賃金の上昇が景気を左右する

法政大学の小峰隆夫氏が、NIKKEI Bizのコラムで、「賃金の上昇が今後の経済の行方を大きく左右する」「『景気上昇が続いているのに賃金が上がらない』という部分が、ワンセットとしての経済正常化にとっての『ミッシング・リンク(連鎖の輪の欠損)』となっている」と指摘されています。

小峰氏は、いわゆる官庁エコノミスト出身の方。こういう人がこういう指摘をする、のも面白いと思いました。

経済正常化に欠けているものは何か:小峰隆夫・法政大学大学院政策科学研究科教授(NIKKEI Biz-Plus)

小峰氏は、OECD諸国の経済指標の平均と日本のそれを比較しながら、次の諸点を指摘しています(これは、いたって常識的なものですが)

  1. 実質成長率が低迷していた。
  2. 名目成長率がほとんどゼロ近辺と極端に低かった。
  3. とくに2001?05年には需給ギャップが大幅なマイナス(供給超過)状態となっていた。
  4. 物価が長期にわたって下落した。
  5. 名目賃金が減った。
  6. 財政が悪化した。

そして、現状は「日本経済はこうした異常な経済から次第に脱却しつつある」としたうえで、「実質成長率、需給ギャップなどは、かなり正常化した」のにたいし、「物価や賃金、金利などは07年の見通しでも依然低水準にある」ことに注意を向けます。

そうして「大胆な展望」として、次のように述べています。

大胆に展望すれば、日本経済は「異常な経済」から、実質成長率2?3%、名目成長率5?6%、物価上昇率2%前後、名目賃金上昇率4%前後、長期金利4%前後という「普通の経済」へと回帰する途上にあると言えるだろう。

で、問題は、「こうした普通の経済への回帰は順調に進む」かどうか。そこで氏は、<1>金利の水準、と<2>賃金の上昇がポイントだと指摘。結論をこう結んでいます。

 名目賃金の動きは、異常な経済から普通の経済への回帰の中で、重要な役割を果たすはずだ。物価の上昇は賃金を引き上げ、賃金の上昇はサービス価格を通して物価水準を引き上げるからだ。さらには、賃金の上昇は、景気の恩恵が家計部門に波及することを意味し、消費主導型の息の長い景気拡大を実現することにもなる。
 「景気上昇が続いているのに賃金が上がらない」という部分が、ワンセットとしての経済正常化にとっての「ミッシング・リンク(連鎖の輪の欠損)」となっているのではないか、というのが私の診断である。

賃金の引き上げによる景気の持続的回復、というのは、もはや特別な意見でも何でもない、ということですね。

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