久間防衛相の原爆投下は「しょうがない」発言。久間防衛相も、7月1日になっても、発言そのものは「訂正する必要はない」と言っていましたが、批判や抗議の高まりを前に、その日のうちに事実上、発言を撤回。
また安倍首相は、当初ははっきりと「問題ない」との立場を表明したにもかかわらず、今日になって厳重注意に。しかし、その理由は「誤解を与える発言」をしたというだけ。原爆投下はやむを得なかったという認識そのものについては、反論もお咎めもなし。
原爆で終戦早まる、「しょうがないな」と久間防衛相(読売新聞)
防衛相「原爆投下はしょうがない」 大学の講演で(産経新聞)
中日新聞:「米国の考え方を紹介」 首相、問題ないとの認識(中日新聞)
原爆投下そのものは許せない=久間防衛相(朝日新聞)
原爆発言、事実上撤回=「大変申し訳ない」と陳謝?久間防衛相(時事通信)
久間防衛相会見の要旨 説明の仕方がまずかった(中国新聞)
ということで、関連ニュースを時系列で並べておきます。
原爆で終戦早まる、「しょうがないな」と久間防衛相
[2007年6月30日19時3分 読売新聞]久間防衛相は30日、千葉県柏市の麗沢大学で講演し、1945年8月に米国が広島と長崎に原子爆弾を投下したことで昭和戦争の終戦が早まったと指摘した上で、「間違えると北海道までソ連に占領されていた。原爆も落とされて長崎は本当に無数の人が悲惨な目にあったが、『あれで戦争が終わったんだ』という頭の整理でしょうがないなと思っている」と述べた。
米国に対しては、「勝ち戦と分かっているときに原爆まで使う必要があったのかという思いがするが、アメリカは恨んでいない。国際情勢や占領状態からすると、そういうことも選択としてあり得る」と語った。
久間氏は講演終了後、発言の真意について「当時の日本政府の判断が甘く、終戦が遅れるとソ連に占領されていた可能性があったことを指摘しただけだ。原爆を肯定したわけではない」と記者団に説明した。
防衛相「原爆投下はしょうがない」 大学の講演で
[Sankei WEB 2007/06/30 22:19]久間章生防衛相は30日、千葉県柏市の麗澤大学で講演し、昭和20年8月9日の米国による長崎への原爆投下が、終戦を早め、旧ソ連による北海道侵攻を防いだとの認識を示した上で「原爆を落とされて本当に悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったのだと、そういう頭の整理で今、しようがないなと思っている」と語った。
久間氏は長崎県出身だが、「(米国は)日本が負けると分かっているのに、あえて広島と長崎に原爆を落とした。長崎に落とすことで日本が降参し、ソ連の参戦を止めることができると思ってやった」と指摘。その結果として戦後、日本が自由主義陣営に加わり、日米安全保障条約を結んだことを「わが国にとって良かった」と述べた。
久間氏の発言に対し、野党側は鳩山由紀夫民主党幹事長が「日本国民としてとても許せない。大臣をやっている資格はまったくない」と語るなど一斉に反発し、罷免要求を含めて政府を攻撃する材料とする構えだ。
安倍晋三首相は香川県丸亀市での会見で「米国のそのときの考え方を紹介すると同時に、原爆の惨禍の中にあった長崎について、『自分としては忸怩(じくじ)たるものがある』という考え方も披瀝(ひれき)されたと聞いている」と語り、問題はないとの認識を示した。
久間氏は発言に批判が出ていることについて「原爆を落とすのを是認したように受け取られたのは残念だ」と記者団に語った。防衛相の発言要旨
日本が戦後、ドイツのように東西で仕切られなくて済んだのはソ連が(日本に)侵略しなかった点がある。米国はソ連に参戦してほしくなかった。日本に勝つのは分かっているのに日本はしぶとい。しぶといとソ連が出てくる可能性がある。
日本が負けると分かっているのにあえて原爆を広島と長崎に落とした。長崎に落とすことで日本も降参するだろうと。そうすればソ連の参戦を止めることができると(原爆投下を)やった。
長崎に落とされ悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で、しょうがないなと思っている。米国を恨むつもりはない。
勝ち戦と分かっている時に原爆まで使う必要があったのかどうかという思いは今でもしているが、国際情勢、戦後の占領状態などからすると、そういうことも選択としてはあり得るのかなということも頭に入れながら考えなければいけない。
「米国の考え方を紹介」 首相、問題ないとの認識
[中日新聞 2007年6月30日 19時51分]安倍晋三首相は30日夕、久間章生防衛相が長崎への原爆投下を「しょうがない」と発言したことについて「米国の(当時の)考え方について紹介したと承知している」と述べ、問題はないとの認識を示した。香川県丸亀市で記者団の質問に答えた。
被爆者への配慮を欠いたのではないかとの質問に対しても「(久間氏は)原爆の惨禍に遭った長崎についてじくじたるものがあると、被爆地の考え方についても言及されていると聞いている」と述べた。
