憲法改正「賛成」3年連続で減少

読売新聞の世論調査で、憲法について質問したところ、「改正する方がよい」が46%で、「改正しない方がよい」39%を上回りました。しかし、「改正する方がよい」は前年比9ポイントのマイナス、3年連続で減少。逆に「改正しない方がよい」は7ポイント・アップ、こちらも3年連続増加です。

さらに、9条についていえば、第1項の改正の「必要ない」が80%、第2項も改正「必要ない」が54%と、どとらも過半数が改正に反対。集団的自衛権についても、「使えなくてよい」が50%を占めています。

憲法「改正」賛成46%、3年連続で減少…読売調査(読売新聞)
「憲法」 : 調査項目 : 世論調査・支持率(読売新聞)

憲法「改正」賛成46%、3年連続で減少…読売調査
[2007年4月5日19時28分 読売新聞]

 読売新聞社が3月17、18の両日に実施した憲法に関する全国世論調査(面接方式)によると、憲法を「改正する方がよい」は46%で、「改正しない方がよい」は39%だった。
 1993年以来15年連続で、改正派が非改正派を上回った。
 ただ、改正派は昨年調査に比べて9ポイント減り、3年連続で減少した。非改正派は昨年比7ポイント増えた。
 憲法改正については、安倍首相が強い意欲を示し、改正手続きを定めた国民投票法案が今国会で審議されている。憲法改正が現実味を帯びてきたことで、これまでの改正賛成派の中に改正の動きを慎重に見守りたいとする人が出てきていると見られる。
 改正に賛成の人にその理由を聞いたところ(複数回答)、「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」が48%でトップ。2位は「憲法の解釈や運用だけで対応すると混乱するから」(32%)だった。
 改正反対派に理由を聞くと(同)、「世界に誇る平和憲法だから」が47%で最多だった。
 憲法9条を今後どうするかについては、「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」「これまで通り、解釈や運用で対応する」がともに36%で並んだ。「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」は20%だった。
 9条のうち、戦争放棄をうたった第1項については、改正の必要が「ない」が80%に達した。「ある」は14%だった。戦力不保持をうたった第2項は、改正の必要が「ない」が54%、「ある」が38%だった。
 「集団的自衛権」に関しては、「これまで通り、使えなくてよい」が50%。「憲法を改正して、使えるようにする」「憲法の解釈を変更して、使えるようにする」は各21%だった。
 施行60年を迎える憲法のこれまでの役割を「評価している」は、「大いに」「多少は」を合わせて85%に上り、「評価していない」は計10%だった。

ちなみに、読売新聞の3年前の世論調査では、2004年には「改正賛成」は65%もありました。それが、とうとう50%以下に。逆に「改正しないでよい」は2004年の23%から39%に増えました。「九条の会」をふくめ、“草の根”での「憲法守れ」の運動が着実に広がっている結果であることは明らかでしょう。年代別で見ると、「改正賛成」は全世代で昨年より減っていますが、そのなかでも30歳代で昨年より12ポイントも低下したのが目だったそうです。

憲法が果たしてきた役割についても、「大いに評価」「多少は評価」を合わせて84.7%に上っていますが、なかでも「大いに評価」という意見が、1997年の16.7%から37.9%に大きく増えています。

「憲法」 2007年3月調査(面接方式)

▽調査日:2007年3月17-18日
 対象者:全国有権者3,000人(250地点、層化二段無作為抽出法)
 方法:個別訪問面接聴取法、回収:1,741人(58.0%)*

Q17 日本の憲法についてお聞きします。あなたは、今の日本の憲法のどんな点に関心を持っていますか。回答リストの問題は、すべて憲法に関係するものですが、あなたがとくに関心を持っているものを、いくつでもあげて下さい。

天皇や皇室の問題 20.4
戦争放棄、自衛隊の問題 48.4
平等と差別の問題 15.9
言論、出版、映像などの表現の自由の問題 11.7
情報公開の問題 15.3
プライバシー保護の問題 16.7
生存権、社会福祉の問題 22.3
環境問題 29.8
集会やデモ、ストライキ権の問題 1.8
選挙制度の問題 11.8
裁判の問題 14.9
靖国神社への公式参拝の問題 20.0
憲法改正の問題 18.1
三権分立の問題 3.2
地方自治の問題 14.1
国会の二院制の問題 6.3
憲法制定の過程や背景 5.6
その他、とくにない、DK.NA 13.7

