安倍内閣の支持率が続落。同時に、宮崎県知事選挙の結果をめぐって、メディアもあれこれ論評中。
毎日新聞世論調査:内閣支持6ポイント減の40% 不支持増加36%(毎日新聞)
毎日新聞世論調査:内閣支持率また下落 加速する政党離れ、「そのまんま現象」裏付け(毎日新聞)
安倍内閣、支持率48%に続落・日経世論調査(NIKKEI NET)
何だ? そのまんま現象 官僚嫌いか談合批判か政党離れか 各党、民意手探り(朝日新聞)
日新聞世論調査:内閣支持6ポイント減の40% 不支持増加36%
[毎日新聞 2007年1月29日 東京朝刊]毎日新聞は27、28日、全国世論調査(電話)を実施した。安倍晋三内閣の支持率は昨年12月の前回調査から6ポイント減の40%で下落に歯止めがかからなかった。佐田玄一郎前行政改革担当相らの辞任、閣僚らの不透明な事務所費問題などが影響したとみられる。政党支持率は自民、民主両党がダウンする一方、「支持政党はない」と答えた無党派層が10ポイント増の49%で、政党不信を裏付けた。
◇政党支持、自民6ポイント減 民主4ポイント減
内閣を「支持しない」は6ポイント増の36%、「関心がない」は前回と同じ21%だった。支持率は昨年9月の内閣発足直後には67%だったが、11月53%、12月46%と続落。逆に不支持率は16%→22%→30%とアップした。
男性は支持36%、不支持44%で、初めて不支持が上回った。支持政党別では公明支持層の支持率が前回比13ポイント減の55%(不支持は9ポイント増の20%)と、公明支持層の一部の「安倍離れ」を示した。
不支持の理由は、前回まで「首相の政策に反対だから」がトップだったが、今回は「首相の指導力に期待できないから」が9ポイント増の42%と初めて最多になった。
政党支持率は自民25%(前回比6ポイント減)、民主13%(同4ポイント減)。公明4%、共産3%は前回と同じで、自民、民主両党の支持が無党派に流れたとみられる。
安倍首相の「美しい国づくり」と民主党の小沢一郎代表の「生活維新」のキャッチフレーズのうち、どちらに共感するか尋ねたところ、(1)「生活維新」46%(2)「どちらにも共感できない」29%(3)「美しい国づくり」22%??の順だった。
通常国会で最も議論を深めてほしい問題は「教育再生」が30%で最多。「格差是正」19%、「政治とカネ」15%が続いた。首相が重視する「憲法改正」は用意した七つの選択肢の中で最少の6%にとどまった。統一地方選や参院選の投票で「政治とカネ」の問題を重視するかどうかに関しては「重視する」が68%で、「重視しない」の24%を大きく上回った。【西田進一郎】◇「ゆとり教育」、見直し賛成71%
◇高校社会奉仕、必修化賛成69%毎日新聞の全国世論調査は、政府の教育再生会議の第1次報告が盛り込んだ(1)「ゆとり教育」の見直し(2)高校での社会奉仕の必修化??への賛否も尋ねた。ともに約7割が賛成し、この2点では教育再生会議の議論が支持された。子育て世代の20?40代を中心に、いじめ問題や学力低下で高まった教育現場への不満を吸収したとみられる。
授業時間10%増が柱のゆとり教育見直しは、賛成71%、反対19%。年代別では、20?40代で賛成が8割近くに達した。
支持政党別では、自民支持層の76%、民主支持層の77%、公明支持層の79%が賛成。共産、社民の支持層も半数近くが賛成した。与党内には「詰め込み教育が心の問題をないがしろにした」(森喜朗元首相)など異論も残っているが、授業増路線が幅広く歓迎された結果は見直し論の追い風になりそうだ。
安倍晋三首相が強調する規範意識の柱である社会奉仕には、賛成が69%で反対が21%だった。賛成は内閣支持層では76%だったが不支持層では64%。反対は支持層が14%にとどまったのに対し、不支持層では31%に上った。