その上で首相は「いずれにせよ、核を廃絶していくのが日本の使命であり、国連においても日本は主導的な役割を果たしている」と核廃絶を求める日本政府の立場に変わりはないと強調した。(共同)
原爆投下そのものは許せない=久間防衛相
[asahi.com 2007年07月01日12時44分][東京 1日 ロイター] 久間章生防衛相は1日、フジテレビの報道番組で、第二次世界大戦での米国の原爆投下に関し「原爆投下そのものは許せない」との認識を示した。
また、6月30日の講演での一連の発言を「訂正する必要はないと思う。誤解されているところがあるとすれば説明が必要で、それは私の説明責任」と強調、自身の進退について「そのような内容ではない」と述べた。
同氏が30日の講演で米国の原爆投下を巡り、「しょうがない」と発言したことに対し、野党などから批判が相次いでいる。1日のテレビ朝日の番組に出演した中川昭一自民党政調会長は「私の考えとは違う」としたうえで、「久間氏にきてもらって、真意を聞いてみたい」と話した。
原爆発言、事実上撤回=「大変申し訳ない」と陳謝?久間防衛相
[時事通信 2007/07/01-17:25]久間章生防衛相は1日昼、長崎県島原市内のホテルで記者会見し、米国の広島、長崎への原爆投下を「しょうがない」とした自身の発言について「これから先、一切そういうこと(発言)はしない」と述べ、事実上撤回した。さらに「長崎、広島、全国の皆さんに大変申し訳なかったという気持ちだ」と陳謝した。久間氏の発言に関し与党内でも参院選への悪影響を懸念する声が強まったため、事態の早期収拾を図った形だ。
久間氏は会見で「米国は米国としてそういう選択(原爆投下)を、戦争を終わらせるためにしたんだなという感じで言った。その言葉が非常に誤解を生んでいる。ああいう言葉を使うこと自体がいけなかった」と述べ、発言が不適切だったと認めた。
その上で「一貫して核兵器は使ってはならないという姿勢は微動だにしていない。決して米国の原爆(投下)を是認したわけではない」と表明。「米国を恨んでいるかといえば、恨んでいない。ああいうことを2度と起こさないでもらいたい。日本も先頭に立って世界の核兵器廃絶に向けて努力したい」と述べた。
久間氏はこれに先立つフジテレビの番組では、自らの発言を訂正しない考えを示した。これに対し同じ番組で、自民党の中川昭一政調会長は「謝罪すべきところは謝罪した方がいい」と指摘。公明党の斉藤鉄夫政調会長も「日本国民の神経を逆なでする発言だ。訂正していただきたい」と求めた。
久間防衛相会見の要旨 説明の仕方がまずかった
[中国新聞 7月1日20時46分更新]久間章生防衛相の長崎県島原市内での会見要旨は次の通り。
私は一貫して核廃絶、核兵器は使ってはならないという姿勢は微動だにしていない。それを前提に話しているつもりでも、いろいろと説明すればするほど混乱を招いているようなので、はっきり申し上げたい。決して米国の核、特に広島、長崎に落とした核爆弾を是認しているわけではない。いまだにけしからん話、許せないという気持ちは持っている。
これから先は講演でやったような話はしない。ああいう報道のされ方をするのは私の言い方にもまずい点があった。全国の国民、被爆者の方に、さも被爆者を軽く見ているかのような印象を取られたとすると申し訳なかったという気持ちだ。
わが国はソ連に米国との仲介をお願いしたが、ソ連が参戦することに米国が気付いて原爆まできてしまったという背景を説明して、相手の意図を見抜かないといけないと言いたかったが、それが原爆を認めたと受け取られてしまった。私の説明の仕方がまずかった。
(与党から)真意を聞きたいという話が出ている。自民党、公明党のしかるべきところに話をしたい。
↑ちなみに、アメリカが広島、長崎に原爆投下を強行した背景として、ソ連の対日参戦前に戦争を終了させたかった、あるいは、ソ連参戦を見越して、その前にアメリカの優越的地位を示しておきたかったという意図があったと言われていますが、久間発言の「ソ連が参戦することに米国が気付いて原爆まできてしまった」というのは全くの間違い。ソ連の対日参戦そのものは、ヤルタ会談(1945年2月)で合意済みです。
安倍首相、久間防衛相を厳重注意=罷免要求は拒否
[時事通信 2007/07/02-13:28]安倍晋三首相は2日午前、首相官邸で久間章生防衛相と会い、日本への原爆投下を「しょうがない」と発言した問題に関して「長崎、広島の被爆者の気持ちを傷つけることがあってはならない。誤解を与える発言は厳に慎んでもらいたい」と厳重に注意した。首相は会談後、野党による罷免要求について「反省の上で、核軍縮などに向けて努力してもらいたい」と記者団に述べ、応じない考えを強調した。
会談で、久間氏は「大変誤解を与える発言で特に被爆者に申し訳なく、撤回しておわびする。内閣にも迷惑を掛けた」と陳謝した上で、「これから先、注意していく」と答えた。首相は「日本は唯一の被爆国で大変な被害を受けた。日本の目指すべきは核の廃絶、軍縮であり、その責任を果たしていかなければいけない」とも語った。会談後、久間氏は野党の要求を「よくあることだ」と記者団に受け流した。