日本経団連が、安倍改造内閣の成立を受けて、「新内閣に望む」として要望事項を発表。
「ここで、改革が停滞するならば、わが国経済は内外の信任を失い、国民の生活基盤が揺らぎ、税財政、社会保障など各方面にわたり禍根を残す」と述べているのは、明らかに、「生活第一」をかかげた民主党への支持を意識して、改革の継続を訴えたもの。雇用拡大、セーフティネットの充実などがうたわれているが、EPAの締結、「歳出入一体改革」「日米の同盟関係の堅持」など旧来と変わらない要求が並んでいる。社会保障についても、あくまで「持続可能な」の限定付きで、従来の主張を繰り返している。
新内閣に望む2007年8月28日
(社)日本経済団体連合会これまでの改革が実を結びつつあり、わが国経済は長期にわたる回復を続けている。しかし、原燃料価格の上昇や不安定な国際金融情勢など、世界経済は楽観を許さない。また、グローバル競争の激化や人口減少下での少子高齢化の進展など、わが国の行く手には難問が山積している。
ここで、改革が停滞するならば、わが国経済は内外の信任を失い、国民の生活基盤が揺らぎ、税財政、社会保障など各方面にわたり禍根を残す。
両院における第一党が異なるという困難な状況であるが、新内閣におかれては、改革の必要性に関し国民の理解をさらに深めるとともに、野党との国民・国益本位の対話を緊密にし、以下の課題に全力を挙げて取り組んでいただきたい。記
- 成長の果実が国民各層、各地域で広く着実に享受されるよう、イノベーションをエンジンとし、世界各国、中でもアジア諸国とのEPAの締結促進を梃子とした、成長路線を堅持する。
- 雇用拡大を促進し、全員参加型社会を目指すとともに、社会保障をはじめとする持続可能なセーフティネットを充実させ、国民の安心感を高める。特に、年金についての不安を払拭するため、有効な方策を急ぐ。
- 道州制により自立的な広域経済圏を形成することを目標として、分権・財源改革を加速度的に推進する。また、農業の競争力強化策を拡充する。
- 歳出入一体改革を断行し、将来世代への負担の先送りを断つ。
- ポスト京都議定書の枠組みづくり、温暖化対策や循環型社会の構築に向けた実のある環境政策を推進する。同時に、エネルギー・資源安全保障の強化に取り組む。
- 学力・体力に加え、公徳心を備えた子どもを育成するため、教育を再生する。また、高度人材の育成に向け、大学・大学院改革、産学連携を推進する。
- 日米の同盟関係を堅持する。アジア諸国を重視しつつ、欧州、中東、大洋州などとも緊密な外交通商政策を展開する。
- 政治資金について透明度をあげ、説明責任を徹底することを通じ、政治に対する国民の信頼を回復する。