経済同友会が、経済政策委員会(委員長=高橋温・住友信託銀行取締役会長)の提言「成長を未来につなぐ―生産性向上による豊かな国民生活の実現」を発表。
成長を未来につなぐ-生産性向上による豊かな国民生活の実現-:経済同友会
生産性を高めるための基本戦略として、<1>「市場メカニズムの働きを活かす」、<2>「イノベーションを促進する」、<3>「グローバル化の成果を活かす」の3つを提起。
その<1>「市場メカニズムの働きを活かす」の施策の一番にあがっているのが「一人ひとりの就労能力を最大限に活かす」という項目。「就労能力を活かす」というと、なんだか良さそうに聞こえますが、要は、「適時、適材、適所に人材が配置される」ように労働市場の「効率化」「柔軟化」をはかるというもの。さらには、「働き方の選択に中立的な社会保険制度(企業年金、退職金等)・税制の設計」、「多様な働き方に対応した弾力的な雇用制度」というのもある。
「働き方の選択に中立的な社会保険制度」というのは、従来から経団連や同友会が要求していることだけれども、一言でいうと、現在のように雇用者の保険の半額を企業側が負担するようなシステムだと、保険料を全額負担する国民年金などと格差が生まれて、「働き方の選択に中立的でない」から、社会保険料の企業半額負担をやめる、というもの。確かに、企業負担をなくしてしまえば、厚生年金と国民年金との格差はなくなるが、早い話、サラリーマンの年金が半分になる、ということ。それで足りなければ各人の才覚で年金保険などに加入せよ、というわけで、財界にとってみれば、企業負担が軽くなるだけでなく、保険業界が大もうけできるという“一石二鳥”な話である。
また、「多様な働き方に対応した弾力的な雇用制度」というのは、これまですすめられてきた派遣、請負、あるいは短期雇用、パート、アルバイトetc.などをもっと自由にやれるようにしようということを意味する。
いずれにしても、「市場メカニズム」の働きを強化して、文字通り、“弱肉強食”、“優勝劣敗”の「労働市場」をつくろうということに他ならない。
このほかに、「業務プロセス改革を進めるためにITを活用する」という項目もある。この問題は、経済同友会が先日発表した「日本のイノベーション戦略」でも強調されていたし、日本経団連の「御手洗ビジョン」でもとりあげられていた。いわゆる管理部門の「効率化」が、いかに財界にとって切実な課題になっているかの証拠。
「政策」の最後には、「東アジアと連携し生産性の向上を図る」という項目もある。安倍政権の対中外交の動きと重ね合わせると、注目される。