日中歴史共同研究の初会合開かれる

安倍首相の訪中で合意された日中歴史共同研究の初会合が26日、北京で開かれました。日程は2日間。何がどう議論されるのか、注目したいと思います。

日中歴史共同研究:相互理解へ向けようやく一歩(毎日新聞)
「戦争責任」など焦点に 日中歴史共同研究が初会合 (東京新聞)
歴史認識での対立緩和へ、日中研究委が北京で初会合(読売新聞)
日中歴史共同研究が初会合 「戦争責任」など焦点に(産経新聞)
「日中歴史共同研究」の会合が北京で始まる(日テレNEWS24)

日中歴史共同研究:相互理解へ向けようやく一歩
[毎日新聞 2006年12月26日 23時40分 (最終更新時間 12月26日 23時54分)]

 日中両国の有識者による「歴史共同研究」が26日、相互理解へ向けようやく一歩を踏み出した。共同研究には歴史問題を学識経験者の議論に委ねて政治問題化を避ける狙いがあり、両国は日中平和友好条約締結30周年にあたる08年中の成果発表を目指す。ただ、両国関係が平和に推移した戦後60年の研究に重きを置きたい日本と、第二次大戦での「侵略の歴史」を中心に据える中国との間には思惑の差もうかがえ、未来志向の関係改善の糸口になるかは予断を許さない。【北京・飯田和郎、大貫智子】

◇「侵略」めぐり認識に差

 「日本には侵略戦争の責任を認めず、その歴史事実を否定する言論や行動が存在し続けた。このような無責任な言行は両国の共通利益に背き、戦争被害国の国民感情を絶えず傷つけてきた」
 中国側座長の歩平・社会科学院近代史研究所長は26日の初会合のあいさつでこう指摘した。さらに「共同研究はまず、これらの問題が生んだ障害を乗り越える必要がある」と述べ、第二次大戦における歴史問題をまず取り上げるべきだとの考えを強調した。
 今回の共同研究のテーマは(1)日中2000年余の交流に関する歴史(2)近代の不幸な歴史(3)戦後60年の日中関係の発展に関する歴史――の三つ。
 日本はなかでも「戦後60年の歴史」で中国から肯定的評価を得ることに主眼を置いている。日中関係史全体の中で「不幸な歴史」のみに焦点が当たるのを避けようとの思惑からだ。日本の政府開発援助(ODA)が果たした功績、天安門事件(1989年)で国際的に孤立した中国の国際社会復帰に向けた協力などを具体的に取り上げる戦略だ。
 これに対し、中国にとって歴史問題の中心はやはり「不幸な歴史」。その思惑の違いを冒頭から、歩座長の発言で突きつけられたわけで、共同研究の先行きの険しさを暗示している。
 日本は今回の共同研究で、対中侵略の事実を争う姿勢は見せていない。ただ、個々の事実認識には大きな隔たりがある。その最たるものが、南京大虐殺だ。中国は旧日本軍による中国人犠牲者の数を「30万?40万人」と主張。一方、日本国内には「数千人」から「20万人」まで諸説あり、なかには虐殺自体を「でっち上げ」とする声もある。
 従軍慰安婦に対する認識の違いも大きい。中国や韓国などのアジア諸国には、慰安所の設置などに対する旧日本軍の関与を指摘する声が強い。日本政府は93年の河野洋平官房長官談話で、旧日本軍の関与を認め「おわびと反省の気持ち」を表明しているが、国内には「強制ではなかった」という主張がなお根強い。
 安倍晋三首相自身、97年の衆院決算委員会分科会で河野談話への疑問を指摘していたが、首相就任後の10月、衆院代表質問で従来の政府見解を踏襲する考えを示した。中韓初訪問を前にした両国への配慮とみられたが、ナショナリズムの強い首相支持層からは反発の声も聞かれた。
 旧日本軍による中国側の犠牲者数についても、共同研究関係者は「中国側は戦争が終わったころ『300万人』と言っていたが、(反日デモがあった)昨年は『3500万人』と言っていた」と語る。日本側は米国やロシアなど第三国の資料も使い、客観的な研究を目指す方針だ。

