岩波書店から先月邦訳が出た『ワーキング・プア』。すぐに買い込んで読んでいるのですが、ちっちゃい活字で上下2段組、しかも全体で390ページもあって、なかなか読み終わりません。(^_^;) それでも200ページを超えたから、なんとか半分は読み終わったというところです。
著者はジャーナリストですので、この本は、ワーキングプアについて理論的な分析や検討を加えたものではなく、その実態を丹念に追いかけたルポという感じです。で、生活保護や医療保険などの仕組みがまったく違うので、最初はちょっと読みにくいところもありましたが、途中から気にならなくなってきました。というのも、1つには、アメリカの貧困が深刻だからですが、もう1つは、本書が、表面的な実態にとどまらず、貧困のなかで人々がどんな精神状態に追い込まれるかを追いかけているからです。「貧困」が、単なる経済的な貧しさだけでなく、精神的に“踏んだり蹴ったり”“お先真っ暗”な状態に追い込まれることだということが、リアルに浮かび上がってきます。
「努力した人が報われる社会」と言う人がいますが、努力しようという“気力”を奪うのが現代の「貧困」であり、働いているにもかかわらず貧困から抜け出せない人々が従事している「仕事」の実態なのだ、ということです。
【書誌情報】
著者:デイヴィッド・K・シプラー/訳者:森岡孝二、川人博、肥田美佐子/書名:ワーキング・プア アメリカの下層社会/出版社:岩波書店/発行:2007年1月/定価:本体2800円+税/ISBN978-4-00-025759-6
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