5月16日の「中央決起集会」で、自由法曹団の田中隆幹事長が発言していた中味ですが、「しんぶん赤旗」から紹介します。
最終盤の国会審議のなかで、公務員・教育者の政治活動禁止、地位利用にかんして、「国民投票への賛否の勧誘」は国家公務員法・人事院規則で禁止する政治的行為にはあたらない、地方公務員についても地公法の「公の投票」から除外するように法律を変える、教育者が授業中に意見表明をしたり、街頭演説で弁士を務めるのも自由、という答弁を引き出したことが報告されると、集会に集まった参加者からは大きな拍手が起きていました。
「改憲反対」の国民の力を与党にみせてやろう
[しんぶん赤旗 2007年5月17日付]「5・16中央決起集会」で自由法曹団の田中隆幹事長がおこなった特別発言(要旨)を紹介します。
憲法にかかわる重大な法案を、まともな審議もせず、問題山積のまま、安倍政権と与党は強行しました。
第1。狙いの1つは自・公・民三党の共同修正を実現し、改憲案発議の実験台にすることにありました。与党案と民主党案の提出者は終始このことを考えていました。彼らが描いた「エレガントな着地」をとん挫させたのは、国民的な批判でした。一番悔しがっているのは彼らでしょう。
第2。少数意見で憲法が変わるという問題です。世論調査では79%が最低投票率を要求し、付帯決議にも入りました。圧倒的多数の主権者の意思でのみ憲法を変えられることを確認したことを意味しています。
第3。カネで憲法が変えられる有料意見広告の問題です。全面禁止はほとんど自由法曹団の主張に近かったが、日を追うにつれて規制意見が強まり、社会的な声にもなりました。運動と世論が打ちこんだメディアと財界への強烈な縛りとして機能するし、させなければなりません。公務員と教育者
最終盤に自由法曹団が最も重視したのは、500万人に影響する公務員、教育者の政治活動禁止と地位利用に関する問題でした。
少し詳しく触れておきます。
公務員法の政治活動の禁止が、国民投票運動に適用されるかどうか。国民投票への賛否の勧誘運動は、国家公務員法と人事院規則で禁止される政治的行為にはあたりません。国家公務員は国民投票運動を自由にできます。選挙運動をかねたり、政党の機関紙を配布する形でやったりすると規制を受ける可能性もありますが、九条の会や労働組合の機関紙を配布してもまったく問題はない。
地方公務員はどうか。地方公務員法で「公の選挙又は投票」の勧誘が禁止とあって、どうやらこの「投票」に国民投票も含まれます。地公法第36条の「投票」から国民投票を除外するように法律を変えて国家公務員と同じようにする。これは日本共産党の仁比聡平参院議員が明確に確認させた答弁です。
念のために確認しておいてほしい。改憲発議が行われて、国民投票運動期間になったら自由になると言っているのではない。この国会で確認されたことは、「九条を守れ」と訴えることが国家公務員法で禁止される行為にあたらないということであり、いまも自由だということ。そして、地方公務員は「投票」にひっかかるので、それをはずすと言っているのだから、投票が目の前にない今はひっかかるわけがない。法整備の監視を
3年間の法整備を厳重に監視するとともに、その間、権利や自由を空洞化させないための憲法運動をおう盛に展開することが課題なのです。
公務員と教育者の地位利用の規制では、最初の与党案は刑罰で禁止するものでしたが、さすがに刑罰禁止はなくなりました。それでも野放図に運用されると懲戒処分の威嚇を受けかねない。この点でも相当のところまで絞り込みました。
地位利用の考え方を答弁から紹介します。仁比参院議員が「教育者が単にその教育者としての社会的信頼を利用した場合でも問題の余地はない」という福岡高裁の判例を引用して追及したところ、その考え方は国民投票運動でも変わらないというのが答弁でした。だったら規制されるのは、直接職務と関連がある場合か、単位をほのめかすなどの職権乱用にあたる場合だけでしょう。
一問一答型もあったのでいくつか紹介します。
授業中の意見表明は…。答弁“勧誘にあたらなければそもそも国民投票運動に該当しない”。街頭宣伝で弁士に立って平和憲法について訴えることは…の問いに、提案者は「かまわない」と言って、悔しかったのか、もじもじして、こう付け加えました。“ただ、子どもに演説を聞きに来るようにというチラシを配った上でやると地位利用にあたることもある…。こんなやり方は運動としてもお勧めできないし、まあやらないだろう”。
地位利用禁止がある改憲発議後でもできるのだから、地位利用禁止がない今できることは明らかです。そして、憲法を守る運動が政治行為にならないことはさっき言ったとおりです。
院内外のたたかいでここまで追い込みました。このことに確信をもち、大いに活動して改憲に反対する声を大きくし、「愚かな政権与党」に主権者国民に力をみせてやろうではありませんか。
ちなみに、その仁比聡平議員の質問というのは、こちらからみることができます。
公務員の運動は「自由」 仁比議員 提出者に方向確認
採決強行/参院特委 自公が国民抗議の中