◇政治問題と分離図る

 今回の歴史共同研究では、両国とも政府は過剰に関与せず、歴史家同士の真摯(しんし)な議論に委ねる考えだ。歴史問題を政治問題から切り離すことで、それ以外の懸案事項の協議に悪影響を与えない必要性があるからだ。
 中国共産党の王家瑞・対外連絡部長は2月、与党訪中団の団長として北京を訪れた中川秀直自民党政調会長(当時)に対し「歴史問題は非政治の枠組みで議論することで、中日関係の基礎を強くする」と述べた。歴史共同研究は、この時点で原則合意に達していたと言える。
 歴史問題が「トゲ」となって首脳会談が開けない状況は、日本側にも悪影響を及ぼし始めていた。昨春の反日デモは好調な経済関係に大きな懸念材料となり、7月の北朝鮮のミサイル発射は北東アジアの安全保障上の脅威について関係国と協議できない事態の深刻さを印象づけた。同盟国・米国も日中関係の悪化に懸念を示していた。
 一方中国も、胡錦涛国家主席は歴史問題を優先した江沢民前国家主席とは対照的に、両国関係の構築により安倍首相の靖国神社参拝を阻止する「外堀を埋める」戦術を取る。日本との歴史共同研究に着手し、中国国内の対日強硬勢力をけん制する狙いもあるようだ。

「戦争責任」など焦点に 日中歴史共同研究が初会合
[東京新聞 2006年12月26日 21時42分]

 【北京26日共同】日中両国が2008年中の研究成果発表を目指す歴史共同研究の初会合が26日、日中の有識者20人が参加して北京で始まった。研究対象は古代から戦中、戦後の日中関係にまで及ぶが、日本の「戦争責任」に対する評価などが焦点となりそうだ。中国では、極東国際軍事裁判(東京裁判)について、日本国内で正当性を疑問視する声が出ていることに反発が強く、議論の展開次第では紛糾も予想される。
 会合冒頭、中国側座長の歩平・社会科学院近代史研究所所長は「侵略戦争の責任を認めない言動が常に存在する」と日本を批判し、共同研究の役割について日本側の一部言動への「警戒」と「制止」を挙げた。
 これに対し、日本側座長の北岡伸一東大教授は、昨年の反日デモ当時の日中関係に言及した上で「一方が誇張し他方が激しく反論するという応酬で、非常に非生産的だった」と指摘。「学者は互いに冷静に議論しようではないか」と中国側に呼びかけた。

歴史認識での対立緩和へ、日中研究委が北京で初会合
[2006年12月26日21時16分 読売新聞]

 【北京=末続哲也】日中両国が設置した「日中歴史共同研究委員会」の初会合が26日、2日間の日程で、北京で始まった。
 同委は、日中両国の有識者による歴史共同研究を通じ、相互理解を深め、両国間の歴史認識をめぐる深刻な対立の緩和を目指す。2008年を目標に結果をまとめる。
 共同研究では、両国関係に影を落とす歴史論争を専門家に委ねることで、歴史問題が政治交流に及ぼす影響を薄める効果が期待されている。反面、共産党独裁体制下の中国では、「党の利益」に合致する歴史認識が優先されるため、双方の主張がすれ違いに終わる恐れも大きい。
 26日の初会合では、中国側座長の歩平・社会科学院近代史研究所長があいさつし、「侵略戦争の責任を否定する言行を十分に警戒する必要がある」とクギをさした。
 一方、日本側座長の北岡伸一・東大教授は「事実に即して対話をすれば、ふくらんでしまった(日中間の)イメージのギャップを、もう少し埋めることができる」と訴えた。
 歴史共同研究は、10月の日中首脳会談で合意。11月の日中外相会談で同委設置が決まった。同委は日中双方の有識者各10人が参加し、「古代・中近世史」と「近現代史」の2分科会を設置。26日午後と27日午前に全体会合を開き、同午後には分科会に移る予定。
 初会合では今後の検討課題や委員会の運営などについて意見交換する。

