大石嘉一郎氏の『近代日本地方自治の歩み』 (大月書店、2007年)に続いて、買ったままになっていた『日本資本主義百年の歩み』(東京大学出版会、2005年)を読み終えました。
いわゆる正統派の立場から、通史的に書かれているので、特別“これが目新しい”というところがある訳ではありません。それでも各章の末尾に、長めの注がつけられていて、明治維新の性格をどうみるか、日本の産業革命をどうとらえるか、大正デモクラシー(「護憲三派内閣」)の評価などなど、研究史上も論争的な問題についての大石氏の考え方が端的に書かれていて、非常に勉強になりました。
そこに、たまたま、注文していた大石嘉一郎『近代日本の地方自治』(東京大学出版会、1990年)が届きました ((古本屋で7000円は高いなぁと思っていたら、Amazonでまだ在庫があることになっていたので、思わず注文してしまったものです。(^_^;) ))。
で、届いたものを見てみると、確かに『近代日本地方自治の歩み』の土台になった論文の多くがこの本に収められています。しかし、こちらでは、『日本資本主義百年の歩み』と同じように(といっても、こちらは論文集ですが)、やっぱり各章の末尾に数ページにわたる「補注」が書かれていて、論争にかんする問題や、その後の実証研究にかかわる問題について、いろいろと大石氏が論及されています。
そのなかには、こういう点についてもっと研究したいと書かれているところもたくさんあります。そこから想像すると、大石氏は、『近代日本地方自治の歩み』では、そうした問題で叙述を充実・発展させようと思っておられたのではないでしょうか。実際には、それはかなわず、他の論文から補強するだけであきらめざるをえなかった…。そう思うと、残念でなりません。