新聞に全面広告を出す前に

最近、やたらに「地球温暖化」対策が取り上げられると思ったら、今日の新聞には、安倍首相と昭恵ちゃんの全面広告が…。「地球温暖化」は確かに大きな問題だけれども、これじゃあまるっきり安倍政権と自民党の宣伝です。

省エネ家電買い替え効果 家庭のCO2 4割減可能(東京新聞)
(社説)温室ガス半減 議定書履行から始めねば(山陽新聞)

というのも、首相は、ドイツサミットを前に「2050年までに温室ガスの排出を半減する」ことを世界共通の目標にする、とぶちあげているけれども、足元を見ると、日本は、「京都議定書」の目標を守れないどころか、排出量は1990年比で増加し続けている。これに手をつけられないままで、「2050年までに半減」と言っても、たんなるポーズに終わってしまうだけ。それどころか、話をポスト「京都議定書」に移してしまって、目標未達成の責任も棚上げしてしまうつもりなのではなかろうか。

では、「京都議定書」の目標は実現不可能かというと、ドイツは、2003年末までに温室効果ガス排出量を1990年比で18.5%も削減している。ドイツに出来て、なぜ日本に出来ないか――そこらあたりから、しっかり反省するのがまず第一だと思う。

「省エネ家電買い換えでCO2 4割削減可能」と言われても、その省エネ家電を製造するために発生するCO2や、古い家電の処理のためにつかうエネルギーはどうするつもりなんだろう?と思ってしまう。ちなみに、ドイツの場合、家庭で温室効果ガス削減の中心は、断熱効果の強化、暖房設備の改善など。日本でも、そこらあたりから見直す必要があるのではないだろうか。

ドイツの実績についてはこちら↓。
2050 年までを視野に入れたドイツの地球温暖化対策(NEDO海外レポート No.964) ※pdfファイルが開きます

省エネ家電買い替え効果 家庭のCO2 4割減可能
[東京新聞 2007年6月5日 夕刊]

 政府は五日の閣議で2007年版の環境・循環型社会白書を決定した。地球温暖化対策について、家庭でも家電を省エネ性能の優れた製品に買い替えることで二酸化炭素(CO2)排出量を一世帯当たり最大で四割以上削減できるとの試算を示し、省エネ技術の開発、普及の重要性を強調した。
 安倍晋三首相は主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)に向け「世界全体の温室効果ガスの排出量を現状から2050年までに半減する」などの目標を掲げた政府方針「美しい星50」を発表。
 省エネ技術を生かした環境保全と経済発展の両立を打ち出し、温室効果ガス削減の国民運動を提案している。
 白書では、温暖化について「人類社会が破局に突き進む時計の針を止めるため、対策の加速が喫緊の課題」と強い危機感を表明。
 その上で、電気自動車の実用化につながる高性能の蓄電池など将来に向けた技術開発を進めると同時に、「既存の技術を社会の隅々にまで行き渡らせる」必要性を訴えた。
 効果の具体例として家庭内でテレビ、冷蔵庫など家電すべてが買い替え時期を迎えて一斉に省エネ家電と交換したとすると、CO2排出量は夫婦と子ども二人の世帯で44%、夫婦二人の世帯で42%、独身者が結婚して二人世帯になった場合でも8%、それぞれ削減できるとの試算を紹介している。
 また、廃棄物のリサイクルなどを推進する技術についても、新たに消費する天然資源を節約でき、CO2排出削減につながると指摘。アジアを中心に廃棄物が増える中、日本はノウハウを提供し、国際協力の中心になるべきだとしている。

<メモ>地球温暖化の影響 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書は、今後も化石燃料に依存しつつ高い経済成長を実現する社会では、今世紀末に平均気温が1990年比最大6.4度上昇すると予測。3度以上の上昇で農業生産が減少に転じ、1.5?2.5度を超える上昇で動植物の20?30%は絶滅の危険性が高まるとされる。
 ただ、適切な対策により、温室効果ガスの排出量を、2050年に2000年比で半減し影響を緩和できるとしている。

社説:温室ガス半減 議定書履行から始めねば
[山陽新聞 2007年5月27日掲載]

 安倍晋三首相は、地球温暖化問題の解決を目指す政府方針「美しい星50」を発表した。世界の温室効果ガスの排出量を2050年までに半減するとの長期的な目標を掲げ、京都議定書に定めのない13年以降の国際的枠組みづくりをリードする狙いがある。
 排出量半減は、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第3作業部会が今月初めに出した報告書でも提案されており、50年に達成すれば気温上昇は二度程度にとどまり、温暖化の被害を最小限に抑えることができるとされている。
 このため政府方針では、火力発電での二酸化炭素排出ゼロ化の国際プロジェクトや先進的原子力発電技術の開発、自然との共生や公共交通機関利用などを重視した「低炭素社会づくり」を目指す。
 注目されるのは、「京都議定書を超え、世界全体が参加する新たな枠組み」の必要性を強調していることだ。
 世界的な温暖化防止対策の第一歩となった京都議定書は、世界最大の排出国である米国が離脱し、米国に次ぐ排出国である中国、日本に次いで五位のインドが「途上国」として削減義務がないなどの欠陥が指摘されてきた。
 政府方針では、ポスト京都で米国、中国、インドなど主要排出国すべての参加を掲げ、世界全体で削減を目指すとした。また経済成長と排出削減を同時に実行しなければならない途上国に資金援助の仕組みを構築することに触れている点は評価できよう。
 日本は京都議定書で、08年から12年までの約束期間に1990年比で6%の排出削減を約束したが、05年度は逆に8.1%増えた。このため政府方針では、07年度に現在の政府計画を抜本的に見直すことや、「1人1日1キログラム」削減を掲げて家庭や職場で国民運動を展開することを打ち出している。地球温暖化対策推進法も改正の方向だ。
 しかし、目標の達成は難しい。車を中心とした社会の在り方やエネルギー消費型の生活まで変えていく覚悟が必要となろう。並大抵の対策ではおぼつかない。
 安倍首相は、政府方針を6月の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)で各国首脳に提案し、日本が議長国となる来年の北海道洞爺湖サミットでさらに具体化する方向だという。
 首相にすれば、環境と外交で存在感を発揮することで、夏の参院選対策とする思惑もありそうだ。だが京都議定書の排出削減の約束が履行できないまま、新たな提案を行っても世界の信頼は得られない。まず足元を固めたい。

新聞に全面広告を出す前に」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 不条理日記

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