おまつり本番でヘロヘロモードのなか、電車の行き帰りでルル・ワン『睡蓮の教室』(新潮社)を読んでいます。
作者ルル・ワンは、1960年北京生まれ、現在はオランダ国籍の作家。原作は1990年代にオランダ語で出版され、その英訳版をもとに翻訳されたものです。
舞台は1972年、「文化大革命」真っ最中の中国。医師の父と大学教授の母という両親をもつ蓮は、母親が送られている「労改」(労働改造農場)で母とともに生活することになります。そこは、知識人階級の出身者が送り込まれた場所で、そので蓮は、中国きっての学者たちから、英語や数学、歴史を学ぶことになります。
そんな「労改」の生活とともに、蓮と、もっとも貧しい階層である農民工(農村戸籍で都市に流出してきた農民)の同級生・張金との友情も描かれています。
まだ3分の1ほど読んだだけですが、声高に「文革」や中国を避難するのでなく、ごく普通の女の子たちの生活を通して「文革」が中国の人々に与えた“痛み”が丹念に描かれています。2人の少女の心のやりとりが、「文革」の時代の荒れのなかで、本当に優しく、瑞々しくふくらんでゆく様子が愛おしくて仕方ありません。疲れた体でも、思わず引き込まれてしまいます。
【書誌情報】書名:睡蓮の教室/著者:ルル・ワン/訳者:鴻巣友季子/出版社:新潮社(新潮クレスト・ブックス)/出版年月:2006年10月/定価:本体2800円/ISBN4-10-590057-9