北陸電力・志賀原発の臨界事故に続いて、中部電力・浜岡原発3号機、東北電力・女川原発1号機でも、同じように制御棒が脱落する事故が起こっていたことが明らかになりました。
浜岡、女川では臨界事故にはならなかったため、原子力安全・保安院は「隠蔽ではない」としていますが、問題は隠蔽の有無ではなく、原子炉の設計そのものにあるようです。同型の原子炉は全国で31基あるそうで、緊急に調査・点検が必要ではないでしょうか。
浜岡・女川でも制御棒脱落 沸騰水型、臨界には至らず(asahi.com)
事故の志賀原発、制御棒の二重安全システム機能せず(読売新聞)
浜岡・女川でも制御棒脱落 沸騰水型、臨界には至らず
[asahi.com 2007年03月19日11時47分]中部電力の浜岡原発3号機(静岡県、沸騰水型炉、出力110万キロワット)で、91年の定期検査中に制御棒3本が想定外に抜けていたことがわかった。抜けた制御棒の位置がそれぞれ離れており臨界にはならなかったが、同じ沸騰水型炉の北陸電力志賀原発1号機で99年6月に起きた臨界事故が明るみに出たのを受けて、中部電力が19日公表した。また、88年7月には東北電力女川(おながわ)原発1号機(宮城県、沸騰水型炉、出力52.4万キロワット)でも定期検査中に制御棒2本が脱落していたこともわかった。志賀、浜岡、女川のいずれも沸騰水型炉であり、相次ぐ制御棒の脱落に同型の原子炉の信頼性が問われる事態に発展しそうだ。
経済産業省原子力安全・保安院は「国への報告義務はなく、隠蔽(いんぺい)にもあたらない」としているが、両社とも外部には公表せず、トラブル情報が電力業界で共有されていなかった。
中部電力によると、定期検査中の91年5月31日、原子炉の状態を中央制御室に知らせるための信号の確認試験を終え、制御棒駆動装置に水が流れるように配管の弁を開ける作業をしていた。制御棒は全部で185本あり、最初の3本の制御棒の弁を開けたという。
ところが、その後、操作していないのに、本来動くはずのない制御棒(全長3.6メートル)がそれぞれ全部、3分の1、8分の1抜けたという。トラブルは1時間ほど続いた。ただ、抜けた制御棒3本のうち1本が離れた位置にあり、臨界状態にはならなかったという。
この作業中、原子炉本体と格納容器のふたは開いており、志賀原発の臨界事故と似た状況にあったという。
抜けた原因について、中部電力は「途中の別の弁に水漏れがあり、制御棒を引き抜く側に水圧がかかったのが原因ではないか」としている。
女川原発1号機では、88年7月9日、定期検査をほぼ終えて制御棒が水圧で動くように配管の弁を開ける作業をしていたところ、制御棒89本のうち2本がそれぞれ24分の1、8分の3抜けた。制御棒の位置が離れていたので臨界状態にはならなかった。
東北電力では、事故の原因について、制御棒に水圧がかからないようにしようと、水を逃がす弁を閉めたままで作業したために、制御棒が下がる方向に圧力がかかり、脱落したとみている。トラブル時、原子炉本体と格納容器のふたは閉まっていた。
「弁は開けるようにと作業手順書には書かれており、作業員のミスが原因だろう」と話している。
東北電力も事故の情報について外部には公表していなかった。
一方、保安院は19日、臨界事故隠しをしていた志賀原発の緊急調査に入った。
事故の志賀原発、制御棒の二重安全システム機能せず
[2007年3月19日3時1分 読売新聞]北陸電力志賀原子力発電所1号機(石川県志賀町)で1999年に臨界事故が起きた際に、原子炉の出力を調整する制御棒の落下を防ぐ装置が働いていなかったことがわかった。
1本ずつしか動かないはずの制御棒が3本ほぼ同時に抜けたことと併せ、制御棒の二重の安全システムが機能しなかった点に、原子力技術者らは衝撃を受けている。
直接の原因は、制御棒を動かす水圧調整弁の誤操作が重なったためと推定されているが、安全システムが働けば、起こり得ない事故だったという。
北陸電力によると、制御棒の駆動機構には、ツメが溝にはまる形状をした落下防止装置がついている。制御棒の引き抜きボタンを押すと、いったん制御棒が少し持ち上がってツメが外れる。ボタンを押している間、ツメは外れた状態に固定され、引き抜きが可能になる。
長さ約4.5メートルの制御棒は、炉内では約3.6メートルの範囲を上下し、溝に対応する形で25段刻みで動く。通常の操作では、1回あたり約15センチしか下がらないが、今回動いた3本は、完全に挿入した位置から、それぞれ60センチ、120センチ、150センチも落ちていた。ツメが外れたままになったとみられるが、その原因は今のところ不明だ。
1号機で制御棒を動かす際は、中央制御室で全89本の中から動かしたい制御棒を選択し、挿入または引き抜きのボタンを押す。一度に1本しか選べないため、1本ずつしか動かせない。
この原則は点検中も変わらない。唯一の例外は緊急停止時で、自動的に全制御棒が約2秒以内に炉心に挿入される。国の安全審査は今回のように2本以上の制御棒で不具合が同時発生することを想定していない。
ほかに同型の沸騰水型原子炉は31基あるが、沸騰水型に共通する設計上の不備があった可能性もある。