世界的な同時株安が進行中…

アメリカの住宅ローン焦げ付き不安に端を発した世界的な株安が止まりそうにありません。日本でも株安と円高が進行中。

日経平均が1万6000円を割ったことを示す株価ボード=AP
写真=日経平均が1万6000円を割ったことを示す株価ボード=AP

金融庁、日銀が国内の投機的な投資状況の調査を開始。また日銀は連日1兆円を超える買いオペを実施。

外為・株式:東証 再び年初来安値 外国投資家、売り主導 日本市場、脆弱さ露呈(毎日新聞)
世界株安 出口見えず(読売新聞)
信用不安 市場に増幅(asahi.com)
日経平均続落、午前終値376円安の1万5772円・円は急騰(NIKKEI NET)
東証前引け・大幅続落――円相場重しで1万5800円割れ・2部続落(NIKKEI NET)
金融庁:国内機関対象、リスクの高い投資全般の調査開始(毎日新聞)
日銀:1兆2000億円の供給オペ実施(毎日新聞)
円が上昇、株は続落:識者はこうみる(Reuters)

外為・株式:東証 再び年初来安値 外国投資家、売り主導 日本市場、脆弱さ露呈
[毎日新聞 2007年8月17日 東京朝刊]

 世界的な株価下落の連鎖が止まらず、16日も東京市場は大幅に続落した。この売りの流れを主導しているのは外国人投資家だ。低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)焦げ付き問題に端を発した欧米市場の急落を受け、外国人投資家が損失拡大を回避しようと東京も含む世界中の株式市場から資金を引き揚げているのだ。外国人投資家頼みで、代わりの買い手がいない日本市場の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになった。【坂井隆之】

 16日は朝方から、外国人投資家のまとまった売り注文が膨らんだ。市場関係者によると、取引開始前に東証に出された外資系証券13社を通じた注文は、売り注文が買い注文を2350万株上回り、このニュースが国内の投資家心理を一気に冷やして、全面安になった。
 外国人投資家の動向に神経質なのは、市場に占める存在感が高まっているためだ。01?06年の6年間、国内の個人投資家と金融機関はずっと、売却総額が購入総額を上回る「売り越し」だったのに対し、外国人投資家は、逆の「買い越し」を続け、持ち合い解消などで放出された株式の受け皿となってきた。国内上場企業の株式のうち外国人が保有する割合は5年前に比べ10ポイント高い28%に達し、事実上「唯一の買い手」として相場を支えてきた。
 米サブプライム問題が深刻化した7月末以降、その外国人投資家が売りに転じたため、東京市場は買い手不在となり、相場はじりじりと下げた。財務省が16日公表した対内投資状況によると、8月第2週(5?11日)の外国人の売り越し額は3246億円に達し、7月第4週(7月22?28日)から3週間連続の売り越し。今週も続いているとみられ、7月第4週以降、下げ幅が2000円に達した日経平均の下落局面と一致する。
 市場には「本来堅調な日本企業の業績を考慮すれば売られ過ぎ」(大手証券)との声もあるが、外国人投資家に依存する日本市場にとっては、「結局、低迷脱出はサブプライム問題の動向次第」(別の大手証券)。海外市場に振り回される状況は続きそうだ。

◇株価先行き、強気予想やや後退

 世界的な株安の連鎖が止まらない中、日経平均株価の先行きにも慎重な見方が出始めた。ローン問題が表面化した7月後半には、年末の予想株価を「2万円」や「1万9000円」とする市場関係者が多かったが、強気の予想はやや後退している。
 当面の株価については、米ローン問題に伴う信用不安や円高の進行で低調に推移するとの見方が支配的。嶌峰義清・第一生命経済研究所主席エコノミストは「1万5500?1万6000円前後」、中西文行・SMBCフレンド証券ストラテジストは「1万4000円前後の可能性も」と予測する。
 ただ、現在の株安は、米ローン問題の影響がどこまで広がるのかわからないため進行している面があり、「全ぼうが見えたら、市場は相当な悪材料でも、織り込みさえすれば、反転して上昇する」(藤戸則弘・三菱UFJ証券投資情報部長)と見る市場関係者も少なくない。
 問題の一応の収束時期については、9?10月を挙げる声が多い。「不安が消えて株価が戻るのは1カ月後ぐらい。日本企業の業績そのものに変化はないため、株価は2万円を目指す展開に戻る」(野間口毅・大和証券投資情報部上席次長)と強気の予想や、「早ければ来週にも落ち着きを取り戻し、年後半に向けじっくり上昇する」(嶌峰氏)との楽観論もある。
 一方で「実体経済に影響が出る可能性もある」(中西氏)との厳しい見方もある。藤戸氏は「米国の個人消費には陰りが見え始めており、実体経済への影響は今は分からない。仮に影響があれば、株価の調整は長引く」と指摘する。【宇田川恵】

