大手人材派遣会社のフルキャストが、短期派遣労働者の給料から天引きしていた「業務管理費」を過去にさかのぼって全額返還することを決定。
「情報管理料」として同様に給料から天引きしていたグッドウィルは、返還は2年間分に限るとしています。この「2年間」というのは、未払い給料の時効期間ですが、これはあくまで労働者側から請求する権利という意味。だからといって、企業側が2年間分以上は返さなくていい、ということではありません。商行為にともなう債権の消滅時効は5年、民法上の債権の消滅時効は10年です。
フルキャスト 天引き額返還へ
[NHKニュース 7月7日 4時59分]大手人材派遣会社「フルキャスト」は、派遣労働者の賃金から保険料などの名目で天引きしていた金について、働いた人に全額を返す方針を決めました。
フルキャストはことし2月まで、短期の派遣労働者の賃金から、1回の勤務に付き250円を保険料や安全用品の購入などに充てる「業務管理費」として天引きしていました。労働基準法では、賃金から天引きを行う場合は、労働者と協定書を交わすことになっていますが、派遣労働者で作る組合「派遣ユニオン」は「事実上、強制的な天引きで、使いみちもはっきりしない」として返金するよう求めていました。
これについて、フルキャストは6日、東京都内で組合側と団体交渉を行い、天引きした金を働いた人に全額返す方針を示しました。会社側によりますと、派遣労働者として登録した人はこれまでに延べ100万人を超え、返金額は最大で数十億円に上る見通しだということです。来月から3か月間、専用の窓口を設けて、申告してきた人に返金するということです。これについて、フルキャストは「天引きは強制ではなかったが、労働者から返金を求める声が高まったので返すことにした」と話しています。
派遣労働者の賃金からの天引きをめぐっては、大手人材派遣会社「グッドウィル」も過去2年間に限って労働者に返金する方針を明らかにしています。これに対して、派遣ユニオンは全額を返すべきだとして、グッドウィルに対して裁判を起こすことを検討しています。
で、↓「朝日」によると、厚生労働省が業界指導にのりだすようです。フルキャストの対応も、これにあわせたものなのかも知れません。
日雇い派遣の不透明天引き、業界を一斉指導へ 厚労省(朝日新聞)
日雇い派遣の不透明天引き、業界を一斉指導へ 厚労省
[asahi.com 2007年07月07日03時03分]日雇い派遣での不透明な天引き問題で、厚生労働省は業界の一斉指導に乗り出す。全国の労働基準監督署を通じて派遣会社を調査し、返還に応じないなどの悪質事例には司法処分を含め厳正に対処する。返還対象者は業界全体で150万人を超え、金額も100億円を上回るとみられる。一方、大手のフルキャスト(東京都渋谷区)は6日、天引き分の全額を返還する方針を表明した。
厚労省は6月下旬、全労働局に通達を出し、東京の三田労基署が大手グッドウィル(東京都港区)を指導した結果、天引きの返還につながったと説明。「ほかでも行われていることが懸念される」として、各派遣会社の本社を速やかに調査し、天引き理由がはっきりしない場合は返還を指導するよう求めた。東京や大阪など大手の派遣会社を受け持つ労働局は、通達を受けて立ち入り調査の準備を進めている。
日雇い派遣業界の実態は厚労省も把握できていないが、グッドウィルとフルキャストの大手2社だけで登録スタッフ総数は400万人を超えており、返還の対象者は2社で150万人弱、80億円以上と予想される。大手の幹部は「ほとんどの会社が天引きしていた」と話しており、テイケイワークス(東京都新宿区、登録スタッフ20万人)など準大手も含めれば、業界全体の返還対象者はさらに膨らみそうだ。