いつのまにやら日米豪3国同盟が…

外相・防衛相による定期協議(2プラス2)もやるし、自衛隊と豪軍との共同訓練も実施するという。
国民的には何の議論もないまま、日米豪の3国軍事同盟ができてしまった。

このまえ、チェイニーがやって来たとき、「米豪日3国同盟への道?」と書いたけれど、それがこんなに早く現実になるとは……。

日豪首脳が安保宣言に署名、経済連携でも一致(読売新聞)

日豪首脳が安保宣言に署名、経済連携でも一致
(2007年3月14日1時33分 読売新聞)

 安倍首相は13日夕、オーストラリアのハワード首相と首相官邸で会談し、両国の外相、防衛相による定期協議(日豪版2プラス2)の新設など、日豪間の安全保障協力の強化を盛り込んだ「安全保障協力に関する日豪共同宣言(日豪安保共同宣言)」に署名した。
 日本が米国以外と「2プラス2」を行うのは初めて。
 両首相は日豪の安保協力が日米豪3か国の連携強化にも資するとの認識で一致した。そのうえで、日豪安保関係閣僚の定期協議と日米豪の外務・防衛当局者による定期協議の新設のほか〈1〉テロ対策や災害救援活動での協力〈2〉自衛隊と豪州軍との共同訓練〈3〉安保協力促進のための行動計画の策定――などで合意した。
 安倍首相は北朝鮮の核、ミサイル、拉致問題での協力を求め、ハワード首相も日本の立場に理解と支持を改めて表明した。ハワード首相は、2008年の国連安全保障理事会の非常任理事国選挙での日本支持を正式に伝えた。
 一方、両首脳は日豪の経済連携協定(EPA)について、日本の国内農業への影響にも配慮しながら交渉を進めていくことで一致。地球温暖化対策でも、首脳間での指導力の発揮が必要だとの認識を確認した。

「安全保障協力に関する日豪共同宣言」(仮訳)の全文は、外務省のホームページから。

もともと日本とオーストラリアの間には、相互防衛条約も何も存在しない。したがって、ここで謳われる安全保障協力が、たとえば日本が侵略された場合にオーストラリア軍が協力するとか、あるいはオーストラリアが侵略されたときに自衛隊が協力する、という問題でないことは明らか。つまり、日本・オーストラリア以外の国で、自衛隊とオーストラリア軍が共同して何かをしよう、という協力にほかならない。それが、イラクやアフガニスタンのようなケースを想定していることは、簡単に見て取れるだろう。

日本政府と防衛省・自衛隊は、それは「人道支援」「国際貢献」だというだろうが、共同する相手のオーストラリア軍は、完全武装の軍(実力部隊)として行動するだろう。それといっしょになって活動する自衛隊だけが、「憲法9条を守ります。武力行使に及ばないようにします」といってみても、現実味はない。

つまり、僕の言いたいことはこういうこと。いますぐ、たとえば自衛隊が米軍と一体になって「国際貢献」「人道支援」をおこなうといっても、国民の反発は大きいことが予想される。そこで、間にオーストラリア軍を1つかませて、「戦争をやっている米軍とは一線を画している。あくまで、人道支援、国際貢献だ」といって、実際には、米豪両軍の軍事行動に自衛隊も直接参加していく。そんなことが企まれているのではないだろうか。

それにしても、かつてなら、こんな共同声明を出すとなれば、それこそ一大政治問題化したはず。ところが今回は、そうした議論は何もなく、いきなり共同声明が飛び出してきた。僕は、その背景には、防衛庁の省昇格があると思う。防衛庁のままなら、こうした問題は、外務省の専管事項だった。だから、いくら防衛庁や自衛隊が、日豪共同作戦をやりたいと言っても、外務省がそれをテーブルにのせようという気にならないと、現実の話にはならなかった。

ところが、防衛省が誕生すると、防衛省と外務省は、同格の省。したがって、防衛・安全保障政策について、防衛省がこうしたいと言い出すと、逆に、外務省はそれについて口が出せない。そういうことになっているのではないだろうか。

国民のあずかり知らぬところで(というか、国民には何も知らせないで、ということなのだが)、こういう多国間軍事同盟網づくりが始まるとしたら、それこそ、とんでもない大問題だと思うのだが…。

追記:
過去にさかのぼってみると、「読売」がこんな記事を出していたのを見つけました。さらに、チェイニー来日時に、「産経」が社説で日米豪の「戦略的連携」を提起していました。