◇欧州市場も全面安に

 【ロンドン藤好陽太郎】欧州の各主要株式市場も16日、全面安の展開となった。ロンドンのFT100指数は、前日終値比で4%急落。パリ市場のCAC40指数、独フランクフルト市場のDAX指数も3%前後まで下がった。
 これまで金利の低い円を借りて、高金利国で運用していた投資家が円の買い戻しに転じる中、金利の高い新興国の株式市場が大幅に下落。トルコでは一時、約7%、南アフリカでも約4%の下落幅となった。銅など商品市況も値を下げている。

世界株安 出口見えず 市場「底打ちまだ先」
[2007年8月17日 読売新聞]

 米国の低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」問題に端を発した世界連鎖株安は16日も沈静化する兆しを見せず、東京株式市場では日経平均株価(225種)が一時、1万6000円の大台を割り込んだ。ニューヨーク株式市場のダウ平均株価も、一時前日より270ドル以上値を下げた。回復軌道に乗る企業業績をよそに、株価が一方的に下落しており、市場関係者の間には、株安が長期化するとの悲観的なムードも漂い始めた。

■1万5千円台予測

 市場関係者の多くは、日経平均の当面の底値はおおむね1万5000円台と予測している。株価はまだ底打ちしていないとの見方だ。さらに、米国のサブプライムローン問題について「低所得者向けだけでなく、米国の住宅ローン全体に広がりかねない」(大和総研経済金融調査部の近藤智也シニアエコノミスト)と深刻にとらえる見方も出ている。株価の本格反転は「米国の住宅市場が底入れするまでは期待できない」(三井住友銀行の宇野大介ストラテジスト)と長期低迷が避けられないとの指摘もある。
 今年2月にサブプライムローン問題が浮上した際は「米国の住宅ローンの中でのシェア(占有率)は小さく影響は限定的」とする声が大勢だった。その後、住宅ローンを組み込んだ証券化商品を保有している欧米のファンドや投資家が、巨額損失を被った実態が相次いで明るみに出た。これが、サブプライムローンの焦げ付き問題が根深いとの見方を広げる結果となっている。

■反転の期待も

 日本の株価下落に歯止めがかかるかどうかは、市場の不安心理が解消されるかどうかに左右されそうだ。日本経済や企業業績が正しく評価されれば、株価は持ち直すとの意見もある。
 10月に本格化する国内主要企業の9月中間決算発表を控え、「投資家の関心がサブプライムローン問題から企業業績に移り、株価が底打ちする可能性もある」(大和証券SMBCの高橋和宏エクイティ・マーケティング部部長)との見方がある。
 「9月には悪材料が出尽くして、その後は回復に向かう」(日興コーディアル証券の小林久恒シニアマーケットアナリスト)と、株価が年末には1万8000?1万9000円まで上昇すると予想する声もある。
 ただ、サブプライムローン問題の実態がつかめないことが投資家の不安を高めているだけに、各国の金融当局が協調して問題の全容解明と公表を急ぐことなどが、株価回復に不可欠となりそうだ。
 また、輸出への依存度が高い企業の業績を大きく左右する為替相場の動向も焦点になる。「日本経済が健康体であっても、急激な円高が進めば企業や投資家の心理が冷え、(日本経済とは直接関係の薄い)サブプライムローン問題の影響も受けやすくなる」(第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト)との指摘がある。その結果、株価回復が遅れる恐れもある。