で、関連部分を摘録しておくと――。
国民投票運動での意見の表明、勧誘などは国家公務員法が禁止する政治的活動にはあたらない
第166回国会 参議院日本国憲法に関する調査特別委員会 第10号 2007年5月9日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 政治的行為、あるいはこの政治的行為が制限をされるという場合は、特定の政治的目的ということが伴わなければなりません。これは日本語で政治的な行為というふうに述べたりあるいは政治目的というふうに述べたりしますと、政治にかかわることは広く当たり得るような言葉に聞こえますけれども、ですが、法律用語としての政治目的、政治的目的というのは極めて限定されたものなんですね。
今、葉梨議員が挙げられたそれぞれのいろんな法律がございます。だけれども、私が聞いているのは、国公法百二条とその委任を受けた人事院規則一四―七、ここに挙げられている特定の政治的目的の中に、公務員が国民投票運動、つまり国会による発議の後に、皆さんの法案の言葉で言うなら賛否の意思の表明、あるいは勧誘の行為ですね、これをやるという目的が政治的目的に当たりますかという質問です。○衆議院議員(葉梨康弘君) 先ほど自衛隊法を引きましたけれども、人事院規則の中で政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれを反対するというところは、やはり私は国民投票についての意見の表明、勧誘、こういう目的はこれから除くみたいな形の手当てはしておかなければいけないんだろうというふうに思っています。
○衆議院議員(保岡興治君) 国家公務員法上、国民投票運動というのはいわゆる政治的目的を持った人事院規則に触れないだろうと、多分そういうふうに我々は考えましていろいろ場合を想定しましたけれども、それでそれを追認することも必要だし、地方公務員法が公の投票というのは政治活動ということでやはり公務員の禁止の対象になると、制限対象になるということで、これは改正をする必要があるか、今、葉梨議員が言われたとおりの考え方で整理しまして、それについては是非自由にできるようにしようという前提で検討もするつもりでおるところでございます。
同前
○仁比聡平君 現行法で公務員がこの制限列挙をされている政治的な目的に基づく政治的行為をやること以外は、これは自由なわけです。にもかかわらず、改憲案が発議をされた後の国民投票運動の自由が問題になる場面で、現行法では自由な行為が国民投票の場面では、その行為の態様だとかあるいは主体だとか規制手段だとか、そういった面で現状より縛られるというような方向での検討はあり得るんでしょうか。
○衆議院議員(保岡興治君) 先生が言っておられるように、国家公務員法上、我々も憲法の国民投票運動というものが触れないようにしようという前提で立法をし、考えているわけです。
それで、今まで、先ほど公の投票ということで地方公務員法上の三十六条の例も挙げられましたが、そもそも、字句はともかく、国民投票運動みたいなものを想定していない時代の立法でございますので、その点をいずれにしても立法上明確にしたいと我々は思っておりまして、お考えは先生と全く同じなんです。
大学の先生が授業中に意見の表明(賛否の表明をふくむ)をすることは国民投票運動にはあたらない
第166回国会 参議院日本国憲法に関する調査特別委員会 第12号 2007年5月11日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
大変なたくさんの重要かつ重大な問題がありながら時間が本当に限られているということが、今大変重大な出来事だと改めて感じております。その中で、教育者、教員である国民の国民投票の際の自由について改めてお尋ねをしたいと思うんです。
憲法改正の国民投票が発議をされているその場面というのが、最高法規である憲法を変えるのかそうでないのか、この国の未来にかかわるその問題について、国民的な議論が沸騰している場面だ。できる限り最大限自由にこの運動が行われなければならない、あるいはそれが望ましい、期待をされると。その点では、発議者の皆さんもそういう趣旨を御答弁になってこられたと思うわけです。
今日、少し角度を変えましてお尋ねをしたいと思うんですけれども、まず最初に、大学教授がその学問的立場から、発議をされている改憲案についてその是非を論評するということが、これは自由であるというふうに何度か答弁がされてきていると思います。仮に、これが講義と、学内の講義の場でなされたとしても、それが、その触れる賛否に従わなければ単位を与えないといった、こういう、まあ私は大変極端な例だと思いますし、もしそういうことがあるなら現在でもそれぞれの大学の懲戒規定に反する、重大な処分が与えられるような事案ではないかと思いますが、そういった場合を除いて自由であるということで理解してよろしいですか。○衆議院議員(葉梨康弘君) もう一度ちょっと整理してお話し申し上げますと、二つ要件があって、教育上の地位にあるため特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用するというのが、その講義の中で成績に影響を及ぼすようなものである、あるいは講義の中で言うというのも、これは実は当たってまいります。しかし、それによる国民投票運動が禁止されるのであって、その国民投票運動というのは何かということは、国民投票運動には賛否についての意見の表明は入ってまいりません。
