文部科学省の教科書検定で、沖縄戦の集団自決について「日本軍の強制」の記述に検定意見がつき、修正が求められることに。
しかし、軍が自決を命じなかったのであれば、いったい何のために手榴弾を配ったというのでしょうか?
沖縄戦集団自決「強制」記述に修正意見 教科書検定(朝日新聞)
“集団自決に軍関与”を削除(NHKニュース)
文科省、沖縄戦通説に「待った」=教科書検定(時事通信)
沖縄戦集団自決「強制」記述に修正意見 教科書検定
[asahi.com 2007年03月30日19時30分]文部科学省は30日、06年度の教科書検定結果を公表した。地理歴史・公民では、沖縄戦の集団自決をめぐって「日本軍に強いられた」との記述に修正を求める検定意見が初めてついた。今回も、イラク戦争や靖国参拝などについて、政府見解に沿う記載を求める傾向が続いた。
今回の対象は、高校中学年(主に2、3年で使用)の教科書。224点が申請され、検定意見を受けて各出版社が修正したうえで222点が合格。不合格の2点は、いずれも生物2だった。
地歴公民のうち日本史では、沖縄戦の集団自決に関して「日本軍に強いられた」という趣旨を書いた7点すべてが「命令したかどうかは明らかと言えない」と指摘され、各社は「集団自決に追い込まれた」などと修正した。日本史の教科書は昨年も申請できたが、その際にはこうした意見はつかなかった。
文科省は、判断基準を変えた理由を(1)「軍の命令があった」とする資料と否定する資料の双方がある(2)慶良間諸島で自決を命じたと言われてきた元軍人やその遺族が05年、名誉棄損を訴えて訴訟を起こしている(3)近年の研究は、命令の有無より住民の精神状況が重視されている――などの状況からと説明する。昨年合格した出版社には、判断が変わった旨は知らせるが、すぐに修正を求めることはしない方針だ。
地歴公民では、他にも時事問題で政府見解に沿った意見が付いた。その結果、イラク戦争では、「米英軍のイラク侵攻」が「イラク攻撃」に、自衛隊が派遣された時期は「戦時中」から「主要な戦闘終結後も武力衝突がつづく」に変わった。首相の靖国参拝をめぐる裁判では、「合憲とする判決はない」という記述に「私的参拝と区別する必要がある」と意見がつき、「公式参拝を合憲とする判決はない」となった。
南京大虐殺では今回も、「犠牲者数について、諸説を十分に配慮していない」との意見が日本史5点についた。一方、政治・外交問題となり、中学の教科書からはなくなった「従軍慰安婦」(「慰安婦」「慰安施設」を含む)の問題は16点で取りあげられたが、意見は一つもつかなかった。
“集団自決に軍関与”を削除
[NHKニュース 3月30日 18時49分]来年4月から高校で使われる教科書の検定が終了し、太平洋戦争末期に沖縄で起きた住民の集団自決に日本軍が関与したとする記述に初めて検定意見がつけられ、すべての教科書から日本軍の直接的な関与が削除されました。文部科学省は「軍関係者の新たな証言などから、日本軍が集団自決を命令したかどうか定かでなくなってきたため」と説明しています。
今回の検定には、高校生向けの教科書224点が申請され、文部科学省の検定意見による修正をへて、不合格となった生物IIの2点を除く、あわせて222点が合格しました。
このうち、日本史では太平洋戦争末期に沖縄で起きた住民の集団自決に関する記述に対して、これを扱った5社7点の教科書すべてに検定意見がつきました。
このうち、清水書院の日本史Bでは「中には日本軍に集団自決を強制された人もいた」という記述に対して、「日本軍が住民に集団自決の命令を出したかどうか明らかでない」として、検定意見がつきました。その結果、「中には集団自決に追い込まれた人々もいた」と「日本軍に」という言葉を削除する形で修正されました。また、山川出版の日本史Aの「日本軍によって壕(ごう)を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という記述は、「その中には日本軍に壕(ごう)から追い出されたり、自決した住民もいた」と修正され、すべての教科書から集団自決に関する日本軍の直接的な関与が削除されました。
