共同通信憲法取材班がまとめた『「改憲」の系譜 9条と日米同盟の現場』。僕は、この手の問題で、これまでどういうことが明らかになっていて、今回の取材でどういうことが新しく解明されたのか、といったことにあまり詳しくないので、細かいことはよく分かりませんが、それでも、第2章「制服組の台頭」を読むと、制服組があからさまに政治に関与し始めていることに恐ろしささえ感じます。
また、第1章「9条を超える同盟」では、湾岸戦争からイラク戦争、そしてイラク戦争後の自衛隊の派遣、そして現在の米軍再編とミサイル防衛までの動きが追いかけられ、第4章「改憲の水脈」では、もっとさかのぼって吉田内閣以来の日米の軍事的同盟強化の動きが「改憲の水脈」としてたどられています。そのなかでは、自民党政治家や外務省、防衛庁の幹部たちが「能動的に」対処していったことがいろいろ書かれています。
しかし、そういう「能動性」が、つまるところ、「初めに日米同盟ありき」という枠組みに立って、いかにアメリカの要求に答えていくか、という点での「能動性」でしかなかったことが、よく分かります。
「同盟国なんだから」「アメリカの要求なんだから」という前提から出発し、それ以外の発想など初めからありえないという、この国の対米従属の深さに、あらためて呆れるしかありません。
執筆は、堤秀司(つつみ・ひでし)編集局企画委員、豊田祐基子(とよだ・ゆきこ)記者。
【書誌情報】
著者:共同通信社憲法取材班/書名:「改憲」の系譜 9条と日米同盟の現場/出版社:新潮社/発行:2007年5月/定価:1400円+税/ISBN978-4-10-304751-3
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