信用不安 市場に増幅
[asahi.com 2007年08月17日]

 米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発する新たな信用不安の構造が、金融市場を揺さぶり続けている。見えないサブプライムの損失規模と不透明感を強める米国経済。株式市場では再び大幅な世界同時下落が始まり、急激な円高も進む。金融の動揺は実体経済に及ぶのか。日米欧の金融当局はどう動くのか。展開は予断を許さない。

●米、頼みの個人消費に暗雲

 米経済に、「サブプライム・ショック」の深刻化とともに金融市場の混乱が長引き、牽引(けんいん)役の個人消費も失速するとの懸念が強まっている。
 サブプライムの焦げ付きで、投資ファンドや金融機関の巨額損失が表面化。金融市場には資金繰り悪化への懸念や信用不安が強まる。
 民間が予測する7?9月期の実質国内総生産(GDP)の伸びは、2%台半ばが大勢だが、先行きは怪しい。個人消費を刺激してきた住宅価格と株価の上昇という「資産効果」の歯車が、逆回転し始めたからだ。
 米自動車メーカーの今年の販売予想は、全体で昨年より約2%少ない1620万台程度。98年に次ぐ低水準にとどまりそうだ。ガソリンの高騰と景気への懸念が直撃し、メーカー幹部は「住宅・金融市場の動向次第で、さらに弱含みになるかもしれない」と懸念する。
 住宅市場が回復に向かうのは「早くても08年後半」との見方が有力だ。ローン審査は一層厳しくなり、一般ローンも5月ごろから貸出金利が上昇している。住宅在庫は92年以来の最高水準を記録し、住宅価格は今年、来年とも5%下落するとの予測もある。
 小売り大手も今週、ウォルマートやホームデポ、シアーズなどが相次いで弱含みの業績見通しなどを発表した。
 証券大手メリルリンチのエコノミスト、デビッド・ローゼンバーグ氏は「経済はエンスト寸前だ。今年の実質GDPの伸びは1.8%程度。08年も、われわれが当初予想した2.3%達成は無理で、1.5%に下方修正した。消費は08年前半に、ほぼ17年ぶりにマイナスに転じる可能性がある」と見る。

●円高加速、企業業績に影

 16日の東京株式市場は、精密機器や自動車、電機などの輸出関連業種が大幅に値を下げた。円高に加え、日本からの輸出を支える米景気の先行き懸念が強まった。
 東京証券取引所が同日発表した外国人投資家の売買動向(6?10日)は、3週連続の売り越し。個人投資家が多い新興企業向け市場の東証マザーズやジャスダックも16日、今年最安値を更新するなど、株安で損失を被った個人が売却を急ぎ、「売りが売りを呼ぶ」状況だ。
 三菱UFJ証券の藤戸則弘・投資情報部長は「サブプライム問題で欧米の金融機関にどの程度の影響が出てくるのか。7?9月期決算で全容がわかるまでは、株価は不安定な値動きが続くのではないか」と指摘する。
 複合する金融市場の動揺は、企業業績にも影を落としつつある。
 16日のロンドン市場では一時、約1年ぶりの1ドル=113円台まで円高が進んだ。低金利の円で資金を借り、海外の株式市場などに投資する「円キャリー取引」が逆流し、株を売って円資金を返済する動きが加速したためだ。
 年初から社内レートを1ドル=110円に置くIHIの釜和明社長は、「現状で影響はないが、円高がさらに進むと造船、民間航空エンジン事業などにはデメリットがある」。07年度の第2四半期(7?9月)以降の想定レートを1ドル=115円とする富士通も、「これ以上極端に円高が進めば輸出するIT関連機器はつらい」と話す。
 住友商事の加藤進社長は、「金融市場の混乱が長引き世界経済全体が減速すれば、影響は避けられない」と懸念する。

日経平均続落、午前終値376円安の1万5772円・円は急騰
[NIKKEI NET 2007/08/17 11:15]

