自民党総裁選。本命と言われた麻生太郎幹事長に対し、福田康夫元官房長官の出馬に派閥の支持が集まる雪崩現象。しかし、麻生氏が「派閥野合」と批判してみても効き目がないのは、麻生氏は安倍政権もしくは突然の辞任に一番責任があると誰もが思っているから。
面白いのは、福田氏が障害者自立支援法の「抜本的見直し」を提起し、麻生氏が最低賃金の引き上げや「非正規労働者の待遇改善」を公約に掲げるなど、明らかに、小泉「構造改革」路線に対する国民の怒り、不満に対応せざるを得なくなったことを現わしていること。他方で、麻生氏のいう産業界への政策減税というのは、要するに大企業減税のことで、「構造改革」、安倍の「成長」路線継続の要素も。
しかし、消費税の増税路線も然り、インド洋給油を「対外公約」として続けようとする点でも、両氏は共通。国民的には油断できない。他方で、民主党に対する対話路線は、民主党の「対決」路線にとって新しい条件。民主党の正体が問われることに。
消費税上げ、ともに前向き 福田、麻生氏いざ舌戦(中日新聞)
障害者自立支援法見直し 福田氏公約、野党側に配慮(東京新聞)
政策減税など成長路線明示 麻生氏公約、増税にも言及(中日新聞)
消費税上げ、ともに前向き 福田、麻生氏いざ舌戦
[中に新聞 2007年9月16日 朝刊]自民党総裁選は15日、立候補を届け出た福田康夫元官房長官(71)と麻生太郎幹事長(66)が党本部で共同記者会見し、23日の投開票に向けて8日間の論戦がスタートした。
福田氏は会見で、基礎年金の国庫負担割合引き上げに伴う財源確保に関連し、「消費税を含めた手段を考えることが必要だ」と表明。麻生氏も「福祉目的税のような形で消費税率の引き上げをしてもやむを得ないという理解は増えており、十分検討すべきだ」と述べ、消費税率引き上げを検討することに前向きな姿勢を示した。
インド洋での海上自衛隊による給油活動の継続について、福田、麻生両氏とも活動継続の必要性を指摘。話し合いによって民主党の理解を求めていく考えを示した。
北朝鮮問題では、福田氏は「昨今の(日朝協議の)状況は交渉の余地がないような状況だ。交渉しようという姿勢、意欲が伝わるよう工夫しないといけない」と述べ、対話重視の姿勢を見せた。麻生氏は「圧力がないと対話にはいかない。数年間の対応は間違っていなかった」と述べ、圧力を重視した安倍晋三首相の方針を踏襲する考えを示した。
郵政造反組の復党問題では、福田氏は落選議員を念頭に「党の原則は尊重しないといけない。現職を大事にする気持ちが重要だ」と、慎重な姿勢を強調。麻生氏は「次の衆院選でいかに過半数を勝ち得るかが最大の問題。選挙に勝てる候補をいかに選任していくかだ」と述べた。
また、福田氏は総裁(首相)に就任した場合の閣僚人事について「私の都合で選ばせていただきたい」と述べ、派閥の推薦にとらわれない考えを示した。
障害者自立支援法見直し 福田氏公約、野党側に配慮
[東京新聞 2007年9月16日 朝刊]自民党総裁選に立候補した福田康夫元官房長官と麻生太郎幹事長の総裁選公約が15日、明らかになった。福田氏は、これまで政府が消極的だった障害者自立支援法の抜本見直しや、高齢者医療費負担増の凍結の検討を公約に盛り込んだ。
民主党は現行の障害者のサービス利用料の1割負担を凍結する同法改正案を今国会に提出する方向で検討している。高齢者医療費をめぐっても、来年4月から高齢者の窓口負担が引き上げられることになり、民主党をはじめ野党が強く反発している。参院で多数派となった野党側への配慮がにじむ内容といえる。
福田氏の公約の題名は「希望と安心のくにづくり 若い人に希望を、お年寄りに安心を」。
基本理念として(1)自立と共生の社会(2)ストック型の社会(3)男女共同参画の社会――を掲げている。
一方、麻生氏の公約のタイトルは「日本の底力」。改革継続の必要性を訴えると同時に、「弱者に配慮した思いやりの政治」を進めると強調している。
具体的には非正規労働者の待遇改善と最低賃金の引き上げ、小学校入学前の幼児教育の義務化などを盛り込んだ。
政策減税など成長路線明示 麻生氏公約、増税にも言及
[中日新聞 2007年9月16日 19時09分]麻生太郎幹事長は16日、自民党総裁選での政策公約をまとめた。産業界への政策減税を行うなど経済成長路線を打ち出す一方、最低賃金の引き上げなど社会的な弱者に配慮する「思いやりの政治」も提示。景気回復と徹底した歳出削減の後「必要ならば増税をお願いする」と明記した。
政策公約は「日本の底力 活力と安心への挑戦」と題された。詳しい施策内容や実施時期については触れていない。
緊急課題としては(1)年金記録漏れ問題の解決(2)地域間格差を解消するための産業育成と地方への企業誘致(3)派遣社員など非正規雇用の待遇改善と最低賃金の引き上げ――などを掲げた。
外交政策では「日米同盟を基軸としつつ、アジアの安定を求めていく」とし、東欧やアジア新興国の民主化定着などを支援する自らの外交方針「自由と繁栄の弧」構想の推進を主張。(共同)