「美しい国」と言えなくなった安倍首相

本日の「東京新聞」1面の記事。参院選での歴史的大敗以来、安倍首相は、あれだけ大好きだった「美しい国」というフレーズを一度も口にしていないとか。おめでとうございます。ヽ(^O^)/

首相『美しい国』封印 参院選惨敗後 生活重視に転換(東京新聞)

首相「美しい国」封印 参院選惨敗後 生活重視に転換
[東京新聞 2007年8月17日 朝刊]

 安倍晋三首相が政策の柱としてきた「美しい国づくり」を、事実上、封印した。先月の参院選以来、首相は「美しい国」を一度も口にしていない。この路線が国民に理解されなかったのが参院選敗因の一つだったとの反省から、軌道修正した。首相は国民生活に直結した政策を打ち出すことで再浮上をうかがうが、「美しい国」路線の転換は、政権を支えてきた保守層の安倍離れを誘発する可能性もある。 
 「美しい国」は(1)文化、伝統を大切にする国(2)自由な社会を基本とし規律を守る国(3)世界に尊敬される国――など、保守本格政権を目指す安倍路線のキーワードだった。昨年9月の所信表明演説では「美しい国創(づく)り内閣を組織した」など、計8回も「美しい国」を繰り返した。
 首相はその実現に向け、集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈変更、憲法改正、教育再生といった政策を掲げてきた。しかし、これらは、国民生活に直結しないものが多いため、参院選では「生活が第一」を掲げた民主党に敗れた。
 このため安倍政権は、「美しい国」路線は放棄はしないものの、前面に出すのはやめることにした。9月の臨時国会での所信表明演説でも、1、2回触れるだけにとどめる方針だ。「美しい国」と並ぶキーワードの「戦後レジーム(体制)からの脱却」も、極力使わないようにする。ただ、首相官邸の「美しい国づくり」プロジェクトには、国民から約3000のアイデアが寄せられており、生かせるものは政策として打ち出していく方針だ。

さらに3面の記事によれば、「美しい国」の3本柱である「教育再生」「集団的自衛権行使」「憲法改正」は「すべてピンチ」だそうです。

「教育改革」の目玉の1つとされた「バウチャー制度」については、「参院選では、都市との間に広がる格差に、地方の怒りが吹き出した。……地方の子どもには恩恵が薄いバウチャー制度の導入には、政府も伸張にならざるを得ない」。「集団的自衛権」については、憲法解釈を変えたとしても「自衛隊法改正など関係法を整備しようにも、参院で与党が過半数割れしている現状ではまず無理」。そして、「憲法改正」も「誰よりも会見をめざす首相の存在そのものが、これ〔改憲〕に水を差すという皮肉な事態」とされています。

傑作なのは、「美しい国」にかわるキーワードとして、記者が考えたのが「あなた自身の国」「身の丈の国」「地域目線」。要するに、「国は首相や閣僚のものではなく、国民1人1人のもの」「憲法改正もいいけど、まずは身の丈にあった政治をしてくださいよ」「国民の立場で考えてほしい」というもの。で、結論は「『国』の在り方は、人によって考え方が違う。それに1つの修飾語をつけて理想を語るのは、無理がある」というもの。きわめてごもっとも。

そういえば、広報担当の首相補佐官である世耕弘成氏も、参院選直後に↓こんなことを言っていました。

「美しい国」私も言えませんでした 世耕補佐官も苦言(asahi.com)

「美しい国」私も言えませんでした 世耕補佐官も苦言
[asahi.com 2007年08月03日08時49分]

 「街頭では、とても『美しい国』なんて言えませんでした」。参院和歌山選挙区で当選し、1日から官邸での業務を再開した世耕弘成首相補佐官(広報担当)は、復帰早々に安倍首相に苦言を呈した。世耕氏は「美しい国づくり」国民運動の担当でもあるが、苦しい選挙戦を経て軌道修正を迫ったものだ。
 首相は、地方遊説のたびに「美しい国」をアピールし、「地域の活力なくして国の活力なし」と訴えた。だが、自民党は1人区で6勝23敗と惨敗。あまりの逆風に世耕氏は当選確定後に万歳をせず、「安倍内閣への逆風を真っ正面から受けた。有権者の声を首相にじっくり伝えたい」と語り、笑顔も見せなかった。
 世耕氏は、首相に「生活に密着した政策を打ち出し、憲法改正などとバランスを取るべきです」と進言。神妙に聴き入ったという首相は、参院選後は「美しい国」という言葉を口にしていない。

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