沖縄戦の集団自決については、昭和50年代に教科書に記述されるようになりましたが、検定意見がついたのは今回が初めてです。沖縄戦の集団自決をめぐってはおととし8月、日本軍の守備隊長だった男性が「本の中で住民に集団自決を命じたかのように書かれ、名誉を傷つけられた」として、出版社と作者に慰謝料などを求める裁判を起こしています。今回の検定意見はこの裁判での「集団自決は命じていない」とする元守備隊長の証言のほか、自決命令を受けたと主張していた住民が「国から遺族補償を受けられるよう、守備隊長から集団自決を指示されたとうそをついていた」などと証言したことなどを受けたもので、文部科学省は「日本軍が集団自決を命じたという根拠は揺らいでいる」と説明しています。
文科省、沖縄戦通説に「待った」=教科書検定
[時事通信 2007年03月30日18時41分]通説とされ、これまで教科書でも記述されてきた日本軍の強制による沖縄戦の住民集団自決について、文部科学省は「強制があったかどうか明らかでない」とし、従来の検定方針を事実上転換した。
集団自決を軍の命令と最初に指摘したのは、1950年に沖縄タイムス社が出版した「鉄の暴風」とされる。その後、作家曽野綾子氏が、住民の聞き取りで反証する著書を出すなど、命令の存否で論争が続いてきた。
2005年8月、命令を下したとされた元陸軍少佐梅沢裕氏(90)や元大尉の遺族が、軍の強要があったと断定した大江健三郎氏の著書で名誉を傷つけられたとして、損害賠償などを求めて大阪地裁に提訴。原告側は「『命令』は、住民が戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づき軍人軍属として年金が受けられるようねつ造された」と主張している。
方針転換の理由について、文科省は「提訴は一つのきっかけ。近年、命令はなかったとする遺族の新たな証言なども出ている。片方の主張に基づいた通説のみによって検定意見を付けないのはバランスが取れないと判断した」(教科書課)と説明する。
しかし、ある研究者は「提訴という一つの行為があったにすぎない。歴史的な検証に基づく学説状況に変化はなく、教科書の記述を変える必要は全くない」と反論している。
日本史Aの記述を修正したある出版社の編集部長は「教科書調査官から『命令はなかったというのが定説になりつつある』と説明を受けた」と明かした。一方、別の出版社の担当者は「裁判があったので、検定意見は予想の範囲内だった」と話した。(了)
「慰安婦」に意見ゼロ=教科書検定
[時事通信 2007年03月30日18時43分]旧日本軍の直接の関与を否定する下村博文官房副長官の発言や、米下院で審議中の対日謝罪要求決議案などで注目を浴びる従軍慰安婦問題。今回の検定で、日本史や倫理など6社16点の教科書が取り上げたが、意見が付いたものはなかった。
このうち、実教出版の日本史Bは「日本軍が設置に関与した慰安所に」「軍の監理のもとで」慰安婦を動員したと記述。軍の関与を認め謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話を紹介した。 これ以外の各社は、いずれも主語を明確にせず、朝鮮人や中国人などの女性が「送りこまれた」「かりだされた」などの表現にした。
一方、北朝鮮による拉致問題は7社が扱った。ある教科書の「拉致被害者の一部とその家族が帰国した」という記述には、「解決済みと誤解するおそれがある」と意見が付き、「他の拉致被害者の早期帰国が求められている」という一文が付け加わった。
イラク戦争や自衛隊派遣では、米英が「国連の決議を経ず」戦争を開始したとする記述が「明確な決議を経ず」に修正された。自衛隊の派遣先として「戦時中のイラク」が「主要な戦闘終了後も武力衝突が続くイラク」と改められるなど、政府見解に沿う厳格な表現が求められた。
竹島や北方4島などの領土問題では、従来通り、日本固有の領土との明記が求められ、学説上の争いがある南京大虐殺の死者数も諸説併記が要求された。(了)