Q18 あなたは、今の憲法を、改正する方がよいと思いますか、改正しない方がよいと思いますか。

(1)改正する方がよい 46.2
(2)改正しない方がよい 39.1
DK.NA 14.7

SQ1 【質問対象=Q18の答えが(1)の人だけ】
 あなたが改正する方がよいと思う理由は何ですか。回答リストの中から、いくつでもあげて下さい。

アメリカに押しつけられた憲法だから 30.2
国の自衛権を明記し、自衛隊の存在を明文化するため 27.2
権利の主張が多すぎ、義務がおろそかにされているから 21.1
憲法の解釈や運用だけで対応すると混乱するから 31.9
国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから 47.6
その他 2.6
DK.NA 1.5

SQ2 【質問対象=Q18の答えが(1)の人だけ】
 あなたは、いつまでに憲法改正を実現してほしいと思いますか。回答リストの中から、1つだけあげて下さい。

3年以内 50.7
5年以内 24.8
10年以内 6.7
その他 1.2
とくにない 12.9
DK.NA 3.6

SQ3 【質問対象=Q18の答えが(2)の人だけ】
 あなたが改正しない方がよいと思う理由は何ですか。回答リストの中から、いくつでもあげて下さい。

すでに国民の中に定着しているから 44.1
世界に誇る平和憲法だから 46.9
基本的人権、民主主義が保障されているから 22.8
時代の変化に応じて、解釈、運用に幅を持たせればよいから 19.7
改正すると軍事大国への道を開くおそれがあるから 32.1
その他 0.7
DK.NA 2.2

Q19 戦争を放棄し、戦力を持たないとした憲法第9条をめぐる問題について、政府はこれまで、その解釈や運用によって対応してきました。あなたは、憲法第9条について、今後、どうすればよいと思いますか。回答リストの中から、1つだけあげて下さい。

これまで通り、解釈や運用で対応する 35.8
解釈や運用で対応するのは限界なので、憲法第9条を改正する 35.7
憲法第9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない 20.0
その他 0.2
DK.NA 8.3

Q20 憲法第9条の条文には第1項と第2項があります。それぞれについて、あなたが改正する必要があると思うかどうかを、順にお答え下さい。

S1 「戦争を放棄すること」を定めた第1項については、改正する必要があると思いますか、ないと思いますか。

ある 14.0
ない 80.3
DK.NA 5.7

S2 「戦力を持たないこと」などを定めた第2項についてはどうですか。

ある 38.1
ない 54.1
DK.NA 7.8

Q21 日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、この攻撃を、日本の安全を脅かすものと見なして、攻撃した相手に反撃する権利を「集団的自衛権」と言います。政府の見解では、日本もこの権利を持っているが、憲法の解釈上、使うことはできないとしています。この集団的自衛権について、回答リストの中から、あなたの考えに最も近いものを、1つだけあげて下さい。

憲法を改正して、集団的自衛権を使えるようにする 20.8
憲法の解釈を変更して、集団的自衛権を使えるようにする 20.6
これまで通り、使えなくてよい 50.0
その他 0.1
DK.NA 8.5

Q22 憲法は、国会の構成を衆議院と参議院の二院制としています。国会の二院制のあり方については、様々な議論がありますが、回答リストの中から、あなたの考えに最も近いものを、1つだけあげて下さい。

一院制にする 21.8
二院制を維持し、衆議院の役割や権限を強化する 7.9
二院制を維持し、参議院の役割や権限を強化する 18.7
今のままでよい 44.2
その他 0.7
DK.NA 6.7

Q23 日本の憲法について、あなたが、今の条文を改めたり、新たな条文を加えたりする方がよいと思うものがあれば、回答リストの中から、いくつでもあげて下さい。

天皇の地位やあり方 15.0
自衛のための軍隊保持 23.2
積極的な国際協力 23.3
行政機関の情報を知る権利 17.8
個人情報やプライバシーの保護 21.4
家族の尊重 13.3
良好な環境で生活する権利 25.3
緊急事態などへの首相の権限強化 12.5
衆議院と参議院の役割 11.8
国と地方の役割 21.9
憲法裁判所の設置 4.2
その他 0.1
とくにない 23.8
DK.NA 4.1

