財務省の法人企業統計調査から、労働分配率が2四半期連続で前年同期を下回ったことが明らかに。企業は収益を伸ばしていても、労働者には“パイの分け前”はすこしも回ってきません。
労働分配率:2四半期連続で前年同期下回る 速報値(毎日新聞)
労働分配率:2四半期連続で前年同期下回る 速報値
[毎日新聞 2006年12月4日 21時23分(最終更新時間12月4日 21時25分)]4日公表された財務省の06年7?9月期の法人企業統計調査を基に算出された同期の労働分配率(全産業、速報値)は63.6%と、2四半期連続で前年同期を下回った。企業は07年3月期に5年連続の増収増益の見通しで、企業の手元資金は増えている。だが、今後の景気拡大のカギを握る個人消費は伸び悩んでおり、労働分配率の向上で企業のもうけが家計に及ぶことを期待する声は強い。法人減税が検討されるなか、企業が資金を賃金にどう振り向けるかが課題となりそうだ。
労働分配率は景気に遅れて上がる傾向があり、90年代半ば以降、70%台に達したが、バブル崩壊後の長引く不況で企業が人員整理や給与削減で人件費を抑制した結果、この数年間は下落を続け、05年1?3月期には60%を割り込んだ。
企業業績は好調だが、企業は国際競争のなかで賃金引き上げの動きを見せておらず、「いざなぎ超え」の景気拡大にもかかわらず、サラリーマンの景況感は改善していない。また、厚生労働省が「自律的労働時間制度(日本版ホワイトカラー・イグゼンプション)」を検討している。これは管理職手前の労働者に条件付きで労働基準法の週40時間の就業時間の規定を除外するもの。これが導入されれば、残業代の減少が見込まれ、労働分配率の下落が加速する恐れも指摘されている。
日銀は10月末の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で賃金の上昇を通じた個人消費の活性化の道筋を強調している。ただ、日銀の福井俊彦総裁は家計への波及が予想より緩やかなものにとどまっているとの認識を示した。
政府は法人減税で企業の好業績を後押しする「上げ潮路線」をとっている。だが、法人減税で負担が減る企業の資金の使い道については具体論はまだ見えておらず、景気拡大に向け、賃金への波及を期待する声が今後、ますます広がりそうだ。【後藤逸郎】【ことば】労働分配率 企業が生産活動などを通じて得たもうけのうち、賃金や福利厚生費として労働者にどの程度を渡しているかを示す割合。賃金を抑制したい経営側と賃上げを求める労組側との賃金交渉での重要な指標になる。