日豪安保協力宣言、首脳会談で署名へ…PKO訓練も(読売新聞)
【主張】チェイニー氏来日 日米豪の戦略的な連携を(産経新聞 2/20)

日豪安保協力宣言、首脳会談で署名へ…PKO訓練も
[2007年3月10日3時2分 読売新聞]

 【アデレード(豪州南部)=新居益】オーストラリアのダウナー外相は9日、豪州南部アデレード郊外の地元事務所で本紙との単独会見に応じ、11日から日本を訪れるハワード首相と安倍首相が首脳会談で、「日豪安保協力に関する共同宣言」に署名することを明らかにした。
 共同宣言には災害救援や、国連平和維持活動(PKO)を想定した自衛隊と豪軍の共同訓練の実施などを盛り込む。日本が安保面でこうした協力関係を結ぶのは、日米安保条約に次ぐものとなる。
 日豪安保協力は、防衛義務中心の日米同盟や米豪同盟とは違い、地域の平和と安定に資する協力関係を重視したものだ。外相は「(共同宣言は)豪日両国が将来行う協力活動に意味を与える」と強調した上で、「両国とも米国の同盟国だ。(戦略上の)共通の視点を持っている」と両国協力の意義を語った。
 ダウナー外相によると、共同宣言はこのほか、北朝鮮による大量破壊兵器拡散の脅威に両国が共同して対処するほか、外務、防衛担当閣僚による定期協議を創設することが盛り込まれる。米国が進める大量破壊兵器拡散阻止構想(PSI)への協力なども想定されている模様だ。
 豪軍はこれまで、自衛隊が駐留していたイラク南部サマワで治安維持を担当。また、2004年12月のインドネシア・スマトラ沖地震の際には自衛隊と協力して救援活動を実施した実績はあるが、これまで共同訓練は行っていなかった。このため、自衛隊が豪本土で訓練を実施することも今後検討されるとみられる。

【主張】チェイニー氏来日 日米豪の戦略的な連携を
[Sankei WEB 2007/02/20 05:58]

 チェイニー米副大統領が、今日夕刻来日する。明日、安倍晋三首相、麻生太郎外相らと会談し、明後日朝、オーストラリアへ向かう。3年前のアジア訪問の際の訪問先は日本、中国、韓国だったが、今回は日本と豪州だけだ。そこに米政権の意図もうかがえそうである。
 その意図とは、アジア太平洋地域において自由、民主の価値観を共有し、経済先進国の日本、米国、豪州が、長期的視野のもと、戦略的な関係を深めておきたい、というものだろう。日本としても歓迎すべきことだ。
 会談では、日本側は、米国のイラク新政策の詳細を質(ただ)し、6カ国協議合意に基づく対北朝鮮政策の緊密な連携を確認してほしい。中国への対応など、より戦略的な課題についても、踏み込んだ議論をしてもらいたい。
 ブッシュ米大統領の右腕であるチェイニー氏訪日が持つ意味は重い。米政権の基本方針を確認し、改めて日米連携を強化する機会とすべきだ。
 日米豪3カ国は、9・11米中枢同時テロ、アフガン・イラク戦争を通じて安保上の連携を強めてきた。昨年3月には、シドニーで外相レベルによる初の「日米豪戦略対話」を実施し、共同宣言も出した。
 その問題意識の中心に、急速な軍備拡張を続ける中国への対応があることは疑いない。昨年の共同宣言では、地域の民主主義の発展をうたい、韓国、インドとの協力にも言及した。
 急発展する中国に対しては、経済的には連携、協力を深めつつも、安全保障の面では、常に冷静な分析の上に立った備えが必要だ。
 日米間では外務、防衛の2閣僚同士で行う日米安全保障協議委員会(2プラス2)の枠組みがある。チェイニー副大統領の日豪訪問を機に、2プラス2を日米豪3カ国に拡大することを検討してもよいのではないか。
 それに関連して、懸念もある。チェイニー氏と久間章生防衛相との会談が予定されていないことだ。安全保障が主要テーマだというのに防衛相との会談がないのはおかしい。
 久間氏の一連の対米批判が原因であるのは間違いなく、改めて反省を求めたい。だが、防衛相との会談なしでは対外的に誤ったメッセージを与えかねない。両政府は再考が必要だ。

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