 株安・円高の流れに歯止めがかからない。17日の東京市場はほぼ全面安となり日経平均株価は取引時間中に一時400円近く下落、連日で年初来安値を割り込んだ。米住宅ローン問題を引き金にした世界的な信用収縮不安は根強く、幅広い層の投資家がリスク資産から資金を引き揚げる動きが続いた。円相場も一時1ドル=112円台まで円高方向に振れ、好調な企業業績を圧迫しかねないとの懸念が広がり始めた。
 日経平均の午前の終値は前日比376円10銭(2.3%)安の1万5772円39銭。東京証券取引所第一部では値下がり銘柄数が8割を超え、ほぼ全面安の展開だった。
 前日の米ダウ工業株30種平均は一時350ドル近く下げたが取引終了にかけて急速に値を戻し、市場では「連鎖株安はいったん収束方向に向かう」と楽観的な見方もあった。

東証前引け・大幅続落――円相場重しで1万5800円割れ・2部続落
[NIKKEI NET 2007/08/17 11:29]

 17日前場の東京株式市場で、日経平均株価は大幅に続落。前引けは前日比376円10銭(2.33%)安の1万5772円39銭となり、前日付けた年初来安値を下回っている。朝方は16日のニューヨーク外国為替市場で円相場が急伸し、企業の想定為替レートよりも円高が進行したことを嫌気し、自動車や電機など輸出関連株をはじめ幅広い銘柄が売られた。国際商品相場の下落を受けて商社、海運株も下げた。半面、大手銀行や通信の一部など内需関連株に買いが入った。東証株価指数(TOPIX)も続落。
 朝方から下げ幅はじりじりと拡大し、一時は下げ幅が400円に迫る場面もあった。為替市場での急ピッチな円高・ドル安の進行が投資家心理を冷やしたほか、市場では「ヘッジファンドの解約に伴う換金売りが続いている」との見方も出ていた。半面、16日の米株式市場で金融株が堅調だったことを下支えに、銀行株や証券株に物色の矛先が向かった。
 業種別TOPIX(全33業種)は海運業、ゴム製品、非鉄金属など25業種が下げた。半面、パルプ・紙や陸運業、空運業など8業種が上げた。
 前引け時点の東証1部の売買代金は概算で1兆6761億円、売買高が10億9828万株だった。値下がり銘柄数は1448となり、全体の8割を超えた。値上がりは221、変わらずが53。
 トヨタ、ホンダ、ソニー、キヤノン、京セラ、ファナックといった輸出関連株が下げた。郵船や商船三井といった海運株や、新日鉄やJFE、住金といった鉄鋼株、三菱商、丸紅、住友商といった商社株など直近の相場をけん引した銘柄も売られた。東エレク、松下、シャープ、三越、セブン&アイ、三井不、菱地所、りそなHD、ソフトバンクもさえなかった。半面、三菱UFJ、みずほFG、三井住友FGといった大手銀行株や野村、大和といった証券株が買われた。東電、エーザイ、JR東日本、NTTドコモ、KDDI、高島屋、ファストリも上げた。
 東証2部株価指数は大幅に続落。朝方から下げ続け、安値引けとなった。STECH、日精機、オリコが下げた。半面、アライドHD、スルガコーポ、ダイア建が上げた。〔NQN〕

で、全面株安や金融不安を回避するため、金融庁や日銀がのりだしています。

金融庁:国内機関対象、リスクの高い投資全般の調査開始
[毎日新聞 2007年8月17日 東京朝刊]

 米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付きにより欧米で金融関連会社の損失が拡大していることを受け、金融庁が国内金融機関を対象に、投資状況の調査を始めたことが16日、分かった。金融庁は7月に、サブプライム関連商品への国内金融機関の投資状況を調査しているが、金融商品が複雑化し直接サブプライム関連に投資したものでなくても影響が及ぶ恐れもあることから、リスクの高い投資全般について調査する。
 7月の調査で金融庁は、「日本の金融システムに直接、深刻な影響を与えるような状況にはない」(山本有二金融担当相)との判断をした。しかし、複雑化した金融市場のなかで影響がどう波及するか読み切れないうえ、その後の世界の株式市場で株価が急落し、影響の拡大が予想されることから、リスク性の金融商品の保有状況を幅広く確認することにした。
 対象は、投資額が多いとみられる大手銀行や地方銀行、証券会社、保険会社などで、業態によって今週末から来週を期限に回答を求めた。調査は「仕組み債」と呼ばれる複雑な金融商品やヘッジファンドへの投資残高などが中心になるとみられ、投資先のヘッジファンドの運用戦略やファンドが破綻(はたん)した場合に想定される影響も尋ねる。