Q24 憲法が施行されてから、5月で60年を迎えます。あなたは、全体として、今の憲法が日本の社会で果たしてきた役割を、評価していますか、評価していませんか。

大いに評価している 37.9
多少は評価している 46.8
あまり評価していない 7.8
全く評価していない 2.2
DK.NA 5.4

Q25 今の憲法に関する次の4つの意見について、あなたがその通りだと思うか、そうは思わないかを、順にお答え下さい。

S1 「日本に平和が続き、経済発展をもたらした」という意見については、その通りだと思いますか、そうは思いませんか。

その通りだと思う 86.5
そうは思わない 10.1
DK.NA 3.4

S2 「日本だけが平和ならば良いという考えになり、国際的な平和協力活動に十分に貢献できていない」という意見についてはどうですか。

その通りだと思う 37.5
そうは思わない 56.8
DK.NA 5.7

S3 「個人の自由や権利を尊重する考えが定着した」という意見についてはどうですか。

その通りだと思う 66.3
そうは思わない 27.6
DK.NA 6.1

S4 「個人の自由や権利が尊重された結果、公共の利益がおろそかにされている」という意見についてはどうですか。

その通りだと思う 48.0
そうは思わない 41.4
DK.NA 10.7

Q26 あなたは、今年夏に行われる参議院選挙で、投票する候補者や政党を決めるとき、憲法問題への考え方を判断材料にしますか、しませんか。

する 40.7
しない 28.7
どちらとも言えない 27.5
DK.NA 3.2

で、この世論調査をふまえた「読売新聞」の社説

憲法改正派が15年連続で反対派を上回っているのに、自民党も民主党も改憲案をまとめたのに、改憲手続き法案の審議が進んでいるのに、そして何より、改憲をかかげる安倍政権が誕生したのに、なぜ憲法改正派が3年連続して減ってしまうのか…。「読売新聞」は、その矛先を、もともと民主党の小沢一郎代表は改憲論者であるにもかかわらず、内部に社会党出身者をかかえて、改憲からの「逃避」を見せているのがけしからん、と民主党に向けています。もう1つは、安倍内閣がいまひとつパッとしないこと。

もはやこうなると、完全なボヤキです。(^_^;) 「憲法改正へ小休止は許されない」と叫んでみても、国民世論の流れははっきりしてきたのではないでしょうか。

社説[憲法世論調査]「改正」へ小休止は許されない
[2007年4月6日1時26分 読売新聞]

 憲法改正に意欲を示す安倍首相に対し、身構える民主党――その対決構図が国民の憲法観にも影響を与えている。
 読売新聞の3月世論調査で、憲法を「改正する方がよい」という改正派は46%で、非改正派の39%を上回った。この改正派優位は、15年間にわたって変わっていない。
 ただ、今年は改正派が昨年比9ポイント減った。3年連続のダウンだ。
 2005年10月、自民党は新憲法草案を決定した。その直後、民主党も「憲法提言」をまとめている。憲法改正の手続きを定める国民投票法案も、両党は昨年12月、大筋で合意にこぎつけた。
 安倍首相は、憲法改正を政治日程にのせる決断をし、今夏の参院選の争点に据える考えを示している。この一連の動きは、憲法改正の論議を加速させ、改正派の増加をもたらしていい。
 ところが、そうはなっていない。
 今回、各年代、各政党支持層で憲法改正派が減少した。特に民主支持層では、改正派が昨年比17ポイント減って41%に落ちている。過去、民主支持層は一貫して改正派が過半数を占めていた。
 民主党の小沢代表は、間近に迫った夏の参院選への政略的な思惑から自民党との対決姿勢を強めている。与党の国民投票法案に反対しているのも、参院選での社民党などとの選挙協力を優先する狙いからだろう。
 小沢代表はもともと改憲論者だ。党内には「護憲」を唱える旧社会党系の議員がいる。憲法問題で具体論に踏み込むと亀裂を生みかねない。それを避けるための改憲からの「逃避」姿勢が、支持層に跳ね返っているのかもしれない。
 一方、改憲の旗を掲げる安倍自民党にももろさがみえる。今回、自民支持層の改正派が昨年比10ポイントも減った。
 安倍内閣を「支持する」と答えた人の34%が、改正に反対している。
 首相は、国民に無用の不安を抱かせないためにも、憲法をどう変えたいのか、その具体的内容と手順を示し、自ら説得に努める必要がある。
 イラク情勢の混迷、北朝鮮による核実験強行、中国の軍拡など、日本と国際社会の安全保障環境は悪化するばかりだ。これらは、憲法の安保条項の整備などを日本の政治に突きつけている。
 1990年の湾岸危機での対応遅れを教訓にして92年、国連平和維持活動(PKO)協力法が成立し、これを機に国民の憲法意識は劇的に変わった。
 今日の国内外の情勢を踏まえれば、憲法改正作業は、休まず、たゆまず進めなければならない時代の課題だ。

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