ですから、今おっしゃられたような中で、単位を与えないことをほのめかして、表明するということじゃなく、勧誘するですね、まあ、ほのめかすわけですからそれも勧誘に当たる場合が多いだろうと思いますけれども、あるいは授業中に勧誘すると、投票しなさいよというようなことは、これは当たってきますよということなんです。ただ、意見の表明、賛否についての意見の表明は、そもそもこの国民投票運動には当たらないというような形で考えています。
大学の先生が学外の団体で改憲案の是非を論じるのは自由
同前
○仁比聡平君 大学教授が学外の市民、国民によってつくられる団体、その団体に参加をして、その集まりで発議をされている改憲案の是非を論ずる、これは相手は学生ではありませんといいますか、学生と特定されているわけではありません。学生が来ているかもしれないけれども、基本的には不特定多数の方々ですね、こういう方々に対して意見を表明し、是非を論ずるということは自由ですね。
○衆議院議員(葉梨康弘君) 自由であると考えています。
市民団体の集まりに教師が参加するのも自由
同前
○仁比聡平君 そうしますと、先ほど御紹介したような、国民がつくっておられる市民団体、そういったところに、例えば自分の住んでいる町で、護憲あるいは改憲どちらでもいいですが、そういった思いで集まりがある、ここに教師が参加をするということは、これは全く自由ですね。
○衆議院議員(葉梨康弘君) 構わないと思います。
集会で憲法を語ることも自由
同前
○仁比聡平君 そういった集会に参加をして、自分が教師として、二度と子供たちを戦場に送らないと、そういう思いで来たのだという、そういった思いを語ること、憲法を語ること、それも自由ですね。
○衆議院議員(葉梨康弘君) 当然、それはもう意見の表明であって自由だと思います。
集会に参加し、集会後にパレードに参加するのも自由
同前
○仁比聡平君 例えば日比谷の野音で、これも護憲、改憲どちらでもいいですけれども集会があって、そこに教師である国民が参加をする、そしてその集会の後にパレードが行われるというのでパレードに参加をする、これも全く自由ですね。
○衆議院議員(葉梨康弘君) 自由なんですけれども、これは教育者の地位利用という意味ではこれには当たらないんです。公務員の議論はまた別であるということ、また、最前議論をいたしましたのでもう言いませんけれども、地位利用には当たりません。
街頭宣伝をおこない、弁士として発言することも教育者の地位利用にはあたらない
同前
○仁比聡平君 新宿の駅前で、あそこ、たくさん人がおられますよね。そこで、これも護憲でも改憲でもいいですが、街頭宣伝を行いましょうということで、教師である国民が、先ほど申し上げたような、例えば二度と子供たちを戦場に送るような国にはしたくないと、そういった思いを語るということはいかがですか。
○衆議院議員(葉梨康弘君) 基本的にそれも構わないというふうに思います。
ただ、その後どういう御質問になるかというふうに、ちょっと私、別に警戒しているわけじゃないんですけれども、例えば自分の子供にそこに必ず参加しなさいというようなビラを配って、それで明らかに投票勧誘に当たるようなことをやったとすれば、生徒に、それは当たる場合もあるんですけれども、今おっしゃられている例は基本的には私は当たらないだろうというふうに思います。
それから、福岡高等裁判所の判決というのは、これ。要するに、○○大学教授といった肩書きを名乗ったからといって、「一個人として一般人と同様の選挙運動をすることは何ら制限されない」ということです。
教育者がその教育上の地位に伴う影響力を利用せずに一個人として一般人と同様の選挙運動をすることは何ら制限されるものではなく、たとえ教育者が単にその教育者としての社会的信頼自体を利用した場合でも問題の余地はない。
で、これについても、こんな答弁がありました。
同前
○仁比聡平君 先ほど冒頭、福岡高裁判決を御紹介をしたように、教育者が教育者としての社会的信頼自体を利用した場合、これは何の問題もないと公選法上もされているわけです。公選法上、今処罰をされない、ですから捜査ももちろん始まらない、監視もされない、そういった類型について国民投票の際には規制する、これはあってはならないことだと思いますが、いかがですか。
○衆議院議員(葉梨康弘君) 明確に申し上げます。
国民投票で、今公選法で自由とされているようなものを国民投票の際に規制をするということは考えておりません。