◇日銀も聞き取り

 一方、日銀も金融機関からサブプライム関連への投資状況の聞き取り調査を始めた。日常的に取引のある大手金融機関、地銀、信用金庫、証券会社などが対象。投資残高だけでなく、焦げ付きが発生した場合のリスク管理体制や資金繰りへの準備状況を調べて、問題があれば指導する。【清水憲司、斉藤望】

日銀:1兆2000億円の供給オペ実施
[毎日新聞 2007年8月17日 11時24分]

 日銀は17日、金融機関が資金を融通し合う短期金融市場に1兆2000億円の資金を即日供給する公開市場操作(オペ)を実施した。供給オペは2日連続。同日朝の無担保コール翌日物金利が0%54%前後と、日銀の誘導目標の0%5%前後を上回って推移したため。
 「金融機関が貸し出しに慎重になりがちで、手元に資金を置く動きが強く、短期金利が上昇しやすくなっている」(市場関係者)との見方が出ている。【山本明彦】

↓経済アナリストのコメント。こういうときには、「たいしたことない」「もっと悪くなる」硬軟両様のコメントが出るのは当たり前。

円が上昇、株は続落:識者はこうみる
2007年 08月 17日 11:18 JST

 [東京 17日 ロイター] 世界的な信用不安への懸念から円のキャリー取引を巻き戻す動きが高まり、ドル/円は前日海外市場で一時112円近辺まで下落、東京市場では113円半ばをはさんでの一進一退となっている。日経平均は17日続落し、ザラ場の年初来安値を連日更新している。市場参加者のコメントは以下の通り。

●投資家動向に変化の兆し、株下落なら円高続く

 <三井住友銀行 市場営業統括部チーフエコノミスト 山下えつ子氏>

 世界的な株価の下落を受けて、外為市場でもリスクリダクション(リスク回避)の動きが強まっている。リスク回避に伴って円高が進むのは初めてのことではないが、これまでは金融政策などをめぐる思惑がきっかけとなっていたのに対し、今回はサブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)が実際に、株式や短期金融市場に影響を及ぼしている点が異なっている。過剰流動性相場の中、投資家はリスクをとって高いリターンを求め続けてきたが、今後は容易な行動が難しくなるだろう。これまでのリスク回避相場では、一時的にポジションを縮小する過程で円高が進み、一巡すれば元の水準に戻る動きが続いてきたが、今回は新しい落ち着きどころを探る展開となりそうだ。112円まで円高が進んだからといって、これ以上はないだろうという水準感は通用しない。株価の下落が続く限り、リスク回避の動きは続く。ドルは110円を割り込んで円高が進む可能性もある。

●疑心暗鬼の株売り、鋭角的に戻る可能性

 <ドイツ証券東京支店 副会長兼チーフ・インベストメント・オフィサー 武者 陵司氏>

 疑心暗鬼のセリング・パニックが起きている。オーバーリアクションであり、鋭角的に戻る可能性がある。
 現在起こっているのはクレジットの悪化とその先にある景気悪化や企業収益悪化という2つの可能性に対して市場が心配しているという状況だ。クレジットの問題だけならば時間と政策で解消できるが、それが景気を冷え込ますなら深刻になる。
 だが米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題は局地的な問題であり、世界経済のファンダメンタルズは米国を含めてしっかりしている。米企業の労働分配率は低くバッファがある。これまで企業業績が好調なときにリセッションが起きたことはない。サブプライム問題が広範な景気後退をもたらす可能性は低いとみている。米国で不安心理が膨らみ消費に大きな影響を与えるかどうかが最大のポイントになるだろう。
 サブプライム問題による疑心暗鬼が解消され、資産のリクイディティ化が一巡すれば壮大な買い戻しが起きる可能性がある。日経平均で見れば1万6000円を割れた水準が底だろう。反転すれば1万8000円から1万9000円への上昇はありうるとみている。

