財界は、参院選での安倍自民・公明政権の歴史的大敗をどう見ているのか。日本経団連御手洗冨士夫会長、経済同友会桜井正光代表幹事、日本商工会議所山口信夫会頭のコメントを眺めてみました。
記者会見における御手洗会長発言要旨 (2007-07-30):日本経団連
第21回参議院選挙の結果について:経済同友会
参議院議員選挙結果について(2007/07/29):日本商工会議所
共通して言えるのは、次のような点。
- 今回の安倍政権、自民・公明連合の歴史的大敗を、年金記録問題や、閣僚の失言、不祥事などによるものとして、安倍内閣そのもの、あるいは小泉内閣以来の「改革路線」にたいする有権者の「ノー」だとはは見ない。
- そして、日本は「喫緊の課題が山積」「日本の将来を左右する重要課題が山積」しているとして、「国政の停滞は許されない」として、「改革」路線の継続と安倍内閣の居座りを求めている。
- 民主党にたいしては、「責任政党」としての立場を求める。
ここには、「東京新聞」大波小波が指摘したような、「企業利益優先の成長路線」を政府に求めてきた財界の路線にたいする反省はまったく見られない(→「参院選、有権者は何を選択したか(2)」参照)。
そして、「第一党」になった民主党にたいして、「責任政党」とか「実現可能性のある政策」とかの名目で大企業中心の政治の継続を求め、言ってみれば「保守第2党」としての役割をきちんと果たすように求めている。民主党が、この財界の要求に従って行動するのか、それとも有権者から託された「格差と貧困」の政治を何とかしてほしいという願いに応えるのか。そこのところを新しい国会でも、しっかりチェックしていく必要がある。
記者会見における御手洗会長発言要旨
2007年7月30日 (社)日本経済団体連合会今回の参院選は、与党にとって大変厳しい結果となった。閣僚による失言問題、政治とカネの問題、特に年金記録問題が前面に出てしまい、本格的な政策論争が行なわれなかったことは非常に残念だ。
できるだけ早い時期に人心を一新し、国民からみて頼もしい内閣に改造して、挙党一致で信頼を回復すべきである。
日本には喫緊の課題が山積している。安倍内閣は構造改革を着実に進めており、成果を出している。景気も回復している。今回の選挙で、現政権の政策・実績が否定されたわけではない。安倍内閣には引き続き、他国に引けをとらないスピードと勢いで、改革を進めていただきたい。
参院第一党となった民主党には、責任政党として、政策を明確にし国政にあたってもらいたい。
第21回参議院選挙の結果について
2007年7月29日社団法人 経済同友会 代表幹事 桜井 正光
- 今回の結果は、年金記録問題、政治と金の問題などに対する国民の批判の現れだと思う。安倍政権の改革路線を支持してきた立場としては、残念な結果であるが、安倍総理には、国民による厳しい評価を真摯に受け止め、国民の将来への不安と政治不信の払拭に努めていただきたい。
- この先、財政再建の試金石となる2008年度予算編成、公的部門改革、税制抜本改革と持続可能な社会保障制度の構築など、日本の将来を左右する重要課題が山積している。政局の混乱や政治の停滞により、これらの改革が滞るようなことがあってはならない。改革の後退により、再び日本経済が停滞に陥ることを非常に懸念している。与野党ともに、「改革なくして成長なし」という基本方針を改めて確認し、改革の推進に向けた政策を競い合っていただきたい。特に安倍総理は、これら改革の必要性について、改めて国民に説明をするとともに、強いリーダーシップを発揮して、「小さな政府」の実現に向けた構造改革の継続・加速に全力で取り組んでいただきたい。
- 民主党は大躍進を遂げたが、これは主に、安倍政権に対する批判によって、国民の共感を集めた部分が大きいのではないか。今は、国の成長と国民の豊かさを確かなものとするための重要な時期である。衆議院で第二党、参議院で第一党という重責を担う以上、その責任にふさわしく、単なる与党批判から脱して、国民の期待に応える国会運営を行ってほしい。そのためにも、今回の政権公約を踏まえて、目指す国の姿の明確化とより一層具体性・実現可能性のある政策の提示に取り組むことが不可欠である。
07.07.29 参議院議員選挙結果について(日本商工会議所会頭コメント)
与党としては極めて厳しい国民の審判が下ったものと判断せざるを得ない。しかし国民は、現在の経済情勢の下で国政が停滞することを望んではいない。国民の利益を第一に考えて政策運営にあたることを望みたい。
安倍政権は日本の将来や国民生活に必要な法案を成立させてきた実績がある。しかし、年金問題や一部閣僚の失言や不祥事、さらに政治と金の問題など、選挙直前になってマイナス点が大きく影響したように思う。
いずれにせよ政府・与党は、この結果を真摯に受け止め、引き続き経済成長を維持しつつ、地域経済の発展や、しっかりした中小企業対策にも配慮した政策運営に、今後とも重点を置いていただきたい。