一方、国会で議論を深めてほしい問題に「教育再生」を挙げる人が最多の30%にのぼったことからは、教育問題への関心の高さがうかがえ、官邸主導の教育改革を狙う首相にとって再生会議の議論への世論の支持が不可欠となりそうだ。【竹島一登】
毎日新聞世論調査:内閣支持率また下落 加速する政党離れ、「そのまんま現象」裏付け
[毎日新聞 2007年1月29日 東京朝刊]安倍晋三内閣の支持率が40%に落ち込んだ毎日新聞全国世論調査(27、28日)は、政党支持率の動向も合わせ、若年層を中心にした支持離れ、政党離れを浮かび上がらせた。相次ぐ「政治とカネ」の不祥事が、21日の宮崎県知事選の「そのまんま東現象」に表れた政治不信を加速させている。統一地方選、参院選に向けて首相、与野党とも無党派層、若年層対策という深刻な課題を抱えた。【佐藤千矢子、中山裕司】
◇無党派、不支持上回る
49%とほぼ半数に達した無党派層に限って見ると、内閣支持率は27%にとどまった。不支持は42%で、昨年9月の内閣発足後、初めて支持を上回り、下げ止まらない主因が無党派層の動向にあることを示した。
発足直後の無党派層の支持は53%で、不支持は17%だったが、4カ月で支持は半減、不支持は約2・5倍に増えた。無関心はほぼ横ばいで、支持していた人が不支持に回ったのが読み取れる。
無党派層の不支持理由は、「指導力に期待できない」が9月は21%、11月は30%、12月は37%とだんだん増加。今回は46%で、支持離れの一番の理由が、首相の指導力にあることは明白だ。
小泉純一郎前内閣で無党派層の支持が20%台に落ちたのは7回。4回は支持政党の色分けがはっきりして「支持なし」が減る国政選挙の前後。残る3回は、発足後3年半?4年の「政権への慣れ」が出る時期だったが、安倍内閣は発足4カ月で似た状況を迎えてしまった。
一方、支持率を年代別に見ると、20代で昨年12月の前回調査比9ポイント減の29%と3割を割り込んだ。逆に不支持は18ポイント増の37%に達し、各世代を通じて唯一、支持と不支持が逆転した。
政党支持の年代別は、無党派が全年代で前回より増え、特に20代は66%に達し、30代も57%。20代の自民支持は25ポイント下落の13%、民主支持も4ポイント減の10%。宮崎県知事選は若年層と無党派層が東国原英夫(そのまんま東)氏当選の原動力になったとみられているが、その拡大が数字に表れた。◇政治とカネ、広がる失望感
政府・与党内では支持率が下げ止まらないのはある程度予想されていたとみられ、調査結果への反応は政党離れに集中することになった。
「事務所費問題の影響だ。スキャンダル暴きが続けば、政党離れはさらに深刻になる。安倍政権としては、生活に密着した教育、雇用などで具体的成果を見てもらうしかない」
首相周辺はこう指摘する。自民党の谷津義男選対総局長も「政党不信が深刻ということだ」と危機感をあらわにし、党幹部は「首相がスキャンダルに毅然((きぜん))とした態度を取れないのが失望感となっている」と分析した。
政党離れに政界の見方は「政治とカネの問題に直撃された」で一致しているが、首相官邸、与野党とも有効な対策は見いだしかねている。
自民党選対幹部が「透明性を高める策を早く打たないと支持はどんどん離れていく」と語るのに対し、政府筋は「成し遂げたい政策を正攻法で地道に積み上げていくしかない」と指摘、政府・与党内には温度差もある。民主党からも「安倍政権への期待は裏切られた形だが、政治とカネでは民主も自民と同じという印象を与えてしまった。支持回復の特効薬はない」(参院幹部)との嘆きが漏れる。==============
◇世論調査の質問と回答◇
◆安倍内閣を支持しますか。
全体 前回 男性 女性
支持する 40 (46) 36 43
支持しない 36 (30) 44 29
関心がない 21 (21) 18 25◇<「支持する」と答えた方に>支持する理由は何ですか。