●投機筋が大量のクロス円売り

 <UBS銀行 外国為替部FXアドバイザー 牟田誠一朗氏>

 前日からけさにかけての取引では、夏休み明けの本邦勢によるドル買いがみられるが、それが止まるとクロス円売りの波に押されるという動きだ。信用収縮懸念から、引き続き円買いの地合い。円キャリー取引のアンワインドに加え、明らかに投機筋とみられる大量のクロス円売りがみられる。これまでの円キャリー取引のはげ落ちたところが適正な水準といえるのかもしれないが、長い目でみないと判断できない。

●ドル109円が下値めど、信用収縮の動き続く

 <香港上海銀行 外国為替営業部長 花生浩介氏>

 今回の円高局面では、これまで円を売り続けてきたヘッジファンドが円を買い戻している。きっかけは米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)だったのだろうが、現在起こっている問題は、すでにその域を超えている。サブプライムによる損失だけでなく、為替の大幅変動による損失も加わり、ポジションを閉じる動きが本格化している。ポジション整理が一巡しない限り、円高も終わらない。為替の相場水準ではなく、ファンドがポジションを閉じきったかという量的な問題になるので、市場には不安心理が残っている。テクニカル上でも113円を割り込んだ意義は大きい。昨年5月につけた109円付近がドルの下値めどとなりそうだ。

●10円の円高続けばGDP0.32%押し下げ、株下落とあわせ影響比較的大

 <野村証券金融経済研究所シニアエコノミスト・森田京平氏>

 6月後半の為替に比べて10円程度の円高となっているが、これが1年間定着した場合には日本のGDPを1年目に0.32%、2年目に0.53%押し下げる効果がでてくる。特に影響を受けるのが輸出と設備投資など企業関連だ。
 また株価も7月後半の高値から2000円程度落ちているが、2000円の下落が1年定着した場合、GDPを1年目に0.04%、2年目に0.16%程度落とすことになる。円高と株価下落の効果を併せると1年目にGDPを0.36%程度落とす効果があり、影響は比較的大きい。
 ただ、こうした円高、株安が今後1年間続くかと考えると、続かない可能性の方が大きいとみており、2008年度に向けて2%台半ばの成長が実現する構図をメーンシナリオとみておきたい。しかし心の片隅にこうしたリスクを置いておく必要はありそうだ。

●ボトム圏も株反転のきっかけつかめず

 <大和総研 投資戦略部 次長  壁谷洋和氏>

 国内株式はバリュエーションでみるとかなり割安感で出ており、ボトム圏内であるはずだが、反転のきっかけがつかめないでいる状態で下げている。
 銀行株については、リターン・リバーサル的に買い戻されている。当初懸念されていたよりも、サブプライムローン問題の直接の影響がないとの見方が出てきたのではないか。
 米国市場では、下落した分切り返す動きがみられた。きょうの国内株は、前日のように大引けにかけて戻す動きがあるかどうかに注目している。
 海外投資家主導の売りともいわれているが、国内の個人投資家も円高を受けて資金を引き上げているのではないかとみている。

●中短期債利回り低下、海外勢の逃避マネー流入が影響

 <みずほ証券チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

 信用収縮に対する不安感からの株安/円高が、日銀の景気見通しの根幹部分にヒビを入れてきた。輸出依存の企業業績に対しても、為替環境が大きなリスクになる兆しと映る。日銀の利上げ意欲は強い。ただ、22―23日の金融政策決定会合における利上げは厳しい情勢。東京市場の参加者は、利上げシナリオに関して下方修正を迫られた面がありそうだ。
 円金利でもとりわけ中短期債利回りの低下が著しいのは、外国人投資家の逃避マネーの流入による影響が大きいとみる。財務省が16日発表した対内債券投資は、1兆円を超える買い越しとなっている。市場の混乱が落ち着きを取り戻すにつれ、揺り戻しが大きくなる可能性は否定できないが、混乱が続いた場合は利上げが当面ないことを織り込み、2年債利回りは0.75%が節目として意識されそうだ。

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