中歴史共同研究が初会合 「戦争責任」など焦点に
[Sankei WEB 2006/12/26 19:26]

 日中両国が2008年中の研究成果発表を目指す歴史共同研究の初会合が26日、日中の有識者20人が参加して北京で始まった。研究対象は古代から戦中、戦後の日中関係まで及ぶが、日本の「戦争責任」に対する評価などが焦点となりそうだ。中国では、極東国際軍事裁判(東京裁判)について、日本国内で正当性を疑問視する声が出ていることに反発が強く、議論の展開次第では紛糾も予想される。
 会合には日中双方からそれぞれ10人が出席。2日間の日程で、全体会合のほか「古代・中近世史」と「近現代史」の2分科会を設置し、議論を深める。座長は日本側が北岡伸一東大教授、中国側は社会科学院近代史研究所の歩平所長。
 日中間の歴史認識のずれが政治問題化する中、冷静な討議を通じ相互理解を促進することが共同研究の目的だが、自国の歴史観の正当性を強調する中国と、歴史認識の多様性を主張する日本側との間でどの程度の共通認識が得られるかは未知数だ。

「日中歴史共同研究」の会合が北京で始まる
[日テレNEWS24 12/26 21:50]

 日本と中国の歴史認識の差を埋めることを目指した「日中歴史共同研究」の第1回会合が、中国・北京の中国社会科学院で26日から2日間の日程で始まった。
 この共同研究では、日中双方から10人ずつの研究者が参加し、「古代・中近世史」と「近現代史」の2つの分科会が設置される。そして共同研究のテーマを、約2000年の交流、近代の不幸な歴史、戦後60年の関係発展とし、日中平和友好条約締結30周年に当たる08年中に研究成果を発表することを目指す。
 中国側の座長・歩平社会科学院近代史研究所長は、「両国の研究者は日中関係が積極的な方向に向かうよう集まった。共に努力し、誤解をなくし、理解を深め、歴史認識の距離を縮めていきます」と述べた。また、日本側の座長・北岡伸一東大教授は、「事実に即して考えれば、対話を穏やかにやれば、実際の差異はもう少し埋めることができる」と述べた。
 しかし、南京大虐殺など日中戦争に関する歴史については双方の認識が大きく違っており、共通認識を得るのは難しいとみられている。

他方で、こんな記事も。

自民有志が従軍慰安婦問題の検証を開始へ(朝日新聞)

自民有志が従軍慰安婦問題の検証を開始へ
[asahi.com 2006年12月22日19時31分]

 自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(中山成彬会長)は22日、従軍慰安婦問題を検証する小委員会(中山泰秀小委員長)を立ち上げ、来春までに検証結果をまとめて政府に提言する方針を決めた。今後、学識経験者らと合同でプロジェクトチームを作り、検証活動を行うことも検討する。
 また、中山泰秀小委員長は93年に当時の河野洋平官房長官が軍の関与と「強制性」を認めた「河野談話」について、私見としたうえで「本当に正しいか疑問を抱いている議員がたくさんいる。否定でなく今の官房長官に新しい談話を発表してもらう方が進歩的だ」と述べ、河野談話の検証も行いたいとする意向を明らかにした。

「河野談話」見直しへ活動・慰安婦問題で自民議連(日経新聞)

「河野談話」見直しへ活動・慰安婦問題で自民議連
[NIKKEI NET 2006/12/14 07:02]

 自民党有志議員による議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文科相)は13日、党本部で総会を開き、従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認め謝罪した「河野洋平官房長官談話」(1993年)の見直しに向けた活動を強めていくことを決めた。年明けにも小委員会を設置、談話を出した経緯や事実関係の検証を進めた上で報告書を作成、安倍晋三首相に見直しを提言する。

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