自民党の首相だから 15 (13) 17 13
首相の指導力に期待できるから 13 (17) 12 13
首相に若くて清新なイメージがある 52 (47) 49 55
首相の政策が期待できるから 16 (20) 18 14◇<「支持しない」と答えた方に>支持しない理由は何ですか。
自民党の首相だから 9 (13) 11 6
首相の指導力に期待できないから 42 (33) 40 46
首相は経験不足で頼りないから 15 (18) 17 13
首相の政策に反対だから 31 (34) 31 32◆どの政党を支持していますか。
自民党 25 (31) 24 27
民主党 13 (17) 18 8
公明党 4 ( 4) 3 5
共産党 3 ( 3) 3 3
社民党 2 ( 1) 2 2
国民新党 0 ( 0) 0 0
新党日本 0 ( 0) 0 0
その他の政党 1 ( 1) 1 1
支持政党はない 49 (39) 46 52◆首相は公約に「美しい国づくり」を掲げています。一方、民主党の小沢一郎代表は、格差是正を柱とする「生活維新」を訴えています。どちらに共感しますか。
美しい国づくり 22 22 23
生活維新 46 48 44
どちらにも共感できない 29 28 29◆通常国会で最も議論を深めてほしい問題は何ですか。
格差是正 19 22 16
北朝鮮問題 7 8 6
教育再生 30 23 36
憲法改正 6 7 5
公務員制度改革 10 13 6
消費税引き上げ 9 6 12
政治とカネ 15 18 12◆政府の教育再生会議は、小中学校で授業時間を10%増やすなど、ゆとり教育の見直しを提言しました。この提言に賛成ですか、反対ですか。
賛成 71 68 74
反対 19 25 14◆教育再生会議は、高校生を対象に、地域の清掃活動など社会奉仕の必修化を提言しました。この提言に賛成ですか、反対ですか。
賛成 69 68 71
反対 21 25 18◆今年は統一地方選と参院選が実施されます。これらの選挙で「政治とカネ」の問題を投票の際に重視しますか、重視しませんか。
重視する 68 66 69
重視しない 24 28 21(注)数字は%、小数点以下を四捨五入。0は0.5%未満。無回答は省略。カッコ内の数字は前回12月9、10日の調査結果。
◇調査の方法
27、28の2日間、コンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で全国の有権者1000人を目標に電話で調査し、1044人から回答を得た。
安倍内閣、支持率48%に続落・日経世論調査
[2007/01/28 22:02]日本経済新聞社の世論調査で、安倍内閣の支持率は48%に続落した。昨年12月の前回調査から3ポイント低下し、初めて5割を割り込んだ。不支持は1ポイント上昇して41%。小泉前内閣と比べた改革姿勢は「消極的だ」が11ポイント増えて41%に達し、「積極的だ」は前回と同じ7%にとどまった。改革断行に向けた指導力が見えないことへの不満が支持率低下の一因とみられる。
調査は通常国会が召集され、安倍晋三首相の施政方針演説が行われた直後の26―28日に実施。内閣支持率は歴代政権に比べればなお高いが、内閣発足直後の71%からの低下に歯止めがかからない。今回は昨年8月の小泉内閣最後の支持率50%も下回った。
男性は不支持率が前回より3ポイント増の50%となり、支持の43%を上回った。女性の支持率はほぼ横ばいの52%で、男性より高い。世代別では20―40歳代でそれぞれ不支持が支持を上回った。特に40歳代は支持は36%と低く、不支持が56%に達している。
何だ? そのまんま現象 官僚嫌いか談合批判か政党離れか 各党、民意手探り
