「日経新聞」夕刊に、でかでかと「可処分所得1%増」という記事が出ていました。
しかし他方で、総務省調査の「家計調査報告」によれば、2007年4月の勤労者世帯の可処分所得は前年同月比0.4%減で、6カ月ぶりのマイナスになったそうです。実際、2006年後半からは勤労者世帯の実収入・可処分所得が伸びを見せていましたが、それもそろそろ腰折れでしょうか。地方財源移譲にともなう「先行減税」も6月で終わり、さらに定率減税の打ち切りで、「消費息切れ」の可能性を危ぶむ声も出ています。
可処分所得1%増加・06年度、97年度以来の高い伸び(NIKKEI NET)
「減税先行」効果、今月限り 消費息切れ、利上げに影響も(FujiSankei Business i.)
↓こちらが総務省の家計調査報告。
家計調査報告(2007年4月分速報):総務省
可処分所得1%増加・06年度、97年度以来の高い伸び
[NIKKEI NET 2007/06/05 16:01]賃金に配当や利子収入などを加えた家計の「可処分所得」の増勢が鮮明になってきた。日銀の分析によると、2006年度の可処分所得合計は前年度比1%増の293兆1600億円程度となり、1997年度以来の高い伸び率となる見込みだ。緩やかながら雇用者報酬が伸びていることに加え、過去最高となった配当所得が家計を潤している。
前年度を上回るのは3年連続。経済のグローバル化で企業は賃金の国際競争を意識しており、業績好調下でも付加価値に占める人件費の割合(労働分配率)は抑制されている。一方で増配などによる株主還元は増えており、「従業員より株主を重視する」といった批判もある。今回の分析は家計が「従業員と株主の両方の側面を持つ」ことも示している。
日銀によると、06年度の雇用者報酬は263兆5600億円程度で、前年度比1.5%増となる見通し。利子や配当など財産所得の収支は前年度比18.1%増の11兆6000億円で、3年連続で増加する見込みだ。定率減税の廃止に伴い税負担は11.3%も増加するが、増税効果をこなして可処分所得が増えていることになる。
増え方が顕著なのが配当所得で、06年度は24.2%増の9兆2400億円と過去最大。雇用者報酬に比べると小さいが、企業収益が配当という経路を通じ家計に流入する傾向が強まっている。利子所得は利上げの影響もあり減少に歯止めがかかり、06年度は前年度と横ばいの3兆200億円。今回の分析は、「企業部門の好調が家計に波及し、個人消費は緩やかに増加する」とする日銀のシナリオを補強する材料になる可能性もある。
日経のこの記事の出所は、日銀が5/1に発表した「経済・物価情勢の展望(2007年4月)」のようです。
経済・物価情勢の展望(2007年4月):日銀(pdfファイル)
「減税先行」効果、今月限り 消費息切れ、利上げに影響も
[FujiSankei Business i. 2007/5/30]個人消費が回復軌道を外れ、夏以降に息切れする懸念が浮上してきた。税源移譲の影響で一時的に軽減されていた家計の税負担が6月から元に戻り、消費を冷やすとみられるためだ。市場では「日銀が夏場から秋口にかけて第3次利上げに踏み切る」との見方が強いが、消費の減速が政策判断の足かせとなる可能性もありそうだ。
2007年1?3月期の実質GDP(国内総生産)によると、全体の5割強を占める消費は前期比0.9%増で、2期連続のプラス。設備投資などが落ち込む中、内需最大の牽引(けんいん)役となった。29日発表の4月家計調査でも家計の消費支出は4カ月連続でプラスだった。
この背景として指摘されるのが三位一体改革に伴う国から地方への税源移譲だ。移譲に際しては国税の所得税を1月に下げた後、地方税の住民税を6月に上げるという手順を取るため、1月から5月までは家計の税負担が軽くなっている。これが「一時的に可処分所得を増やし、消費を押し上げた」(木内登英・野村証券シニアエコノミスト)との見方が有力だ。
しかし、6月以降はこの「減税先行」効果がなくなる。野村証券は税源移譲による1?3月期の消費押し上げ効果を0.4%と試算しているが、4?6月期は0.1%に縮小。7?9月期には0.4?0.5%の押し下げ効果が生じ、消費の伸びを抑えると予想する。
日銀は「(1?3月期の)個人消費は比較的しっかりしている」(福井俊彦総裁)とみて先行きも楽観視しているが、木内氏は「1?3月期の動きを見て本格的な拡大局面に入ったと判断するのは早い」と指摘。消費回復には賃金上昇による可処分所得の増加がポイントになるとみている。