15日に発表されたGDP速報値で、年率換算で実質4.8%の伸びをしめしたというニュース。
株が上がったり、円高になったり市場ははしゃいでいますが、新聞の論説はおおむね低調。なぜそうなるのか? そこんところを考える必要がありそうです。
【毎日新聞】
昨年10?12月期の成長率を押し上げた大きな要因は、個人消費の伸びだった。しかし、7?9月期の落ち込み(同1.1%減)を取り戻した程度にとどまり、企業部門から家計への景気回復の波及が遅れ、賃金の伸び悩みが、消費を抑えつけている状態は変わらない。個人消費が本格回復するには、賃金の上昇による可処分所得の増加と消費者心理の改善が必要と見られる。(15日付夕刊、2面)
【朝日新聞】
今回の大幅回復は、ゼロ成長に近づいた7?9月期の「反動」の範囲内との見方も多く、「景気の踊り場入り」への懸念は一掃されていない。
(中略)
10?12月期だけを見ると個人消費は回復したように見えるが、実額(季節調整済み)は年率換算で305兆円となり、落ち込む前の4?6月期(305兆円)の水準に戻っただけ。06年を通じても上期の個人消費は前期比0.5%増と底堅かったが、下期は同0.3%のマイナスで、本格的な回復とまではいえない。……企業の業績回復がサラリーマンの所得や家計の消費に回っていない実態に変化がないのも事実だ。(15日夕刊、3面)
【東京新聞】
消費を取り巻く環境をみると、厚労省が発表した12月の統計では1人当たりの現金給与総額は前年比マイナス0.6%と4カ月ぶりに減少。10?12月の平均も前年同期比マイナス0.3%になるなど、依然として「企業から家計への波及が弱い」(内閣府幹部)状況が続いている。
今回の個人消費は「反動から実力以上にかさ上げされている」(第一生命経済研究所)と指摘され、今後については「減速は不可避」との見方もある。(15日夕刊、2面)
【読売新聞】
……個人消費は実学ベースでは4?6月期の水準に戻っただけで、回復の力強さに欠けるとの見方も出ている。7?9月期に落ち込んだ反動増の色合いが濃く、2007年1?3月期以降も消費が高い伸びを持続するかどうか、先行きは不透明だ。
個人消費は、天候不順だった昨夏以降、伸び悩み傾向にあり、内閣府は所得の伸びの鈍化が原因と見ている。厚生労働相の毎月勤労統計調査によると、06年10?12月期の1人当たりの賃金は前年同期比で0.3%げんしょうし、企業部門を中心とする景気回復が筧に十分波及していない。
【日経新聞】
個人消費は7?9月期に前期比1.1%の大幅なマイナスだったが、10?12月期はそのマイナス分をそっくり取り戻した。品目をみると、薄型テレビ、たばこ、宿泊施設サービスなど7?9月期のマイナスに寄与していた主な品目がプラスに転じた。こうした個人消費の反動増だけで成長率の半分は説明できる。(中略)
先行きの最大の焦点は依然として個人消費の動向だ。1月の消費者心理はあまり改善していない。雇用は増えているものの、一人あたりの賃金は伸び悩んでいる。春闘での賃上げの動きなどが広がれば、所得環境の好転を背景に消費に弾みがつく余地はある。
読売と日経、東京などが翌日の社説でも、この問題を取り上げました。とくに、日経の社説が春闘での賃上げに言及しているのが注目されます。
【読売新聞】
成長率は高い数字が出たが、個人消費の実態は横ばいだ。日本経済が急に力強さを増したわけではない。(16日、社説)
【日経新聞】
内閣府が発表した昨年10―12月期の国内総生産(GDP)は実質で年率4.8%の高い成長となった。ほぼ3年ぶりの高い伸びだが、前期に落ち込んだ反動という色彩が強く、ならしてみれば緩やかな回復である。低迷していた個人消費は持ち直したが、まだ経済をけん引するほどではない。企業部門の好調さが消費の本格回復につながるかどうかは賃上げ交渉の行方にもかかっている。(中略)
米国や中国の経済の先行きにやや不安な面も出ているなかで、GDPの過半を占める個人消費が回復軌道に着実に乗るかどうかは経済成長の持続力を占うかぎだ。雇用は増えているが、派遣社員など正社員に比べ給料の低い非正規雇用が多いこともあり、1人あたりの賃金の伸びは鈍い。国際競争に直面する製造業などでは収益が回復しても、おいそれと人件費を増やせないという事情もある。とはいえ、余裕のある企業が正社員の比率を高めるとか、ある程度の賃上げに応じれば、経済成長を助け、長い目でみてその企業のためにもなるという面は否定できない。(16日付、社説)
【東京新聞】
個人消費が弱いのは、やはり好調な企業業績が賃金に反映されず、なかなか家計の懐が温かくならないからだ。家計に好収益の恩恵が行き渡らないのでは、巡り巡って、景気も腰折れしてしまう。「景気がいいのは企業だけ」では困る。(中略)折から、春闘シーズンである。家計が景気の良さを実感できるように、経営者には賃金引き上げに十分な配慮をするよう求めたい。(中略)
もう一つ、物価が気にかかる。国内のモノやサービスの物価水準を示すGDPデフレーターは前年同期比で0.5%のマイナスになった。改善傾向が続き、デフレ脱却が視野に入りつつあるとはいえ、水面下には違いない。
民間機関の試算だと、日銀が重視している生産1単位当たりの労働コストの減少幅は拡大したようだ。賃金が上がっていないからだ。これでは物価も上がらない。(16日、社説)
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