新宿駅西口で、夕方から、吉田万三さんの演説を聞きました。
まず驚いたのは、その人の集まりが多かったこと。小田急百貨店前は、司会の人が「通路をあけてください」と2度もアナウンスしないといけないくらいの人だかりができていました。僕も、すっかりそのなかに飲み込まれてしまいましたが、小田急ハルクにむかう2階デッキのところにも鈴なりになって人が聞いていたし、演説のさなかにも「そうだ」「がんばれ」「万三さ??ん」と盛んに声援が飛んで、とても熱気がありました。
万三さんの演説も、力強く、確信にあふれていて、非常によかったと思います。
自分の公約を訴えるだけでなく、都知事選挙の本当の争点がどこにあるか、石原候補や浅野候補にたいする批判もしっかりしていて、心強く思いました。ふつう、候補者自身が他候補を直接批判すると、生臭くなってくるものですが、それが少しも嫌らしくならないのは、万三さんの優しい人柄のなせる技かもしれません。
なんといっても、吉田万三さんの力強さは、彼の主張が、この都知事選の争点をつくってきたことにあります。実際、昨年までは、東京オリンピックの候補地に決まって、もう石原=オリンピックで行け行けドンドンみたいな状態でした。そこに、共産党都議団による豪華海外視察、都政私物化の批判があって、雲行きがすっかり変わってしまいましたが、それでも、これだけだと話は共産党vs.石原都知事だけでした。
これが、都知事選を前にして、テレビの討論番組などで、吉田さんがずばり石原知事、石原都政の批判をやるものだから、すっかり様変わりしてしまい、石原知事本人が「反省」を口にするようになりました。
しかし、油断はできません。吉田さんも演説で言っていましたが、石原知事が反省しているのは「説明不足だった」ということだけ。だから、反省してみせても、これからは説明をした上で豪華海外旅行をすると言っているようなものです。都民が怒っているのは、説明不足にたいしてではなく、みんなが苦労して、大変な思いをして税金を納めているときに、その税金で海外旅行をし、1本何万円もするワインを飲み食いしていることにたいしてです。その非を認めようとしないで、説明不足を「反省」してみせても、少しも信用できないことは言うまでもありません。
さらに万三さんが言っていたことですが、吉田さんが福祉の充実を訴えるものだから、「福祉は最大のぜいたくだ」と言ってはばからなかった石原候補までが、福祉は大事だ、東京の福祉は全国2位、3位だと言い出したそうです。しかし、これは都内の23区や市町村の予算もひっくるめた数字で、都道府県の予算だけを比べると、順位は断然下ってしまいます。だいたい自分が初めて都知事になったときから450億円も福祉の予算を削ってしまったのだから、2位、3位になるはずがないと吉田さんは訴えていたが、まったくそのとおりです。
税金のムダづかいの問題でも、福祉の問題でも、吉田万三さんの訴えは、これだけ、すでに都政を動かしています。すばらしい実力だと言うしかありません。
他方、浅野候補はどうでしょうか。最初、オリンピックの問題で、浅野候補は、たちどまってよく考えようと言っていましたが、ここへきて反対を前面に掲げだしました。その一方で、最初は、民主党との関係を隠していましたが、いよいよ民主党と一体になって選挙をすすめようとしています。しかし、民主党の都議は、都議会でこぞってオリンピック推進に賛成しました。オリンピック反対を掲げながら、オリンピック推進派の支援を得る――こんな又裂き状態で、オリンピックを止められるはずがないではないでしょうか。本当にオリンピック反対なら、まず民主党の支持を断るべきだと、吉田さんは指摘していましたが、本当にそうだと思います。
オリンピックの開催自体はすばらしいことです。しかし、吉田万三さんが言うように、オリンピックをやるなら、もう少し都民の暮らしがよくなってからでもよいのではないでしょうか。石原知事は、オリンピックのための基金として、すでに1000億円ため込んでいます。2007年度にも、もう1000億円を積み増しすることになっています。それだけの予算があるのなら、増税・負担増で苦しい思いをしている都民のために、やるべきことはいろいろあるのではないでしょうか。だからこそ、オリンピックは白紙に戻して、税金の使い方をはっきりと切り替える、都民の暮らし・福祉のためにこそ予算を使う、そんな都政を実現させることがいまこそ大切になっていると、万三さんの演説を聞きながら、強く思いました。
普段、僕は、なるべく目立たないようにおとなしく演説を聞いているのですが、演説の途中から、思わず「そうだ」「万三さん、頑張れ?」と叫んでいました。誰もがそんな気持ちになる、本当に力強い、確信にあふれた演説でした。この気持ちを1人でも多くの人に伝えたいと思います。