安倍氏と極秘に会った。日中関係も話題にのぼったとされる。その直後の9月29日、池田氏は中国の王毅(ワン・イー)大使に会った。
 創価学会の機関紙「聖教新聞」によると、池田氏は王氏に対して「日中友好の誓いは断じて果たしていく」と伝えた。
 交渉が急展開したのはその前日の28日だった。
    ◇
 9月28日。夜9時近くに、東京・元麻布の中国大使館へ1台の黒塗りの車が入った。乗っていたのは、外務省の谷内事務次官と佐々江賢一郎アジア大洋州局長だった。
 迎えたのは、直前に都内のホテルで開かれた中国の国慶節(建国記念日)パーティーで顔を合わせたばかりの王大使。そして前日に帰国したのもつかの間、極秘に再来日した戴次官だった。
 戴氏は指導部との調整を経ていた。日本側が提案した10月の安倍首相訪中を基本的には受け入れる意向を示しつつ、なお首相の靖国参拝への姿勢の確認にこだわった。
 2日後の30日、中国の北京、上海、天津で急きょ対日関係の専門家が集められ、首脳会談を開くべきか、意見聴取が行われた。訪中受諾の返答が日本側に伝えられたのは、その直後だった。
 一方、中国大使館で谷内氏と戴氏が協議に入った後の28日夜10時半。首相官邸では安倍首相が韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と電話で話し、早期に首脳会談を開こうと呼びかけた。この後、間をおかず韓国政府から「中秋の連休明けの10月9日ならありがたい」と伝えられた。
 韓国は以前から「日本で新政権が発足したら、すぐに首脳会談を開いて関係を改善したい」と日本側に繰り返し伝えていた。安倍氏は、韓国の積極的な姿勢を中国を牽制(けんせい)する材料にも使った。
 「日韓だけで会談をやってみたらどうか」
 安倍氏は官房長官だった昨年末、当時の竹中総務相に伝えた。中国・アモイで今年1月に開かれるはずだった日中韓3国情報通信相会合が中国側の「準備の都合」で3月に延期された。竹中氏は1月に韓国の情報通信相とだけ会談。「中国外し」を印象づけた。
 「韓国とは価値観を共有する友好国だ。共産党による一党独裁の中国とは違う」。当時、安倍氏は周辺に語った。7月20日の講演でも「自由と民主主義、基本的人権は、まさに中国が直面している課題だ」と、中国をやり玉にあげていた。
    ◇
 その講演から約10日後、「転機」が訪れた。
 中国への反発を隠さない安倍氏が、王大使と会談した。王氏は、中国が対日関係を重視していると繰り返し訴えた。
 会談を仲立ちしたのは、自民党森派で兄貴分にあたる中川秀直幹事長(当時は政調会長)だった。中川氏は「私は仲人だから」と会談の最後に顔を出した。日中関係筋は「この会談で互いにつきあっていけるという判断がついた」とみる。
 安倍氏は8月3日、東京で開かれた「東京・北京フォーラム」で「政治と経済の二つの車輪が力強く稼働し、日中関係をさらに高度な次元に高める関係を構築していかなければならない」と呼びかけた。同席した王氏は笑顔を浮かべ、安倍氏と握手した。
 翌日未明、「安倍氏が4月に靖国神社を参拝していたことがわかった」との報道が流れた。だが、安倍氏は「行くか行かないか、行ったか行かなかったかは言わない」と語るだけだった。
 靖国参拝をやめれば支持層の反発を買い、参拝すれば中韓との関係改善は遠のく。安倍氏の周辺はこの矛盾を解決するため「あいまい戦術」をとるよう進言していた。
 中国側は、安倍氏が靖国参拝しないと確約しなければ首脳会談には応じられないとの立場は崩していなかった。だが、その前提条件にこだわりすぎれば、改善のタイミングを逃しかねない。安倍首相の訪韓が固まったことも横目でにらみ、会談に応じる決断をした。
 首相が北京に入る8日は、中国共産党の年間の最重要行事である中央委員会全体会議の初日。しかも胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席、呉邦国(ウー・パンクオ)全国人民代表大会常務委員長、温家宝(ウェン・チアパオ)首相というトップ3が軒並み会談する破格の厚遇ぶりだ。
 党関係者は言う。
 「中国側は最高の形で受け入れる。この努力にもし安倍首相が応えず、小泉氏のように靖国に参拝するなら、両国関係を壊したのは日本の方だと言うことができる」
 首相は訪中で、胡氏や温氏に来年以降の訪日を招請する予定だ。実現すれば、安倍氏は事実上来年以降も靖国参拝を控えることになる――別の日中関係筋はこうみる。

可能性としては、来年、胡錦濤国家主席や温家宝首相の訪日(たぶん参院選の直前あたりを狙ってくるのではないだろうか)までは、安倍首相は靖国神社参拝を控える、ということは十分考えられます。しかし、じゃあこのまま任期中は参拝せず、ということになるかといえば、それも考えにくく、結局、来年どこかで参拝し、再び問題がこじれることになる危険性が大きいのではないかと思うのです。今回、新首相就任ということで、いったん日本を信頼する形で中韓が受け入れただけに、そうなったときのこじれ方は、さらに深刻なものになるのではないかと心配します。

首脳会談は出来たけれど」への1件のフィードバック

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