[asahi.com 2007年01月28日22時37分]宮崎県知事選で東国原(ひがしこくばる)英夫(ひでお)(そのまんま東)氏に吹いた風をどう受け止めるか、各党が頭を悩ませている。7月の参院選まで続く政治決戦の年。「官僚」が嫌われたのか、「官製談合」に怒っているのか、そもそも「政党離れ」が起きているのか――。無党派層だけでなく、政党支持層をものみ込んだ「そのまんま東ショック」。2月4日投開票の愛知県知事選、北九州市長選を舞台に、有権者の意識を探り、つかもうとする模索が続く。
「保守系の旧態依然とした風土が連綿と続き、宮崎県の10年、20年の遅れにつながった」
知事選から1週間。28日に全国ネットのテレビ番組に出演した東国原氏は、自らに託された県民の思いをこう解説した。
自民党は、この「旧態依然」への反感が全国に波及することを恐れている。5年余りの小泉政権の時代に改革イメージをふりまいて引きつけた支持層が離れては、参院選の勝利もおぼつかない。
もともと「宮崎は自民分裂の特殊例」とみなしていた。ところが、想定外の大差がつき、25日には党幹部が選対会議を開いて愛知県知事選、北九州市長選に向けた対策を話し合った。
「いろいろ風が吹いている。参院選の帰趨(きすう)を占う選挙になる」(中川秀直幹事長)
「北九州は厳しい戦いだ。宮崎の余波で官僚批判の逆風もある」(舛添要一参院政審会長)
北九州市長選の自民、公明両党推薦候補は元官僚。同市出身の舛添氏はそこを懸念する。
28日、与党推薦候補の応援に、安倍首相の妻昭恵さんが駆けつけた。首相の地元は関門海峡をまたいだ下関。「お隣同士です。安倍晋三がこの地域の発展に力を合わせることをお約束したいと思います」。満員の会場から拍手がわいた。
地元でない地方選挙に首相夫人が応援演説するのは異例。無党派層を意識した陣営が要請していたもので、「首相よりインパクトがある」と効果に期待を寄せる。
続いて、候補者がトレーニングウエア姿で「アッキーが応援してくれるなら負けられない」と訴えた。宮崎の投開票日と重なった21日の出陣式から、スーツを脱いで「脱官僚をアピールしている」(陣営)。
一方、愛知県知事選で与党の推薦を受ける現職の陣営は、組織中心の戦いを崩さない。
政治家不信が広がっていて、東国原氏の勝因は政治に取り組む姿勢や政策を真剣に訴えたことにある、とみているのだ。自民党愛知県連の加藤南幹事長は「現職はまじめで実績もある。堅実な戦術で組織の引き締めを図りたい」と語る。
「宮崎でそのまんま東さんが圧勝した。日本を変えるというメッセージを愛知県から出そうじゃありませんか」。民主党の鳩山由紀夫幹事長は27日、愛知県知事選の応援で訪れた名古屋市でこう訴えた。
民主党は、和歌山、宮崎と「知事の不祥事」を受けた出直し選に候補者を擁立せず、「選択肢を示さなかった」と批判を浴びた。政治資金の問題で、角田義一氏が参院副議長辞任にも追い込まれた。愛知と北九州の戦いによっては、党の存在意義すら問われかねない。
宮崎県民が示した官製談合への怒りを吸収し、広げていけないか――。民主党は、そこに民意を見いだそうとする。愛知でも名古屋市発注の地下鉄工事をめぐり地検が捜査に乗り出している。菅直人代表代行は「自民党も民主党も官製談合に対応できる候補を出せず、しがらみのない東さんが当選した。既成政党への批判だ」と語る。反省から「官製談合撲滅知事の会(仮称)」を立ち上げ、29日に東国原氏にも入会を打診する予定だ。
ただ、政党がどう有権者と向き合うべきか、民主党もなお、姿勢は定まっていない。
「北九州市長を決めるのは安倍君でも、小沢君でもない、市民の皆さんです」。27日、民主党の渡部恒三最高顧問は党推薦候補の応援でことさら「市民」を強調した。渡部氏の地元、福島県で昨年11月にあった知事選でも「県民党」を掲げた推薦候補が当選している。21日の出陣式でも、応援に駆けつけた菅氏ら国会議員8人は一切あいさつをしなかった。
既成政党への批判をかわしながら、野党第1党としての存在感をいかに勝ち取るか。こちらの工夫も手探りだ。