大手企業の所得隠しが相次いで摘発されています。NECの場合は、10人の社員による裏金づくり5億円というオマケまで。
- NECが22億円所得隠し 社員ら不正還流5億円(東京新聞)
- NEC元部長、架空発注で裏金8億円(TBS News-i)
- 日本郵船6億所得隠し、木材輸送巡るリベートも…国税指摘(読売新聞)
- JFE11億円所得隠し 受注工作費、経費に偽装(朝日新聞)
NECが22億円所得隠し 社員ら不正還流5億円
[東京新聞 2007年5月29日 夕刊]パソコン国内最大手のNEC(東京都港区)が東京国税局の税務調査を受け、昨年3月期までの7年間に、約39億円の申告漏れを指摘されたことが29日、分かった。
このうち約5億円については、同社発注のソフトウエア作成業務などをめぐり、同社幹部を含む5部門の社員10人が、取引先を通じて下請け企業に架空発注などを繰り返し、下請け企業から裏金をキックバックさせていたなどとして、同国税局から仮装・隠ぺいを伴う経理処理(いわゆる所得隠し)に課される重加算税の対象と認定されたという。
架空取引に絡み、重加算税の対象と認定されたのは、この5億円を含め計22億円に上った。同社は繰越欠損金があり、追徴課税は発生しなかった。
関係者によると、NECがソフトウエアの作成業務や保守業務、工事などを発注する際、複数部門の社員それぞれが、関係会社を含む複数の取引先に対して、その下請け業者に水増し発注や架空発注をするように指示。NECは取引先の請求に基づき、過大な代金を支払っていた。下請け業者側からは、NECの社員側に水増し分をキックバックさせていたという。
不正経理は同国税局の税務調査の中で発覚。不正は判明分だけで、7年間で総額約22億円に上った。裏金を受け取った社員らは、飲食費や接待費に使っていたという。
同国税局はNECが支払った水増し分の経費性を否認、税法上の交際費に当たるとして、重加算税の対象としたという。
同社は調査チームを設け実態解明を進めているが、同社関係者は「社員個々の不正で、部門全体に広がるような組織的な不正は、今のところ見つかっていない」という。不正を行った社員については懲戒解雇を含む処分を行っており、刑事告訴や損害賠償請求を検討中という。
同社は1899年の設立で、昨年3月期の売上高は2兆3700億円。昨年には、同社子会社のNECエンジニアリングの社員が、取引先と架空売り上げや架空仕入れを繰り返し、売上総額363億円の架空取引が発覚している。
NECコーポレートコミュニケーション部は「不正取引が発生したことは誠に遺憾で、深くおわび申し上げます。再発防止を徹底していく」と話している。
裏金の総額は5億円だと報道されていますが、なぜかTBSのニュースだけは8億円になっています。なぜでしょう?
NEC元部長、架空発注で裏金8億円
[TBS News-i 5月29日11:24]大手電機メーカー「NEC」の元部長が、子会社に架空の発注をする手口で、およそ8億円の裏金を作っていたことが分かりました。これを含め、NECでは複数の部署で不正経理が発覚し、東京国税局からおよそ23億円の所得隠しを指摘されました。
関係者によりますと、NECでは金融関係の部署の元部長が子会社の「NECフィールディング」経由で、下請け会社に架空の発注をしてキックバックを受け取り、およそ8億円の裏金を作っていたということです。
また、別の医療関係の部署では、銀座の高級クラブでの接待費を下請け会社に肩代わりさせる見返りに、業務を発注していたということです。
NECでは、こうした不正経理が5つの部署で発覚。東京国税局は、経費として計上されていた分を「交際費」と認定し、去年の3月期までの7年間でおよそ23億円の所得隠しを指摘しました。申告漏れの総額は40億円近くにのぼります。
NECでは、不正経理をしていた社員およそ10人の刑事告訴も検討していて、「深くお詫び申し上げ、再発防止を徹底したい」とコメントしています。
日本郵船6億所得隠し、木材輸送巡るリベートも…国税指摘
[2007年5月30日12時51分 読売新聞]海運最大手「日本郵船」(東京都千代田区)が、業務を委託した荷受業者からの割戻金を意図的に収入に計上しなかったなどとして、2006年3月期までの7年間に計約6億円の所得隠しを東京国税局から指摘されていたことが分かった。
隠したとされる所得には、マレーシア・サラワク州からの木材輸送を巡り、同州首相の弟らに贈ったリベート約1億9000万円も含まれているという。経理ミスも含めた申告漏れは総額約45億円に上り、同社は重加算税を含め法人税など約15億円を追徴課税(更正処分)された。
関係者によると、同社は、荷受業者に支払った費用からバックされた割戻金約4億円を、同社の収入に計上していなかった。同国税局は、意図的に収入から除外していたと認定した。
これとは別に、同社は、日本の海運各社とサラワク州の木材輸出を管理する現地会社「デワ・ニアガ・サラワク」が結んだ協定に基づき、輸送業務の仲介料を香港のブローカー会社に支払っていた。しかし、ブローカー会社に仲介業務の実態がないことなどから、同国税局は、仲介料は同州首相の弟でもあるデワ社代表らへの贈答にあたり、経費とは認められないと判断。日本郵船が01年までの3年間に払った手数料計約1億9000万円について、所得隠しを指摘した。
日本郵船広報グループの話「国税当局との解釈の違いはあるが、指摘には従う」
JFE11億円所得隠し 受注工作費、経費に偽装
[asahi.com 2007年05月30日15時03分]JFEグループの「JFEエンジニアリング」(東京都千代田区)など数社が東京国税局の税務調査を受け、06年3月期までの計7年間で計約11億円の所得隠しを指摘されたことが分かった。談合で落札した工事をめぐり、受注をあきらめた業者に支払う「降り賃」や受注工作費などを経費に見せかけた分が交際費と認定されるなどしたとみられる。グループ全体の追徴税額は、重加算税を含めて約9億円になるという。
JFEエンジニアリングが9億円前後の所得隠しを指摘されたほか、JFEスチール(同)も設備投資をめぐって約2億円の所得隠しを指摘されたとみられる。
関係者によると、JFEエンジニアリングはし尿処理施設や水門など各地の公共工事などで談合。「降り賃」を外注費に見せかけて支払っていたほか、受注工作費や関係者への謝礼なども同様に経費に見せかけていたという。国税局は外注工事の実態がなかったことなどから、「交際費」と認定した模様だ。
JFEエンジニアリングをめぐっては、各地の自治体が発注したし尿処理施設の入札をめぐる談合事件でも、昨年5月、大阪地検特捜部に社員が独占禁止法違反容疑で逮捕されるなどしている。
持ち株会社のJFEホールディングスは「税務調査を受けたのは事実。受領した更正通知書を精査の上、適正・誠実に対応します」とコメントした。