防衛施設庁、沖縄・辺野古沖への機器設置を強行

沖縄の米軍普天間基地の移転先とされている名護市辺野古で、基地建設に反対する住民たちが座り込むなど抗議するなか、防衛施設庁は、海上保安庁の巡視船や自衛隊員まで動員して、基地建設のための調査機器の設置を強行しました。

作業車両の進入を阻止しようと漁港入り口で座り込む反対派の市民ら=18日午前5時50分ごろ、名護市・辺野古漁港(伊藤桃子撮影):沖縄タイムス

那覇防衛施設局のチャーター船を取り囲む反対派のカヌー=18日午前10時15分、名護市辺野古沖約3キロの海上:沖縄タイムス

潜水作業に自衛隊 国、機器設置に着手(琉球新報)
調査船囲み阻止行動 辺野古の海緊迫(琉球新報)
反対派、必死の抵抗/辺野古調査(沖縄タイムス)

潜水作業に自衛隊 国、機器設置に着手
[琉球新報 5/18 16:01]

 【名護】那覇防衛施設局は18日早朝から、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沖で、環境現況調査(事前調査)に使用する機器の設置作業を開始、本格調査に乗り出した。政府は同日午前、潜水作業への自衛隊員の投入を公式に認めた。反対派住民らがカヌーや船を出すなど抗議行動を展開、漁港入り口でも座り込みをして作業阻止を図った。防衛省は、海上自衛隊から掃海母艦「ぶんご」とダイバーが作業に協力している―と説明した。
 この日は、作業員がサンゴ調査用の着床板や海生生物調査の水中ビデオカメラとみられる機器を複数の個所に設置した。機器設置は今後数日続ける。
 施設局の県への申請によると、サンゴ調査機器を39カ所、海生生物調査用ビデオカメラ14カ所、パッシブソナー(音波探知機)30カ所、潮流など海象調査用機器29カ所の計112カ所に機器を設置する。
 現場海域では日の出前から海上保安庁の巡視船4隻が沖合に停泊。午前5時40分ごろから保安庁の船や作業船が辺野古沖合に姿を現し始め、6時20分ごろから調査地点で潜水士が潜り始めるのが確認された。

調査船囲み阻止行動 辺野古の海緊迫
[琉球新報 5/18 16:03]

 【名護】「この人たち(の作業)が違法行為だ」。普天間飛行場移設先の名護市辺野古の沖合で、基地建設反対派は18日午前、カヌーやゴムボートに乗り込み、建設に伴う那覇防衛施設局の調査阻止を図った。阻止行動の警戒に当たった海上保安庁は、調査船にしがみつく反対派住民らのカヌー隊の周辺を回りながら警告を続けるなど、海上は緊迫した。 反対派はカヌー約10隻に分乗し、二手に分かれて調査船に接近。船を囲むように手を伸ばしてしがみつき、作業着手を阻んだ。海中でもアンカーのロープにしがみつき、船を止めにかかるなどした。
 那覇防衛施設局は10隻以上の調査船で作業に取り掛かった。それを守るように、辺野古沖合には海保の巡視船4隻が待機。リーフの内外で海保のゴムボート約10隻が高速で移動しながら、作業船以外の船の警戒に当たった。海保はカヌー隊などに対し「違法行為で移動しなければ、規制することになる」と強く警告。反対派は「作業が違法だ」と調査船の船首などにカヌーを寄せながら抗議した。
 調査用の機器設置作業は、反対派の阻止に遭った船以外は着々と進み、ダイバーが機器を海底に取り付けた。4月末に実施された機器設置のための目視作業に比べ、ダイバーの数は多く、海上自衛隊員も作業に当たったとみられる。中には双眼鏡で取材陣の様子をうかがうダイバーもいた。

反対派、必死の抵抗/辺野古調査
[沖縄タイムス 2007年5月18日(金) 夕刊 7面]

 【名護】「違法な調査をやめて」「人殺しの基地を造らないで」。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対する市民団体メンバーらが、作業を止めようと作業船にしがみつき、懸命に訴えた。海上自衛隊員が調査機器の設置作業に参加したことには、「県民の人権を無視する暴挙だ」と怒りの声が上がった。同市辺野古の漁港では前夜から座り込みを続ける市民らが阻止行動を見守った。
 辺野古海域には、海上保安庁が巡視船4隻や巡視艇数隻、十数隻のゴムボートなどを展開し、警戒に当たった。反対派は船7隻、ゴムボート1隻、カヌー12艇を出航させた。
 同日午前6時20分ごろ、那覇防衛施設局がチャーターした作業船や警戒船が調査海域で作業に着手した。午前7時40分ごろ、反対派メンバーらのカヌー5艇とゴムボートの乗員が辺野古漁港沖にいた作業船にしがみついた。数人はシュノーケルをつけて入水し、海中から作業中止を訴えた。
 反対派を取り囲んだ海上保安庁のゴムボート5隻から職員が、再三にわたって「作業船から離れなさい」と警告、周辺は緊迫した雰囲気に包まれた。
 反対派のいない複数の調査ポイントでは、作業船に乗ったダイバー3、4人が、鉄製パイプや鉄筋などを船から積み降ろすなど機器の設置作業が進められた。
 一方、辺野古漁港には前日深夜から泊まり込んだ反対派メンバーも含め、午前5時までに約100人が集結。夜が明けて沖合に停泊する海保の巡視船などを確認すると、現場の緊張が高まった。
 座り込みに参加した辺野古区の嘉陽宗義さん(84)は「軍艦相手に勝負はできない。しかし世界中で平和を願う人がわれわれの味方をしている。信念を持って笑顔で闘おう」と呼び掛けた。早朝に、
 西原町から駆けつけた花城静子さん(50)は「沖縄の人たちには、銃剣とブルドーザーで、土地を強制接収された苦い思いがある。一人一人の声や力は小さいが、みんなで協力して基地建設を阻止し、美しい海を守りたい」と意気込んだ。

海保 抗議船に立ち入り

 反対派メンバーらの船が停泊する名護市漁港では、海上保安庁の職員約20人が午前6時ごろから、海上阻止行動に向かうメンバーの抗議船や報道陣を乗せた船など計5隻に対して、従来行っていない出港前の立ち入り検査を実施。抗議船の出航は約1時間半遅れた。汀間 午前6時20分ごろ、施設局がチャーターした作業船や警戒船が調査海域での作業を始めた。
 海保職員が抗議船に乗り込み、救命胴衣や信号灯の有無をチェック、船舶の登録書類などに目を通した。
 一方、調査作業を支援するため那覇防衛施設局にチャーターされた漁船は検査なく出航。「なぜ抗議船を狙い撃ちするのか」との質問に対し、海保側は「漁船は常々漁協などを通して確認している」と答えたという。
 抜き打ち検査について海保は「辺野古沖の警備行動にかかわることは、コメントできない」といい、警備行動の一環であることを認めた。

島ぐるみ反発も

 仲地博琉大教授の話 自衛隊の本来の役割は外国の侵略防止であり、国内の対立の現場に乗り込むことではない。特に今回は民間に委託された調査で、戦闘部隊の人員や装備が必要な場面ではない。こうしたケースは初めてではないか。自衛隊の出動が歯止めなく膨張するのは危険で、国民の監視が必要だ。
 「集団自決」に関する教科書検定が沖縄戦の記憶を呼び起こしている時期。自衛隊出動と絡み合い、保革にかかわらず県民のアイデンティティー、平和意識を刺激するだろう。県民世論に対する不用意な挑戦は、島ぐるみの反発を呼ぶ可能性がある。

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