「新しい歴史教科書をつくる会」が、これまで、「新しい歴史教科書」を発行してきた扶桑社から絶縁され、新たな発行元を探すことを発表。他方、扶桑社は、「日本教育再生機構」理事長の八木秀次氏や、屋山太郎氏、三浦朱門氏などによる新しい執筆陣で、教科書発行を続けることに。
ま、教科書攻撃の「主役交代」で、執筆陣の入れ替えがおこなわれるということです。
つくる会、別の発行元探す 「教科書改善の会」も発足へ(産経新聞)
つくる会、別の発行元探す 「教科書改善の会」も発足へ
[産経新聞 2007/05/31 19:16]扶桑社の中学歴史・公民教科書の執筆にかかわった「新しい歴史教科書をつくる会」は31日、記者会見し、小林正会長を解任し、藤岡信勝副会長を新会長に選出したと発表した。扶桑社から関係解消を通告されたため、別の発行元を探すとしている。
一方、扶桑社の教科書の次回検定申請に向けて「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(教科書改善の会)が発足することが分かった。
政治評論家の屋山太郎氏が代表世話人となり、三浦朱門元文化庁長官らが世話人に名を連ねている。伊藤隆東大名誉教授、八木秀次日本教育再生機構理事長ら歴史・公民の専門学者や現場教師の執筆による改訂版作成を目指す。
↓こっちは、「つくる会」のニュース。これを読むと、扶桑社は教科書発行のための別会社をつくることのようですが、その背景として、教科書部門で大赤字を出したことを上げています。採択反対の声が広がって、「つくる会」教科書の採択率が非常に悪かったことが反映しているといえます。
平成19(2007)年5月25日
扶桑社との交渉結果の報告すでにお知らせした通り、「新しい歴史教科書をつくる会」は、5月10日の理事会において、「教科書発行に関する『つくる会』の見解」を決議しました。決議では「つくる会」との従来の関係を解消し、「新しい酒は新しい皮袋に」という「今回の扶桑社の提案は受け入れることはできません」と明記しつつ、「扶桑社の再考を求めます」と述べました。
この決議に基づき、扶桑社の最終的回答を得るため、5月17日、小林会長と高池・福地・藤岡の3副会長が扶桑社におもむき、扶桑社を代表して(片桐社長は出張のため)朝倉取締役と久板取締役が応対し会見しました。会見には社員の真部氏も同席しました。この会見の結果、扶桑社として、従来の枠組みに戻すことを「再考」する余地のないことが確認されました。また、版権の移動について今後協議することになりました。つくる会と扶桑社の二人の重役の主な発言は次の通りです。つくる会 つくる会の会員は10年間、扶桑社の名前で関係者に訴え続けてきた。その無形の財産を放棄してまで別会社をつくるのはなぜなのか。こういう会員の強い疑問があるのでお答えいただきたい。
扶桑社 我々の基本的な姿勢は、2月26日の回答に書かれていることが全てだ。これに賛同していただける幅広い方々と作業していくということで一切変わっていない。
つくる会 回答は会員はみな読んでいるが、なぜ扶桑社が3億円もかけて別会社をつくるのか、その理由がわからない。
扶桑社 3億円は継続発行する場合でもそのくらいの経費がかかる。別会社にするのは、純経済的な理由だ。前回と同じ採択結果では、巨額の赤字を教科書事業部で出すことになる。それが扶桑社の中にあると、どの程度の赤字なのかが不明瞭になる。なぜ赤字を出してまでやらなければならないのか、という社員の中の不満がある。だから、別法人にして、教科書事業の採算がどういうものなのかを明確にする必要がある。
つくる会 教科書は現にあるわけだから、これをそのままお金をかけないで出す方がいいのではないか。
扶桑社 また同じものを出して、今の採択結果では、採算、ビジネスとして困る。
つくる会 西尾・藤岡をはずし、教育再生機構側の人を責任者にするのは理解できない。教育再生機構が組織としてつくる会の教科書に発言する権利はない。
扶桑社 2回目の検定を通った教科書をそのまま3回目にも出すというなら、それはそれで結構だが、私たちはそれは取らない。それなら、扶桑社として、極論をいえば、どこかの出版社から出してもらいたい。
つくる会 結局、中味が悪いから採択率が低かったと判断されているようだが、間違いだ。扶桑社としては、つくる会との関係を従来の2回の採択の時の状態に戻すということについて、再考の余地はないという風に受け止めてよいか。
扶桑社 はい。
つくる会 『新しい歴史教科書』の版権の移動について改めて相談にうかがいたい。
扶桑社 結構です。以上
【追記】
見逃してましたが、同時に、「つくる会」の会長がまたまた交代。藤岡信勝氏が会長になったそうです。
小林正前会長は、昨年7月17日、八木秀次氏らが立ち上げた「日本教育再生機構」の発足イベントに出席し、あいさつしていました。それが会長交代の理由なんですかねぇ…
「つくる会」ニュースによれば、5月30日に評議会が開かれ、扶桑社からの関係打ち切り通告を認めざるを得ないことを確認した後、小林会長の「解任動議」が出され、可決。しかし、「小林会長に辞任の意思があれば辞任による退任を優先する」ことになったが、「その後、小林会長に辞任の意思がないことが判明し、会長並びに理事の解任が確定」したとのことです。
しかし、「その後」というのも奇妙な話で、まるで会長は出席していなかったかのような書きっぷり。また、小林氏自身は、会長辞任を拒否したわけで、またもや「つくる会」お得意のドロドロ解任劇が繰り広げられたようです。
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