従軍慰安婦について、安倍首相の「強制の証拠はない」とする発言をめぐる動き。アメリカでは、日本政府が米下院の元従軍慰安婦決議案の採択阻止の動きと合わせて、「河野談話見直しの準備」と報道されています。世耕補佐官があわてて「河野談話を継承」と弁解。
韓国でいくら批判がでても無視するのに、アメリカで批判されると大あわてで弁解する。いかに自民党の政治家たちが韓国を軽視しているかという証拠。この問題を、あれこれの言い逃れですませようとするあたり、ますます日本政府の不見識を照明する結果に。
従軍慰安婦「強制の証拠ない」=河野談話の見直し否定せず?安倍首相(時事通信)
米下院の元慰安婦決議案 日本、通過阻止で首相まで総力ロビー(東亜日報)
河野談話見直し準備と報道 首相発言で米紙(東京新聞)
「首相は河野談話を継承」 慰安婦問題で世耕補佐官(Sankei WEB)
「狭義の強制性」「抗議の強制性」というけれど、河野談話は、軍の関与と強制の問題について、次のように述べていた。
→慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話(2003年8月4日)
今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
つまり、河野談話は、以下のような事実認識にもとづいて、従軍慰安婦の存在と軍による強制を認め、お詫びと反省を約束するとともに、この事実を「歴史の教訓」として直視し、「歴史研究、歴史教育を通じて」、従軍慰安婦問題を「永く記憶にとどめ」、「同じ過ちを決して繰り返さない」決意を表明したのであった。
- 慰安所の設営そのものが軍の要請によるものであったこと。
- 慰安所の設置、あるいは慰安所の管理、慰安婦の移送に、軍が直接・間接に関与したこと。
- 慰安婦の募集は、甘言、強圧など「本人の意志に反して」おこなわれたこと。これらは、軍の要請を受けた業者がおこなったことが多かったが、官憲などが直接加担した場合もあったこと。
- 慰安所における生活が「強制的な状況の下」にあったこと。
「狭義の強制性」「広義の強制性」などというけれど、たとえば慰安所における生活が強制的なものであったことは、誰にも否定のできない事実である。慰安所の設置が軍の要請にもとづいていたこと、慰安所の日常の管理に軍が直接・間接に関与していたことなども、資料や証言から明らかである。こうした事実を曖昧にして、「強制」という言葉の定義が問題であるかのようにいうのは、まったくの問題のすり替えでしかない。安倍首相の発言が、アメリカで河野談話の見直しだと受け取られたのは当然なことである。
従軍慰安婦「強制の証拠ない」=河野談話の見直し否定せず?安倍首相
[時事通信 07/03/01-22:30]安倍晋三首相は1日夜、従軍慰安婦問題を謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話について「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と述べ、旧日本軍が従軍慰安婦を強制的に集めて管理した証拠はないとの認識を示した。また、談話見直しの必要性に関しては「定義が大きく変わったことを前提に考えなければならない」と語り、否定しなかった。首相官邸で記者団の質問に答えた。
ただ、この発言について首相周辺は「国会で答弁した通りのことを言っただけで、これまでの政府方針と何も変わっていない」と指摘、同談話の見直しを表明したものではないと強調。塩崎恭久官房長官も同日の記者会見で「談話を受け継いでいくのが政府の立場だ」と語った。
米下院の元慰安婦決議案 日本、通過阻止で首相まで総力ロビー
[東亜日報 MARCH 03, 2007 03:24]4月下旬に予定されている安倍晋三首相の訪米を控えて、米下院の日本軍慰安婦決議案の採択を阻止しようとする日本政府と自民党の動きがあわただしい。
日本は、首相官邸主導で、米国政府や関係議員に「採択阻止の協力」を要請している。安倍首相の訪米日程を当初の予定より多少繰り上げる方向で調整しているのも、これと無関係ではない。
安倍首相は先月19日から22日まで、世耕弘成広報補佐官を米国に派遣し、学者やジャーナリスト、政府関係者たちに決議案のいわゆる「問題点」を広報した。小池百合子安保補佐官も12日から16日まで、ワシントンで議会指導者らに会ったという。エニ・パリオマベガ下院アジア太平洋環境小委員会委員長も先月、東亜(トンア)日報とのインタビューで、「聴聞会の開催を前に日本大使が訪れ、憂慮を表明した」と伝えた。
これまで米下院では、慰安婦に関する決議案が7、8回も上程されたが、廃棄された。しかし、中間選挙で民主党「人権派」が小委員長と外交委員長に就任したことで、今回は過去いつよりも採択される可能性が高く、日本政府が阻止するために総力外交を繰り広げている。
このような流れに刺激を受け、自民党内の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は1日、日本軍の軍慰安婦介入を認めて謝罪した1993年の河野洋平談話の修正を推進する会合を開き、修正提案を整理して首相官邸に提出しようとしたが、ひとまず来週に延期した。
自民党は3月下旬、同会所属の議員たちを米国に派遣し、決議案を提出したホンダ議員や決議案を支持する下院議員たちに会って、説得する方針だ。
いっぽうホンダ議員は1日、声明を発表し、「日本軍慰安婦の蛮行は隠すことのできない歴史的事実だ」という点を重ねて強調した。
ホンダ議員は、「歴史的記録と最近の元慰安婦の米下院聴聞会での証言、河野元官房長官の個人的謝罪は、日本帝国主義の軍隊が第2次大戦当時、最大20万人の女性を性奴隷にしたことをはっきりと示している」と強調し、「日本が過去の過ちを公式に謝罪してこそ、自由民主国家の一員としての立場を増進できる」と指摘した。
河野談話見直し準備と報道 首相発言で米紙
[東京新聞 2007年03月03日 12時23分]【ワシントン2日共同】2日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、従軍慰安婦問題で安倍晋三首相が旧日本軍による強制を示す証拠はないと発言したと伝え、旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話の見直しを準備していることを「これまでで最も明確に」示したと報じた。
2日付のワシントン・ポスト紙も東京発のAP通信の記事を掲載。安倍首相の発言は従来の日本政府の見解と矛盾し、中国、韓国の反発を招くのは確実とした。
「首相は河野談話を継承」 慰安婦問題で世耕補佐官
[Sankei WEB 2007/03/04 15:30]世耕弘成首相補佐官(広報担当)は4日のテレビ朝日番組で、従軍慰安婦の動員をめぐる旧日本軍の強制性に関する1日の安倍晋三首相の発言について「首相就任直後の国会答弁通り。強制性の定義は広義、狭義といろいろあるが、(従軍慰安婦におわびと反省の気持ちを表明した1993年の)河野官房長官談話を引き継ぐことは変わっていない」と強調した。
韓国や米国で首相発言を河野談話見直しの動きと警戒する見方が出ているため、それに反論した。政府関係者によると、首相官邸は韓国政府や米国メディアなどに首相の真意を説明する必要があるか検討している。
首相は河野談話継承を明言した昨年10月の衆院予算委員会で「狭義の強制性」を「家に乗り込んで強引に連れて行った」、「広義の強制性」を「行きたくないが、結果としてそうなった」と説明した上で「狭義の強制性については事実を裏付けるものは出てきていない」と答弁した。