久留間鮫造氏との論争をまとめた第1部「恐慌・産業循環論の体系構成」をぱらぱらと眺めたあと、『資本論』第2部草稿をふくむ新しい論争をとりあつかった第2部「再生産論の課題」から読み始めました。
最初は、『資本論』第2部第2編注32の「次のAbschnitt」問題と、『資本論』第2部第1草稿の第9節「再生産過程の撹乱」にマルクスが記した指示書きの解釈という、2つの問題だけをとりあつかったピンポイントの論争書かと思ったのですが、読んでみると、なかなか奥が深いというか、論争のベースとなっている冨塚氏の『資本論』理解がよく分かって、非常に勉強になりました。
とくに、こんなことを書くといまさらな感じですが、富塚良三氏の「均衡拡大再生産」軌道という考え方がどういうものなのか、この本を読んで始めて理解できました。25年以上前に富塚良三氏の『経済原論』で『資本論』の勉強をしたはずだったのですが…。
最近、一見、つまらなさそうな『資本論』第2部が、実は、資本主義的商品の“命がけの飛躍”をとりあつかった、いわば恐慌論の“本舞台”だということが指摘されていますが、冨塚氏の「均衡拡大再生産」軌道という考え方は、それともつながる大事な提起だったんですね。そんなことも知らずに、『資本論』を勉強していたとは…。お恥ずかしい。(^_^;)
ちょうど、論争相手の1人である大谷禎之介氏の『21世紀とマルクス』も読んでいる最中でしたが、同書には、冨塚氏に対する側からの論争の続きともいえるような論文も収録されていて、その面でも興味深く読んでいます。
【書誌情報】
著者:富塚良三/書名:再生産論研究/出版社:中央大学出版部(中央大学学術図書64)/刊行年:2007年3月/定価:本体3,300円+税/ISBN978-4-8057-2171-1