共産党の「しんぶん赤旗」によると、在日米軍と在日米空軍(第5空軍)の司令部が置かれている米軍横田基地に、ハワイに本拠地を置き、朝鮮半島を除くアジア太平洋とインド洋全域を担当地域とする第13空軍司令部(「ケニー司令部」)の新司令部(「ケニー司令部ジャパン」、第13空軍第1分遣隊)が設置されたそうです。
米空軍/横田に新戦闘司令部/日米連携 アジア太平洋全域に(しんぶん赤旗)
横田の米軍「新戦闘司令部」/日本国民に説明なく進む再編/「地球規模のテロ戦争」の一環(しんぶん赤旗)
横田に司令部を置く第5空軍と第13空軍(元々はグアムに司令部を置いていた)との統合は、在日米軍再編の一環として、一度は計画にあがったのですが、日本側の反対で見送られた経過があります。で、今回どうなったかというと、「ケニー司令部」が第5空軍傘下の実戦部隊の作戦統制権を掌握。さらに、第5空軍司令部からの転出によって「ケニー司令部ジャパン」を構成、というのだから、、第5空軍はそのまま残っているといっても、事実上、第13空軍に統合されたかっこうになります。
問題は、この「ケニー司令部ジャパン」のもとで、米軍と自衛隊の一体化がすすめられること。とても日本防衛のための共同訓練だなどとは言っていられません。
米空軍 横田に新戦闘司令部 日米連携 アジア太平洋全域に
[2007年1月28日 しんぶん赤旗]在日米軍司令部と在日米空軍(第5空軍)司令部が置かれる米空軍横田基地(東京都福生市など5市1町)に、「ケニー司令部ジャパン」と呼ばれる新司令部(正式名称・第13空軍第1分遣隊、50人)が置かれたことが分かりました。同司令部はブッシュ米政権の先制攻撃戦略に沿って新設された米空軍の戦闘司令部で、今月五日に正式に発足しました。
「ケニー司令部」(第13空軍司令部)は、「地球規模のテロとの戦いへの対応」(米空軍)を目的とした「戦闘司令部」の1つで、2005年6月にハワイに創設されました。軍事作戦の計画・調整・実行を専門とし、基本的に平時の部隊管理などは行いません。
責任区域は朝鮮半島を除くアジア太平洋とインド洋全域です。横田基地に新設されたのは同司令部の分遣隊です。
在日米軍司令部は本紙の質問に、「ケニー司令部ジャパンは日本国内と日本周辺での航空作戦の計画、調整、実行に責任を持ち、航空自衛隊との調整を行うためにハワイの第613航空宇宙作戦センター(ケニー司令部の中枢機能)および第5空軍とともに活動する」と回答。空自との連携強化を強調しています。
ケニー司令部のアッターバック司令官は5日の発足式典の際、「ミサイル防衛」(MD)などアジア太平洋全域を視野に入れた日米の連携の必要性を強調しました。自衛隊のMD作戦などを指揮する空自の航空総隊司令部(東京都府中市、600人)の横田基地移転(2010年度)を念頭に、自衛隊との一体化を進める狙いです。
横田の米軍「新戦闘司令部」 日本国民に説明なく進む再編
「地球規模のテロ戦争」の一環
[2007年1月28日 しんぶん赤旗]「横田基地の第5空軍をグアムの第13空軍と統合する」(2004年9月、米太平洋空軍・ヘスター司令官)――。日本政府の要請で表向きは取り下げられたこの構想は、日本国民に説明されることなく「ケニー司令部ジャパン」の創設という形で進行していました。
一体化さらに
ブッシュ米政権が02年に打ち出した先制攻撃戦略に沿って、米空軍は司令部再編を進めています。「地球規模のテロとの戦い」に対応するための司令部機能の強化が目的で、全世界で10個の「戦闘司令部」設置が計画されました。
第5空軍(在日米空軍)司令部と、当時グアムにあった第13空軍司令部の統合計画もその一環で、統合後にハワイかグアムへの移転が検討されました。米側はこの計画を、04年から本格化した在日米軍再編の協議で、米陸軍キャンプ座間(神奈川県)への陸軍戦闘司令部の創設と並ぶ最重要課題に掲げました。
第5空軍司令部の国外移転計画に驚いた日本政府は「航空自衛隊の相手役がいなくなる」などの理由から残留を懇願。結局、第5空軍司令部は残り、第13空軍司令部だけがハワイに移って、05年に戦闘司令部=「ケニー司令部」に衣替えしました。
しかし、同司令部は第5空軍傘下の実戦部隊の作戦統制権を握り、横田にあった気象隊や管制隊もハワイに移ります。今回、新設された同司令部の分遣隊「ケニー司令部ジャパン」の要員はすべて第5空軍司令部からの転出です。第5空軍司令部は事実上、ケニー司令部に吸収・統合されつつあります。
第5空軍司令部は移転せず、ケニー司令部ジャパンの新設で基地機能が強化され、自衛隊との融合・一体化をいっそう進めるという重大な事態です。
日米両政府がこの重大な変化を周辺自治体に通知したのは「ケニー司令部ジャパン」発足の前日(1月4日)でした。能力の橋渡し
ケニー司令部ジャパンは当面、「ミサイル防衛」(MD)を通じて、米軍と自衛隊の融合・一体化を計画しています。
ケニー司令部のアッターバック司令官は、「ミサイル防衛」の意義を強調し、「第5空軍と航空自衛隊に、ハワイの第613航空宇宙作戦センター(AOC)の能力の橋渡しをする」と述べています。自衛隊が「米太平洋空軍の神経系統の中心」(在日米軍司令部)であるAOCの情報や計画に基づく「ミサイル防衛」作戦に自動的に動員される危険があります。
また、昨年6月にグアムで実施された日米共同演習「コープノース」では、ケニー司令部の司令官が統制官となりました。同司令部が指揮するアジア太平洋規模での殴り込み作戦に自衛隊が組み込まれる危険を示しています。大本が破たん
これら一連の動きは米軍の地球規模の変革・再編の一環です。しかし、その大本にあるブッシュ米政権の先制攻撃戦略は、イラクでもアフガニスタンでも破たんしました。
ケニー司令部が担当するアジア太平洋地域では、全体として見れば平和の共同の流れが強まり、軍事介入の余地がなくなりつつあります。戦争ではなく外交で問題を解決するという世界の流れに逆行する変革・再編に、自衛隊がさらに組みこまれようとしています。(竹下岳)